422話 もう一度
「何ていうか、種が分かると弱い相手って凄いな」
沈黙した後の小型ゴーレムに止めを刺してポリゴン状に消失していくのを確認。まさか初見の時に此処までやらないと駄目だとは思わないわ。エリア3までは一直線にボスに来たが、今はちまちまとゴーレムを片付けて回る。
手間のかかる作業ではあるが、これをやっておかないとボスゴーレムの強さがえぐいので、ボス戦前の準備と言えば準備だ。そもそもこのボス戦含めて2回もやってる奴はいないだろう。1度でもボスを倒していればわざわざ突破済みのボスを倒したりエリアを探索する必要がないから、先のエリアがある以上はわざわざエリアを戻って殲滅戦をする意味がない。だからコア以外のゴーレムをぷちぷち潰すのは知らん奴にしたら不思議な行為だし、知っている奴に関しては、先のエリアに行かない変な奴。こういう風に見られているだろう。
「地道な活動って奴?」
「どっちかって言うとちゃんとした攻略って感じ」
「2回目だし?」
「それもある」
そんなこんなでゴーレムを蹴散らし続けるのだが、これいつまでやりゃいいんだ。マップ全部回って全部潰すって訳にもいかないし、良い所で切り上げてボス戦突入するのが良いか?レイドボスだからってこれからボス戦開始しまーす!ってアナウンスも無いわけだし、何か分かるものがあれば。
「それにしてもイベントだとドロップがないのが惜しいなあ」
「何かめぼしいアイテムでもあるのか」
「だってこいつの機構やドロップ品が分かったらビーム兵器も夢じゃないじゃん?」
あいんつが停止したゴーレムをあれこれ弄って構造を調べてはいるが、ばらしたりなんだりは出来ず、やりすぎるとすぐに消失してしまうので、研究素材にもなっていない。確かに言われてみれば、モンスターがこういう事をしてくるってのを考えればプレイヤー側が出来てもおかしくはない。
なるほどビーム兵器か、残弾がヒート制だったら残弾を気にせずにばら撒けるから良いんだけど、そういう感じにはならない気がする。一時期MP消費だけで銃を使えないかどうか考えた事もあったっけか……あれもなんか結局頓挫した計画の1つか。
「モンスターに出来て、プレイヤーに出来ないってのなんか納得できんし」
そんなことを言いつつ、小型ゴーレムにトドメを刺してポリゴン状に消失させていく。なんだかんだでついて来させたが、こいつはこいつでゲームを楽しんでいるのがよくわかる。流石に無茶させたらまずいのでシールドや銃受けでカバーに入るが、下手な奴より動けるし、苦戦しても嫌な顔をせずにやっている。
ただ、1個だけ理解というか、意味がわからないのは、その場で思いついたままに銃を作って試し撃ちや投げて使ってすぐ飽きるっていうところだ。本人的には納得のいっていない銃だったからとりあえず使うって感じ、ガンスミスらしい考えなのか?
どこでも、すぐに、簡易的に生産が出来るから材料さえあれば、材料分その場であれこれ作れるとは言え、なんとも刹那的な動き方だ。ついでに言えばこの作って使う、私も巻き込まれるので、このエリア4に来るまでの間に結構な本数の銃を使っていたりする。
「ビーム銃、出来たら教えてくれよ?」
「できるかなあ」
「メイドロボもいるんだ、機械工学は存在しているはずだし、できないとは言えないだろ」
「銃は作れるのに機械工学がないのはこれいかに」
複雑じゃない機構の物は結構作れるのだが、ちょっとだけ専門的な物になっていくと一気に作れない。あのトカゲの奴が苦労してガトリングを作った訳だが、あれもまだ完成していない。やっぱりそのうち機械工学周りは手に入れたいな。
「まあ、まだサービス開始2ヵ月だし、どこにあるかはさっぱりだが」
「どうだろねー、見つけたけど興味がない、関係ないならスルーするとおもうんよ」
それを言われると弱いな。
確かに発見自体はとっくの昔にされている可能性はかなり高い。なんだったら知らない所で活用されている可能性だってある。私だけがゲームをしている訳じゃなく、何万プレイヤーもいるわけだし、私だけが特別って思っているのは自惚れか。
「ま、たしかにな」
「そんなこと言ってたらゴーレムいなくなってる」
「レイドボスが湧いたか……それじゃあサクッとしに行こうか」
気がつけば周りにゴーレムがいなくなり、仕留め切ってなかったのもいなくなっている。本当にエリア4全体にいたゴーレム集めて相手してたって考えるとそりゃ強いわな。そんなこんなでレイドボスの2戦目をするためにボスエリアに向かう。
「これ相手にしてたってマジなん?」
「大マジ、前より人はいるから楽だとは思うけど」
相変わらずのビーム弾幕をタワーシールドの裏で受けながら射撃しては隠れて装填して攻撃を繰り返す。他の連中も遮蔽を使ったり接近戦をして戦ってはいるおかげで安全に撃てるのが楽でいい。なによりも前回と違うのは、小型ゴーレムを倒してきたおかげでちょっぴり装甲が薄くなっている事と、あいんつがタワーシールドも修理と、新しい銃の装填をしてこっちに渡してくるので、攻撃に集中出来る。
「まあこの戦法ならノーダメいけるけど」
新しいライフル銃を受けとって5度撃ちで攻撃、撃ち切ったらそのままあいんつが投げぶつけてダメージ、こっちはこっちで新しい銃を受け取ってそれを使い回す。
傍から見たら単純な作業の繰り返しなんだろうけど、定点で攻撃し続けれるというのを考えれば効率よく、なおかつガンナーとしては満点ともいえる立ち回りではある。
「やっぱりこれに苦戦してたのが不思議」
「もっと装甲は厚かったし、それに合わせて攻撃頻度が高かったから、安定を求めたらこうなるさ」
ボス戦を開始して何度目かのタワーシールドの修理をし、その間は回復だったり、あいんつが次に使おうとした銃に装填を済ませる。ほんと、最初のゴーレム戦が嘘のようだ。
「……それにしてもまあ、初見のびっくりどっきりって大事なんだなって良ーくわかったが」
何度も言ってるが、種の割れてる相手程楽な物は無い。
このまま暫く、周りからも異様な目をされるが、そんな事は気にせずにあっさりとなおかつ安定してボスを撃破する。
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