436話 邪道も強ければ正道

 例の初狩りから分捕った大型ソード、良いもんくれたわって思ったけど、流石にPvPシステムがあるとは言え相手のアイテムやら装備を奪うまでの機能は無かった。まあ、そりゃそうだよね。単純に優越感に浸りたかったのか、対人周りの何かしらのシステムがあったのか、そういう理由があったんだろう。戦闘が終わった後に自分の機体もすぐに修復されたし、気軽に戦えるゲームデザインなんかな。


「とりあえず足りないステータスを改造で上げて自分好みの機体にしていくのが急務か」


 まず武装の変更。初期装備のナイフとライフルが貧弱すぎて即買い替え安定ってのはよくわかった。後は装甲をしっかり盛る、背部のコア部分はしっかりとガード。ああ、でも装甲部分に関しては機動力を取るかどうかで変わって来るのか。この辺は大体普通のロボゲーと変わんない。


「さーて、まずは機体を弄る為の資金也パーツを稼ぐか」


 初心者向けの対戦コンテンツがあるみたいだし、暫くはそれをこなしてパーツを揃えるかな。

 



 で、新規向けのミッションをこなして、オーダーをクリアして報酬を貰い、一通りの装備だったりパーツを買える条件や資金を稼いでいく。色々やる事はやったが、単純なタイマン戦、チーム戦、僚機を使ったPvE、バーリトゥードのソロ、チームでのレース戦。個人的に一番面白いのは最後の奴。結構考えられているゲームで、背面に弱点がある機体が良いアクセントになっている。

 逃げ切りをしようとすると結構バカスカ後ろから撃たれて回避に集中しなくちゃいけないので上手い事スピードに乗り切れない、その代わりに逃げ切れると圧勝。逆に装甲を盛って重量分をカバーする為に出力を上げると、スロースターターになるが後ろからがんがん攻撃が出来るので全員蹴散らして勝ちを拾えたりする。そしてそれぞれの競技向けのアセンブルを組んでおいて、出る時にそれを選択するって感じになる。

 

「こういうのはやっぱ対戦してなんぼよね」


 そんなわけで機体も弄り終わったし、中級者向けレースに参加中。

 当たり前だけど、周り全員がぎらついてるってのはなかなかいいね。私は趣味と実用を兼ね備えた機体をようやく組めたので、それの試遊も兼ねているが。

 軽量逆関節胴体腕前後不問。スピードに特化して武装はT2Wでメインでもある拳銃タイプを揃えてみた。まさか武器までカスタムできるとは思わなかったけど、向こうで試したいのをこっちでやれるってのは良い所よね。


「まー、勝つ気なのは変わらんけど」


 何て事を考えていたら準備完了、初狩りの時と同じように画面にカウントダウンが表示され、全員が起動音を響かせ、カウントが0になった途端飛び出す。

 自分で組んだ機体は完全なる先行逃げ切り型、ブーストを吹かして一気に先頭に躍り出ると、そのまま背面走行……の様に見えるだけで、実際は思いっきり前を向いているんだけどさ。逆関節で腕と胴体を前後同じにしているだけっていう。後ろから追ってきている方から見ればバック走でぬるぬる動いてるんだから気持ち悪いわな。

 そしてさっき言った通り、前に出れば出るほど攻撃されるので反撃しているような感じで背面撃ちをしつつ回避運動。親の仇かってくらいに後ろから攻撃飛んでくるのはちょっと笑えて来る。


「こういう相手の攻撃を避けるのも練習よねー……機体越しってのがちょっと違うけど」


 でも、よく考えたら後ろ向きに撃つ事ってあんましないか。

 そんな事を考えているとロックオンの警告音が鳴り響くので回避行動。前にブースト掛けているのは大前提として、肩と腰のあたりに追加で付けておいたブースターで細かく左右に振っていく。操作的には滅茶苦茶大変なんだけどね、コックピット周りも弄れたらいいのに……サイドブーストを一回やるごとに左右にレーン変更のような感じになるせいで滑らかに動けないから、出来るようにするのが今後の課題。


「向こうでやるよりも殺意マシマシなのはたまらん」


 左にブーストをすると共に、走行していた直線状のレーンに火柱が連続で発生して地面が抉れていく。おー、こわ……使ってる武器の名前はファランクスって所かな。左腕に棘の出るハンマー使ってそう。そう思っていたら次はミサイル警告。


「流石に背面見ながらは避けれんって」


 警告音の間隔が次第に短くなるのを聞き、加速しながらフレアを焚いて対ミサイル行動。後ろで爆発が起こり、コース上を炎上させ黒煙が上がるのをちらり見るが、その煙も何のそのと後続がガンガン煙を晴らしながら突っ込んでくる。ま、そりゃそうか。そして当たり前だけど、未だ先行している私に対しての攻撃が再開される。

 どうもこのゲームでのセオリーとして、レースの終盤くらいまでは団子になって戦うのがセオリーっぽくて、先行逃げ切りをする奴に対して全員が攻撃を繰り出して妨害をしてくる。それも執拗に。


「そういう紳士ルールなんて知るかって話なんだけど」


 だからと言って反撃出来る物はあるけど、使えないのでひたすら回避に専念する。この感じだったらもうちょっと機動力落として回避の練習も兼ねても良かった。それにしたってでかい獲物でバカスカ撃ってくる、大艦巨砲主義ってのも考え物じゃね?そのせいでしっかり回避している割にダメージが入ってるのが気になる。出る杭は打たれるけどその打ち方が派手過ぎるんだよ。


「ずーっと色んな警告音が響くの、鬱陶しいな」


 ロックオンされたら警告音、ミサイルが飛んで来たら警告音、接近されたら警告音などなど……とにかくなりまくってる。それくらい攻撃を貰っているって言う事でもある。


「全く、心の狭い連中め」


 人間諦めも肝心だって事を理解してほしいな。

 勿論私以外って条件でな。


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