440話 急造チーム戦

 あれから、あの侍にあれこれ聞いてみたのだが、ゲーム内進行度が進むと機体だけじゃなくてプレイヤー自体を強化出来るとの事。強化人間、改造人間、サイボーグ化……手足を義肢に変えて機体に直差ししたり電子化して脳みそ以外機械にするとかもあるとか。やりたいけど、私の進行度じゃ出来ないので装備やパーツの組み合わせでどうにかするしかない。

 そういう訳で、あの機体スペック以上の動きはそういう操縦者側のカスタムが大事になる。ついでに言えば侍……どんだけ好きなんだよって思ったけど、柳生って名前を付けていたわ。で、一緒に戦う相手なのでどういう機体構成をしているのか、基本の立ち回りはどうなっているのか、等などを聞いてチーム戦の方針を固めていく。

 ぶっちゃけた結論から言うと、制御が利かないバトルジャンキー。戦い方からも分かっていたけど、出来る事が近接戦闘のみ、特殊な動きは特にないし、器用な事も出来ない。あまりにも無骨過ぎる戦闘能力と愚直な立ち回りしか出来ないと言われた。そりゃ、こんな感じの相手じゃチーム組むのは厳しい……貧乏くじ引いたわー。


「……本当に勝てんの?」

「分からぬ、が……負ける気はないだろう?」

「そりゃそうだけどさ」


 あと、今回に関しては私は使われる側なので出しゃばらないで柳生の後ろで援護射撃だけする予定。ただ複数人相手になると単体性能に特化している柳生じゃ捌ききれないと思う。相手をはっ倒してすぐさま次の奴に、と言う感じに出来れば良いんだけど……期待するのはやめておこう。


「って言うか遠距離攻撃持てよ、カバーしきれんって」

「使用武器やパーツを絞ると性能を底上げできるマスクデータがあるのでな」

「その情報は先に言っとけや」


 聞きそびれた私が悪いんだろうな、これ。って言うかマスクデータや知らん要素が多すぎる。もうちょっとWiki周りを確認しておいてもよかったか。リリースされて時間も経っているし、こういうのをしっかり読んでおくべきだったが……クリアした後か、どうしても詰んだ状態じゃないとWikiってみたくないのよね。


「あんた、コミュニケーション能力低いでしょ」

「いいや、そんな事はないぞ?」

「まー、いいわ……ちゃんと前衛の仕事してよ」


 ため息交じりに言いながらメニューを開いて最後に機体の調整と装備を確認していると、視界が開けて市街地に出てくる。戦闘前に言って欲しい事ばっかりやりやがって、全く。


『さあ、始まりました第32回チームトーナメント!

 まずはレッドチーム……』


 仰々しくチーム紹介をされているのを聞きながらどう動くかを考える。市街地ではあるのだが、結構背の名高いビルがあったり、タワーが合ったり、ベースは東京かな?生涯で2回くらいしか行ったことないけど、こんな感じだった気がする。

 さて、こういうマップだと柳生のような一気に前に出てあれこれやるのは厳しいな、こっちで射撃牽制をしながら近づける一直線を作るようにして……。


『それでは、試合開始でーす!』

「アカメ殿、参るぞ」

「はいよ」


 そういわれると、機体を動かして柳生の後ろに付きながら前進。

 このチーム戦最大で4人まで組むことが出来て、今回は3人相手になる。組み合わせはよく分からんのでまあ、柳生が強く当たって、私は後ろでぺちぺちするか。

 今回の機体は軽量射撃型、羽のようなのがバックパックから4本Xの字に生えており、基本的にホバーと言うか浮遊移動。武装の方はシールドとソードは外して、キャノン、BR、腕部ガトリングとグレネードに接近戦用のナイフが1本。弾数は気にしなくていいので、撃ちまくって援護しよう。


