354話 破壊力3倍

 護衛対象がいた部屋からするっとしゃがんだままで廊下をもう一度確認。左右の階段の近くでうろうろとしているのが2人、転落防止の壁というか柵は格子状じゃないのでしゃがめば一応下からこっちを見る事は出来ない。


『目標を見つけた、そっちは?』

『一応裏手の窓側に付けてはいるが、外回りにも3人程敵がおるのう』

『なるべくこっそり、か……左右の階段がある所に車は付けれそう?』

『そうじゃの、北側なら大丈夫そうじゃ』

『分かった、そっちに向かう』


 一旦会話を切ってから廊下の2人、爺に指定した方向の階段付近にいる敵に対して軽く立ち上がってG12を構えて一発。パシュっと音を立てると共にヘッドショット。ヘッドショットスキルもオンにしたので下手な相手は食らったら死ぬはず。

 当たったのを確認したらすぐにしゃがんでまた見つからない様にし、護衛対象の部屋に入ると大きめに息を吐き出して、整える。


「一応起き上がってこないから大丈夫か」


 流石に全年齢だからヘッドショットで一発かましたら頭吹っ飛んで死ぬ、何て事はなかったが、そのまま倒れてピクリともしないっぽいし、多分死んでるか気絶しているはずだ。とは言え、その辺はどうでも良くて、問題になるのは倒れたのが発見されるかされないかって話よ。

 息を整えつつカチャンと金属のぶつかる音が響くと共に、薬莢の跳ねる音をさせてからもう一度大きく息を吐き出す。


「次は反対側」


 ドアを軽く開け、ちらりと様子を伺ってから先程と同じように部屋から出ると共に、一呼吸。息を止めてから、廊下のもう1人に狙いを付けて一発。パシュっとまた音をさせると共に1人倒して大きく息を吐き出す。こういう、しっかり隠れて一発ずつ確実に狙うってのにこんなに緊張するとは。

 ただ、これで2Fの廊下に他の敵はいないので、隙を見つけて下に降り、爺の車に乗り込んでさっと逃げれば終わりだ。

 別にHPやMPが減っているって訳ではないのだが、


「身を低くしたままついてこい」

「おう、頼むぜブラザー」


 いるよなあ、こういう調子のいい相手。

 とりあえず2人で渡り廊下に出ると共に、息と身を潜めて北側の階段の方に。階下から見られない様に左右を常に確認しつつ、階段の下を確認、道路の方をちらっと見て顔を引っ込める。

 

『北側の道路に待機して』

『今向かう』


 そういうと共に、反対側、南の方でクラクションが響く。

 一旦向こうに注意を引いてくれたという事かな。少しだけ待っていると階段下、駐車場の入口に見知った車が通過して、少しだけ先で停止する。


「ひきつけるからあの車に走れ、分かったな」

「お、おう」


 南側の方に行っている敵の方に向かい、そのまま2階からG12じゃない新しいもう一つの銃で撃ち下ろしを始めると共に、護衛対象が爺の車に向かって走っていく。

 引き付ける目的で音を出すというのもあるのでG12は不意打ち特化だしここでお役御免。そもそもマガジンも用意してないうえに手動なので手数が減るので選択肢としてないけど。


『引き付けるから、あの鬱陶しい奴を届けに行って』

『うむ、なるべく早く帰ってくる』


 こっちに気が付いた階下の敵が私に向かって普通に魔法をぶっ放してくる。ファンタジーとSFを見事に融合している感じで、やたらと連射してくるのだったり、散弾のように放ってくる。ついでに言えば属性も色々。そんな弾幕を放ってくるので転落防止の壁にガンガンと魔法が炸裂し、身を出している時には魔法が霞めてHPが減っていく。


「遠距離攻撃主体の相手ってまあこうなるよなあ」


 カバーをしつつ装填をし、本格的な攻撃を開始。

 


名称:THKer 武器種:大型拳銃

必要ステータス:STR20 DEX25

攻撃力:+50 命中:-30 命中時固定ダメ:150

効果:シングルアクション 装弾数3発 金属薬莢 中折回転弾倉 AGI-5

付属品:グリップ(命中+5 銃捌きに+補正)

詳細:強力な一撃が売りの大型拳銃、回転弾倉により継戦能力が上昇

  :重量増加により命中とAgiにマイナス補正

 

 

