462話 数着目

「やっぱり強いですね、アカメさんは」

「よくもまあ、そんな事言えるわ」

「本心からですよ?」

「わかってら」


 闘技場から出てクランハウスに戻りながらそんな会話を交わす。

 結果は……まあ、御察し。あまりにもがむしゃらになって結局殴り合いになって単純なHP差で負けだよ負け。何て言うかサブ忍者じゃなくて、格闘系の方に進んだ方が良かった気がする。


「あ、そーだ……サブ職って変えれないの?」

「出来ますよ、変えたらLv1スタートで、関係しているスキルは新しいサブのしか使えませんが」

「メインの方にSP振ってたら?」

「そのままですから大丈夫ですよ、サブ職のスキルが使えないってだけですから」


 私の場合で言えば、打剣、忍者刀、身かわしが使えなくなるって事か。投擲に限っては汎用スキルだからサブを変えても大丈夫のはず。ってかサブ職変えまくってSP稼いでメイン職のスキルがんがん鍛えるのってありなのか?いや、その辺りの対策は結構しっかりしてるかな。


「ちなみにアカメさんレベルは?」

「60だけど」

「じゃあ2個目解放できますね、3個までしか取れないんでちゃんと考えた方が良いですが」


 あー、やっぱりそう来るか。よくある職をころころ変えれるゲームならサブも組み合わせて色んな組み合わせをどうぞってパターンだけど、T2Wは古き良きMMOって感じで時代と逆行しまくっている気がする。マー、その分あれこれ自由に出来る事が多いから、その辺でバランスを取ってるか。


「何ていうかガンナー周りしか気にしてないってのがよくわかるわ」

「ちゃんとシステム見たらどうです?面白い要素結構ありますよ」

「行き詰まったらなー」


 そんな事を言っていると通知が一つ。歩きつつメニューを開いて確認すれば、ゴリマッチョから防具が出来たってメッセージが飛んでくる。なので此処で犬野郎とはお別れ。後はいつもの様に1日の報告を貰って次の指導を考えるだけかな。


「とりあえず私は防具取りに行ってくるわ」

「そうですか、それじゃあまたデートしましょうね」

「ただただ殴り合っただけじゃねえか」


 口より手を出した方が分かりやすい、なんて言っているが、新人類じゃねえんだから無理に決まってんだろ。もう少しわかりやすいコミュニケーションの取り方ってあるだろうよ。とにかく犬野郎と別れ、ゴリマッチョのクランハウスに向かう。

 





「アカメちゃん、最初会った時は自作するって頑張ってたのに、諦めたのぉ?」

「いやー?やろうとは思ってるけど?」


 新しい防具やガンベルトを受け取り、インベントリで確認しながらどんなものかをじっくりと見ていく。


「相変わらずスーツなのは、私の事を思って?」

「可愛い防具ってのもあるけど、似合わないでしょ、あなた」

「分かってらっしゃる」


 ぽちぽちっとインベントリから装備をしていってばっちりスーツを着こなす。それにしても、もうちょっとファンタジー感ある装備の方が良いのかな。片脚のほうだけ垂れがあったり、よく分からんゴーグルつけたり、そういうのもありかなーとは思うけど……結局機能美がないとな。


「今回のスーツなんだけど、ちょっと派手かしらね?」

「ワインレッドをベースに白のストライプかあ、確かにまあ、あんまり選ばない色ではあるけど」

「良い感じに決まってるわぁ、今まではマフィアのボスって感じだったけど、ちょっと三下感でるかしら?」


 ワイシャツは青、派手めのネクタイも付いてるから、確かに三下感はあるな。ちょっとイキがって来てみましたって感じが出ているのが悪い所かな?


「結構色々盛り込んだ……とは言えないのよねぇ、性能で言えばボロボロにしたスーツと変わりないし、デザインもそこまで凝ってないから、もうちょっと弄りたいんだけどねぇ」

「私もあんまし頓着がないからあれだけど、カフスだったり袖のボタンやネクタイピンを弄るってのは?」

「それもありねぇ」


 良い事聞いたわって言いながらメモを取っているのを軽く眺めつつ、用意されたガンベルトも付けていく。肩掛けベルトの前面、腰ベルト右から前に向かい10発ずつ、計20発予備弾。左腰から前にはマガジン5本分をマウント出来るようになっている。


「前使っていた奴を参考にしたけど、悪かった?」

「いいや、良い感じだよ」


 スーツの上着、襟部分をもってぴっと襟を正して体を回して具合を確かめる。やっぱりいい仕事してくれるわな。その分お値段も中々に高いからおいそれと頼めないってのがネックな所だけど……こう考えてみると、私自身、良い感じの人脈を築けている。ま、偶然なんだろうけど、あれこれきつい部分が多かったわけだし、これくらい良い事あってもいいわ。


「スーツ、ガンベルト、グローブ、注文は全部で3個だったけど、問題なさそぉ?」

「性能は据え置きでしょ?」

「そうよぉ、しっかり滑り止めの付いたぴったり指に吸い付くグローブ」


 ぐぱぐぱと手を握って開いてを繰り返しながらARを取り出して構えたり、レバーアクションをがちゃがちゃと動かし、ガンベルトから銃弾を抜いて装填、すぐにレバーアクションで排莢。くるくると飛び跳ねて上に飛んでいく薬莢をしゅぱっとキャッチしてガンベルトに収め直す。

 その様子をみたゴリマッチョが口笛一つ。すぐさま体をくねらせながらぱちぱちと拍手をしてくる。


「ちなみにガンベルトに追加でホルスター付けるって出来る?」

「出来るけど、これ以上弄るとステータス落ちちゃうわよぉ?」

「まー、許容範囲っちゃ許容範囲かな」


 メニュー画面を消して、装備の確認も終えたので代金を支払い。この間の出品代と私自身が持っている貯金を投入する……前に犬野郎に前借りで報酬貰って置いて良かった。ちょっとだけ足が出たから出品分はやられたけど。


「これでようやくまともな装備に戻ったかな」

「あのぴたぴたのシャツは目に悪いからねぇ」

「人のことをエロい目線でみるからそーなんだよ、ジムにでもいったらいっぱいいるだろ?」

「普段見せないから見えていると意識しちゃうのよぉ」


 そういうもんかね。

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