463話 ちょっとした再会

 防具も揃え直したし、武器は武器でこれから考えるとして……やる事がぱっと思いつかなかったりする。いや、まあ細かく装備を新しくしたり、道具を揃え直していくってのもは常にやらなきゃいけない事ではあるんだけど、パッと思いつくのが製造回りでちまちまやる事くらいしかない。


 現状での最優先事項はガンナーの教え子をできるレベルに持って行くってのが重要事項と言うか、犬野郎と交えた約束だからこれは絶対にやらなきゃならない。その後に何をやるのかって話になる。いつもと言うか、最初の頃はあれこれ必要な物の為のフローチャートなんか作っていたけど、それを作るほどの物がもうなくなった気がする……ってだけで色々試したいものはあるか。


「レアメタル探しに行くのが正解っぽいところはあるけど……どうするかな」


 素材集めにあれこれマップの散策ってのも全然ありか。そもそも銃弾周りの素材も取りに行かないと自己量産出来ない。死ぬほど量産している硝石を売りに出してちょっとでも資金の足しにする?って言うか武器やら防具を売らなくても硝石捌けばよかったんじゃね?硝石の市場価格って結構下がっているって話も聞くから相当数捌かないと儲けは出ない気がする。一応最低価格はあるだろうけど、こういうのって安定すれば流通すればするほど価格は落ちるから、難しいんだよなあ。私で言えば1日200個は硝石の回収が出来るから、供給量は中々の物……だから価格が一気に落ちてダメになりそうだけど、どうかな。いや黒色火薬にしておけばもうちょっと良い値段で捌けそうだし、加工しておくのもありだな。こういうのって第二次?第三次?産業どっちだっけ。


「金が無いとひもじいわあ……金で幸せは買えないって言うけど、ありゃ嘘だね」


 なんか前にもこんな事言ってた気がする。

 クランハウスのアイテムと資金ちょろまかして装備なりあれこれ揃えるってのも考えたけど、それはそれで信用がなくなるからアウトだけど、それにしても金欠が過ぎるわ。オンラインゲームって金策方法が結構真っ当なんだよなあ……セーブデータ複製でアイテム増殖したり、小麦で錬金したり、何故だか買値が安いのに売値が倍額以上だってのに、無限に回収できるおかげで時間さえかければとにかく稼げたりするのがあったなあ。


「こうしてうだうだ言ってるのもあれなんだけどさあ」


 ため息を吐きだしつつ、クランハウスの一室で待機中。犬野郎大好きのティーセットが置いてあるのでそれを使って紅茶を啜りながらぼうっとする。まだ今日の分の報告を受け取っていないのでそれを待っているというのが此処でぼうっとしている理由ではある。そもそもそんなにぼうっとしている暇があるなら狩りいったり金策しに行けよって言われるとその通り、ただ何かやっている最中に横やりが入ると一気にやる気を失せてしまうので、やる事全部やって横槍が入らない状況で私用を済ませたい。


「……アカメさん、暇なんですか……?」

「見ればわかるでしょ、見れば」


 声の方にちらりと視線を移してから、すっと戻す。久々にメカクレの奴を見た気がする。


「あんたは最前線にいるんじゃーないの?」

「えっと……弓の事を教えてまして……」


 言葉はゆっくりだけど、結構はっきり物は言うんだよな。それにしても前に会った時とかなり見た目が変わってる、そもそも弓すら持たなくなっている。格好も前より露出が少なくなって、結構しっかり着込んでいる。相変わらず目が隠れている髪の毛は変わらないが。


「犬野郎は戦力強化に余念がないわねえ」

「アカメさんも、ですよね……?」

「こっちはガンナー、あんたはアーチャー、遠距離に力入れてるのかしらねー」

「ガウェインさんも、教えてるみたい、ですから……」


 戦力強化に本当に余念がないな。どんだけレベルと実力上げて最新マップ……いや、最新じゃなくて最深か。って言うか犬野郎の奴、どれくらいレベル上げて、サブ職取ってんだろ。


「一番レベルの高いマップを攻略するって、どういう感じなのかしらねえ」

「アカメさんも、高レベル、では……?」

「60だから折り返しちょいでしょ、サブも上げてないし」


 もうちょっとスキルがあると思ったけど、そうでもないし、やっぱサブ職で拡張していくのがT2Wの基本になるんかね。まだサービス開始2ヵ月だからあまりにも速過ぎるエンドコンテンツってゲームの寿命を締めるだけなんだけど、それにしては結構ぽこぽこ上がってきた気がする。なんて運営側の事をあれこれ考えるだけ無駄ってもんだから、そういう関係ある事に直面したら考えよう。


「で、そっちはどんな感じで育成してるん」

「えっと……弓の基本と応用で、私の場合は魔法矢を……」

「いいなあ、魔法矢……って言うか魔法弓?」


 こくりと頷き、指を銃の形にすると共に、弓の形になる……訳ではなく、矢が出現する。なにそれ、すげえ便利羨ましいんだけど?


「これで、射撃準備、です……」

「そんな事をやろうと思った事思い出したわ」


 そういえば計画……を立てたわけじゃないな、銃弾が無い時の代わりに考えていただけで、結局やってないし、魔法は覚えたけど煙草用でしかなかった。そのうち特殊弾の括りで開発した方がいいのかな。


「あんたの事見てると次のサブ職迷っちゃうわ」

「……燃費は、悪いですけど……」


 指を戻して「ふい」っと軽く息を吐き出し対面に座ると、手慣れた手つきでティーセットを用意して紅茶を入れて一啜りするのを見つつ、こっちは飲み切ったティーカップを置いて一息。


「こう、私もそうやって指銃作ってぱーん何て事やってみたいわ」

「……教えますか……?結構、簡単ですよ……?」


 そういうや否や、立ち上がって私の横に来ると、私の手を掴んで銃の形にして?と言うので言われた通りに。


「後は魔法をここから出すってイメージを……」

「教えるの下手すぎん?」


 一応やってみる事はやってみるけど、出来るわけがなく、スキルが発現するわけもない。

 いや、これマジで出来るのか?


「なあ、前提条件あるんじゃないんか、これ」

「え……そうなんですか……?」

「って言うか今すぐ覚えれたら苦労しねえ」


 って言いながら練習しちゃうあたり私も良い付き合いしてる気がする。

 と、そんな事をやっているとガンナー連中から報告が上がってくるので、練習しつつどうなっているかを改めてまとめて犬野郎に報告するのと自分用のデータを作ったら本日のゲーム内業務終了。


「とりあえず此処にいる間に魔法矢教えてよ、取得してみたくなったわ」

「はい……いいですよ……」


 ちょっと食い気味に返事を返される。

 私ももーちょっとコミュニケーション取ってあれこれやったほうがいいな。

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