 新しく作ったというか手に入れた銃はCHの進化系。装弾数が増えたのと機構が増えたのもあってマイナス補正が大きくなったが。


「ふーい……これこれ、こういう感じの戦いしたかったのよね」


 賢いAIではあるんだが、隙というか、敢えてこうしてますって動きをしているのはゲームをしていれば結構分かるもので、数人がこっちを撃ちつつ、残ったのがゆっくり距離を詰めて包囲しにかかってくる。まあ最近というか今じゃ普通のFPSでもこれくらいはやってくるか。


 何度かちらちらと壁から頭を出して相手の数と場所を見てから大きく息を吐き、THを構えて一気に立ち上がり、狙いを付けた敵1人に3射。

 CHから変わった大きい所の一つだが、装弾数が3発って事は三度撃ちが使えるので、圧倒的に火力が上がる。そこから装填を使えばMPさえあれば速射3発を連射出来るようになるって事よ。

 とりあえずまともに3発全部当たったっぽいので、良し。固定ダメージと火力の上がった銃のおかげもあって撃破速度がかなり上がってる。


「火力上がるって素敵だわ」


 がしゃっとシリンダー部分を折ると、薬莢が軽く飛んでちゃりちゃりと音を鳴らす。何でか知らんが、この薬莢が飛ぶって動作、やけにこだわっている気がするんだよな。別に機能としては見栄えだけだし、そもそも薬莢が飛ぶって機能はリボルバーなんかにはねえ。


「久々に使ったけど、やっぱ3射出来るって強い」


 ガンベルトから新しい弾を込め、魔法の炸裂音が響く中、葉巻を取り出して壁の少し上に出して相手の魔法を待ち、連射されている魔法の一つが葉巻に掠ったおかげで着火する。

 それを咥えてふいーっと紫煙を漂わせながら、仕舞って置いたマシンガンも取り出しておく。こっちは前々から持っていたランペイジなので特に変わり映えはせず。用途的には牽制用だな。


『そっちは?』

『今からそっちに戻る、大体3分程かの』

『早めに宜しく』


 そこから爺の奴が来るまではひたすらに階下の奴と撃ち合いよ。

 流石に棒立ちの相手って訳じゃないので三度撃ちもマトモに受けてくれなくなったので単発で撃ち、隠れて装填してを繰り返し、西部劇って訳じゃないがひたすらに辺りが焦げ付いていく。こういう時に限って警察って仕事してねえな!


「っと、そういうのは無しだろ」


 階段からゆっくり上がってきた奴に対してマシンガンで反撃というか牽制を入れて下がらせ、階下の奴にもついでに浴びせておくが、元々命中精度が悪いので本当に派手にばら撒くだけなのだが。


『着いたぞ、北側だ』

『今からいく』


 クラクションの音が響くのを聞いて、インベントリからもう一つ新しい金属筒を取り出して火を付ける。


「楽しかったけど、遊ぶのはまた今度な」


 相手が固まっている辺りに筒を投げ込むと一気に閃光が広がる。

 そうそう、レアメタル採掘で手に入れたんだよ、マグネシウム。まあ、試しに作ってこれ以外在庫は無いので実験武器の一つなんだが。とりあえず攻撃が一時的に止まったので、良い感じに効果が出てるっぽい。

 とにかく少しでも時間稼ぎが出来たのならよし、北側の階段の方へ走り始め、その階段を降り始めると共に攻撃が再開されるので必死こいてそれを避けつつ、車の後部座席にばたばたと乗り込んで運転席の後ろをばんばんと叩いて出せと合図を。


「護衛対象は?」

「しっかり届けた、後は逃げるだけじゃ」

「だったら早くだしてくれんか」


 車にばしばしと連中の攻撃が当たり、ボディが凹んだり穴が開き始めるが、反撃の為に後部座席の窓を割ってマシンガンでまた掃射して牽制を掛ける。


「出せ出せ!」

「分かっておる!」


 きゅるきゅるとタイヤがスリップするほどにアクセルを踏んでいるのを音で聞きながら一気に加速してその場を離脱。

 

「ふーい……さっさと逃げよう、追いかけられるとめんどくさい」


 葉巻の紫煙を大きく吐き出し、使った銃の弾を込め直している最中に、後ろから衝撃が走る。


「……追われたか?」

「どうやら他勢力のプレイヤーじゃな」

「なるほど、そういう繋がりか」


 だったらこっちも手加減しないぞ。

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