「カバーするけど、出過ぎるなよ」

「あい、わかった」


 うーん、ビル群だったり建物で視界がいまいち通らないのがネックだな。一回上に上がって索敵して見るか。


「一瞬だけ上に飛んで状況見てくる」

「ほう、飛行ユニットも持っておったか」


 ずっと飛べるわけではなく、一気に飛び上がって少しばかり滞空、その上で滑空したりすぐに降りたりと、自由度はそこまで高くない。この辺は対戦だから調整されているっぽいけど、それはいいので、一旦着地して、溜めを作った後、ドンっと大きく音をさせて一気に上空に上がる。

 ふむ、マップは予想以上に広いし、中々に建物が多い。かなりの上空に上がって頭の中でマップを作りながら索敵していると、射撃されるので発砲位置を確認し、すぐさま降下。


「正面に1、左右2かな、右側の方から撃たれたから放置してくるはず」

「うむ、それでは真っすぐ行くとするか」

「愚直が過ぎる」


 ふんわりと着地し、こっちも移動しようと思っていたら、付いて来いと言う様に柳生の奴は速攻で前に出ている。ちょっと敵に対して一直線過ぎじゃない?こっちは左右にいるであろう相手に対して警戒しつつ、柳生とあまり離れない様にしてバック走で追走。こいつ、何だかんだで銃撃なら弾けるし、回り込まれて背中を撃たれる方がまずい。

 レーダーとさっき作ったマップを思い出しながら、加速しまくっている柳生の後ろをカバーしていると、ビル群から射撃が飛んできて瓦礫を受けながら飛んできた方を確認。


「結構執拗に狙ってくるな……そっちは」

「うむ、1機いた、仕留めに行く」

「ういよ、こっちは2機引き付けて時間稼ぐわ」


 強めにバックブーストを掛け、柳生の背中に脚部を掛けて踏み台にして相互で一瞬加速すると共に、斜め上に、飛び出して加速。飛行能力のちょっとした使い方で山なりに飛んでみたけど、案外行けるもんだな。


「さて、こっちに来るか……?」


 明らかに上に飛んでいるのを見つけたのか、左側から射撃されるので、機体を捻りながら着地してBRを構えた状態でするすると道路を走っていく。ぐるりと大きめに回り込もうとしている所、建物の中を突っ切って一直線にこっちに来るのが1機。


「……やるう」


 中々思い切りのいい奴だ。機体は重量系で、でかい棍棒のような物を持っている。すげーな、あの巨体で無理やり突っ込んでくるって、そういう発想は無かったし、重量級って趣味じゃないんだよなあ。


「まずは1人!」

「血気盛んだなあ、こっちは」


 「ぶん」と大きく棍棒を振るうとあっと言う間にビルがへし折れ、ちょっとした建物が一瞬にして瓦礫の山になる。うーん、あれを食らったら一発だろうな。

 こっちは路地と言うか、建物を避けながらカクついた動きをしなきゃならんのに、向こうは真っすぐ突っ込んでくるんだからいつかは捕まるか。


「……って言うか、何で馬鹿正直に路地通ってるんだ?」


 また目の前のビルが吹っ飛ぶと共に表れてくる重量級機体を見てからにまりと笑い、後ろにジャンプすると共にビルの屋上を足場にして滑空とジャンプを繰り返して跳ねる様に相手を見つつBRで射撃して重量級機体を引き付ける。いちいち建物を破壊しながらやって来るおかげで、ぶつかるたびに減速しているので微妙な距離を保ちつつ射撃できるのはいいな。


「ワンパターンだな、あんた」


 そんなオープン回線が聞こえると左側から射撃を貰って体勢を崩され、着地に失敗。道路のコンクリを削りながら倒れるが、ブーストを掛けて無理やり体を起こして射撃してきた2機目の方にキャノンを向けて発射。しようと思ったが、不意打ちの一発であっさりとお釈迦になっているのですぐにパージ。

 うーむ、やっぱりチーム戦をするだけあってちゃんと連携を取ってくるか。ゲームが上手いからってちょっと舐めてたか。


「まあ、簡単にはいかないか」


 ああ、でもこういった複数相手はいつもやってるわ。

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