336話 いつも通りの攻略準備
どうやってあの雪原を超えて雪山に行くか。
ファーストアタックで課題は見つけたわけだから、それを一つずつ潰しながら先に進むってのが鉄板っちゃ鉄板、とりあえず問題の羅列をしていく。
問題1 雪原での視界の確保
これは単純に吹雪いた時にカマクラや退避できる場所をすぐに見つけるために必要になる。自分で築城してカマクラなり雪避けを作れるんであればそっちでも良し。どっちにしろ荒れた場合には敵に対しては良いが、フィールドや環境に対して弱いのは前々から言っていたのでいい機会だし、何かしらのスキルを覚えたい。
問題2 防寒対策
こっちの問題に関しては金髪エルフかゴリマッチョの裁縫組に任せるしかない。と、言ってもこの辺でゲームの仕様がひっかかるのだが、例えば着込んで防寒するとなると重ね着としてのペナルティが発生する。これは前にキャットスーツを中に着込んでいた時もあった話だが、ステータスや動きにマイナスの修正が掛かる。
つまりあまりにもガチガチに防寒して着込みまくると凍結はしないが動きが鈍る、だからと言って動き重視であまり防寒をしないと凍結の状態異常に掛かるのでこの辺のバランスも問題になる。まあ、此処は少しずつすり合わせしていって確認をするしかない。
問題3 モンスターに対しての潜伏行動
どうしても行動出来ない状態になった時に、この間のサメの様に天候が悪い時に襲撃されるとどうしても苦戦せざるを得ない。トラッカーは必須だが、戦闘が終わった後は完全に周りが荒らされているうえに、他のモンスターがやってくる場合もあるので戦闘前、戦闘後のカバーの為に潜伏系のスキルが欲しい。
問題4 雪中行軍するためのスキル
これも必須、そもそも厚着して動きが鈍くなるのもプラスして、さらに雪で足を取られているのもあるし、どうしても移動しなきゃならない時の移動速度も関係してくる。もたもた移動していたら時間ばかりかかるわけで、吹雪に当たる可能性も高くなる、だからこそ行軍速度が大事になる。
とりあえず最低限この問題を解決するようにしなきゃならない。
対処しやすい物から片付けるとして、まずは防寒具だな。
「またいつもの急な依頼ですね」
「防寒さえ出来てればいいよ、上から着込んでどんなものか確認したいし」
「コートで良いですか?」
「任せる」
クランハウスの1F、いつも引き籠っている裁縫の作業場、気が付いたら衣装箪笥やらが増えてさらに私室感が増している。金と家具さえ揃えていれば、ある程度の自由度を与えているんだが、かなり手を入れているな。知らない間に裁縫の作業台もグレードが上がっているみたいだし、本当に自由にやってるな、こいつは。
「えーっとどこに仕舞ったかな……」
「インベントリに仕舞うってのはしない訳?」
「こうやって探すってのも楽しいんですよ」
うっわー、わかんねえ、おしゃれとかそういう服飾絡みの楽しみ方って。
仕事の時は決まった仕事着だし、どこか出かけない限りはジャージで済ませている私ってどうなのよ。
「あったあった、冬服のデザインしていた時の奴ですが、良いですか?」
「何ていうか、冬用って感じばりばりだなあ」
フード付きの厚手の生地のコートで、フードの周りにはファーが付いてもっこもこ。
これって雪が付いたり濡れたりすると中々うざったいから好きじゃないんだよなあ……これをデザインとして楽しんでいる奴は大体道民じゃない奴。
「此処で着ただけじゃあまり効果が分からん」
「試してダメだったら持ってきてください、そのデザイン普通であんまり出してない奴なので」
「そこのこだわりはある訳ねえ……」
折角の黒いスーツと赤いネクタイが隠れてしまうが、しょうがない。
とりあえず上に着た状態でぐいぐいと体を動かして動作の確認をしつつ、銃を抜き……。
「ああ、そうか……こういう事もあるか」
上に一枚羽織っているからガンベルトが隠れる。だからってコートの前を開きっぱなしであんな寒い所を移動するって奴はタダのアホなので、それはやれない。
「ふーむ、こうなるとガンベルト周りもそろそろ改良するか」
たすき掛けできるような物でコートの上から使える物が良いな。攻撃に転ずるものはインベントリ収納していると、インベントリを出して、取り出して、インベントリを消して、使うって無駄な動作も入るから、これも改良しておこう。
「小物は専門外なので」
「だろうなあ、そっちまでは求めたら酷だって分かってる」
うーん、手袋と靴も防寒にしておくか……?こういう小物は結構ゴリマッチョの方が得意だし、頼んでみるか。たまには顔見せないと寂しがるし。
「防寒用のスーツとかも考えておきます?」
「一応頼むわ」
コートの前を開けてぱたぱたと仰いでからその場を後にして、ゴリマッチョの所へと向かう。
「あら、アカメちゃん、厚着してどうしたのぉ?」
「雪山に向かうからだよ、それに小物作るの得意だろ」
「って言うか折角の髪の毛変えちゃったの?ロングの黒髪良かったのにぃ」
「ヘアスキン券買ってるから、すぐ変えられるんだよ」
えー、ほんとぉー?って良いながら私の髪の毛をじっくり見て、インナーカラーを確認すると「ほうほう」と楽しそうな声をだしながらじっくりと観察をするのでさっさと用件を伝えていく。
「防寒対策出来てる手袋と靴が欲しいんだけど、どうにかならない?」
「また特殊な注文ねえ……今すぐは用意出来ないわよ?」
「うちで小物を作れればいいんだけど、やっぱすぐに手に入るには、此処で頼みたいじゃん?」
「やだぁ、もぉ、アカメちゃん、贔屓にしてくれるんだからぁ」
相変わらずのでかい体をくねらせながらしばらく私の髪を見てからログアウト、数分して戻ってくるとヘアスキン券を購入したのかすぐにそのアイテム確認を始める。
「ヘアスキンの課金ってしてるもんだと思ってたけど」
「中々手が出しずらいのよねぇ、こういうのって……だから使ってる人が身近にいるとついねぇ?」
「自分のクラン員の使用感を聞いても良かったんじゃないのか」
「自分達よりも他の子に着せたいって願望が強いからしょうがないのよぉ」
おおすげえ、金髪ロールのおねえって初めて見たけど、すげえインパクトだな……夢に出そうだ。
「それにしても毎回何かやるたびにうちにきてるわねぇ」
「サービス開始一ヶ月ちょいだけど、長い付き合いだし」
「ま、そうねぇ……マップ攻略ならパーティ組んだらぁ?」
一応それも考えたのだが、どうもパーティ組むのって肌に合わないし、無茶ぶり出来るのがいないと機能しないことが多い、よっぽど強さに信頼が出来る奴じゃないと、動きにイライラもするからソロの方が気楽ではある。
「私と組める奴なんてそうそういないから」
「理想と要求が高いってのも困りものねえ」
ふふーっと楽しそうにこっちのを顔を見てくるのでぷいっと横に背けてみる。
「で、いつできる?」
「まあ数時間ってとこねー……料金はこんなもので」
ぱっと手を開いてこっちに見せてくるので5万ってとこだな。
高かったら高かったでちゃんと言ってくる。
「って言うか、今まで防寒用の装備ってなかったの?」
「性能と見た目両立するの、アカメちゃんだけよぉ?」
言われて見りゃそうだな。
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