314話 次の狙い

「で、何かいいアイディア出た?」

「アタッチメント作れって言ってたろ、作りやすくした爆弾でも十分だと思ったが」

「二の矢三の矢ってのは用意しておかないとねー」


 いつもの射撃場でパスパスとグリップの付けた各種銃器を代わる代わる使いながら使用感をメモ帳に記載しつつ空薬莢を辺り散らばせる。それにしたって無限弾は良いな、ステータス全部1にもなって良いから無限弾使える装備欲しくなる……いや、それだと銃の装備が出来なくなるわ。


「かと言ってこれ以上は素材的にも機構的にも限界だよ、工業化したいし、なにより樹脂素材が欲しい」

「素材的な話で限界が来てるんだよなあ」

「完全に0から組み上げていくわけではないうえに構造も簡略化されてるし、既に既存の物として存在しているから難しさはあんまりないんだが……これ以上がな」


 手回しガトリングをぺしぺしと叩いてから、ため息を吐き出して近くの椅子に座るトカゲ。最近闘技場のランクもめっきり落ち込んできて、上位10人からも零れてしまったと言っていたな。がっつり対策されているせいもあって中々大変だとか。


「各銃種別のスキルなんてないだろ、ボス」

「私はあるわねー、単純に二次でその銃の専門って感じだからガンスミスじゃ、ねえ?」

「かー、やっぱりそうだよなあ……ガンスミスのメリットが此処に来てよくわかんねえよ」

「やっぱ銃を作ったりカスタムしたり、でしょ?その辺りで他の奴と差別化してると思うわよ」


 撃ち切ったG4のマガジンを手首を捻って飛ばし、次のマガジンに入れ替えてコッキング。うーん、この動作が中々出来なくて苦戦してたが、出来ると楽しいな。犬を殺された暗殺者がやっててやりたかったんだよね、これ。


「もう1つうちのクランの弱点ってのが露呈してるからそっちもどうにかしたいのよね」

「弱点なんかあったか?」

「素材回収できるのが少ないせいで、共有ボックスの中身が結構ぎり」

「ああー……それは確かに……」


 うちのクランで言えば弾の消費量ダントツ1位なのはポンコツだったりする。次点でトカゲ、私が一番下になるわけだが、トカゲはトカゲで闘技場の仕様で無限弾だし、私は1発の方がでかいから無駄弾が無いってのが理由かな。


「幾ら買取の一覧をサイオン達に提示しているとは言えだし、火炎瓶と焙烙玉作り始めたのもあって色んな素材が足りんわ」

「鍛冶クランにいたときはとにかく買取しまくってたから参考にはならんか」

「うちのクランに誘って、最低賃金提示して、後は歩合ってどうかな」

「そこまでするか?」

「しないと足りないくらいに消費が激しいの知ってるでしょ」


 金属素材、布素材、錬金素材、とにかく消費しまくっているわけで、ログアウト前や何もない時は素材集めばっかりやっているって事もある。


「そういう訳だから専属のギャザラーが欲しい」

「収集専門はガンナー並みにいないだろ……基本的に生産が使う材料を自前で手に入れるためだからよっぽどの物好きじゃないと」

「何万もいるプレイヤーでその物好きが全くいないと思う?」


 あまりの難度で一時的に絶滅したガンナーですら、ゆるやかながらも今は人口増加中。犬野郎やちんちくりんみたいな極端なステ振りの奴が他にもいないって訳じゃないし、変なプレイやちょっと違った事をやっている奴は絶対にいると思うって言うかいるだろ。


「今回ばかりは見つからんと思う、今までが良すぎただろ」

「だろうなあ、この辺は結構長い目見て募集掛けるかな」


 襲撃イベント中にも素材集めれたら良かったんだけど、流石に高望みが過ぎるか。襲撃イベントも1回でリアルタイム30分~1時間、その次の襲撃が結構空いたりするから持て余す事が多かったりするから、少しでも人手があれば良かったんだけど。


「それにしても募集ってどうするんだ」

「とりあえず何個か思いつくからそれをしてだなあ」


 また撃ち切ったG4のマガジンを飛ばして外し、次のマガジンを詰めてから一息。


「何度も言ってるけど、固定ダメージの低い銃はもう限界だなあ……使い所が多いから重宝してたけど」

「アタッチメントでも火力上げられないし、弾の開発再開するか?」

「したいけど、試作するほど材料の余裕がないでしょ」


 それもそうだ、と言いながら顎に手を当てて悩み始める。とにかく弾の消費が激しい上に、売りにも手を出しているから素材自体は自転車操業状態。消耗品は消耗してなんぼだし、素材は無限に取れるから取りさえすれば数は揃えられるのだが……って言う堂々巡り。


「何個か新しい銃の案はあるからそれも試したいんだけどねぇ……久々に情報クランに行ってくるか」

「こっちも知り合いを当たってみるか」

「確保出来りゃ私じゃなくて、トカゲもポンコツも恩恵があるし、なっ」


 手元で撃ち続けていたG4のトリガーガードに指を引っ掛けて回転を掛けながら上に投げ、背面に飛ばしてキャッチ、そのまま的に向けて数発。スキルのおかげもあってかこういう事も出来るの楽しいな。なかなかリアルでエアガンやモデルガンでやるには失敗した時のリスクを考えると度胸がいる。


「そういう訳で、ギャザラー確保で行こう、戦闘力はこれ以上あってもしゃーない」

「その戦闘力を上げようとしているってのがまた矛盾してる気がするな」





 情報クランも何だかんだで長い付き合い。

 

「あれ、マスター代わった?」

「前の人は酒造クランに行きましたよ」


 趣味も此処まで来ると凄いな。ワールドシミュレーター的な側面もあるし、謎技術で味も分かるから酒飲みには天国なんだろう。自分の好きな味の酒を造れるって酒好きには良いゲームよ。

 

「ふーむ、今度会いに行くか……ところで情報が欲しいんだけど?」

「どういう物をお探しですか」

「ギャザラー系プレイヤーかな、クランでも良いけど」

「少々お待ちを」


 とりあえず出された琥珀色の液体が入ったグラスを持ったままくるくると中を回しつつ、調べているのを待つ。今思えば情報クランってWikiで良くね?って思ったんだけど、そういえばここのクランがWiki経営してるって言ってたな。

 データ埋めていくのや図鑑コンプって作業は私も好きだからそう言うのを張り切って集めている集団か……傍から見てたらすげえ変態集団だな、こいつらって。


「プレイヤーとクランはありますが……連絡は取れないですね」

「ああ、そこまでしてくれたんだ?」

「贔屓にしてやれと前任者から言われていたので」


 ちょいちょい会ってた程度だったけど結構義理堅い奴だったのね。


「やっぱり特殊な奴は珍しいか」

「自前で採るのが基本ですから……プレイヤーズクエストって方法は?」

「んー、考えたけど量も頻度も多いから、だったら、って感じねー」


 まあやっぱりメインでやってる奴ってのはなかなかいないだろうから、この辺は本当に運と偶然を狙うしかないか。


『ドルイテンで襲撃予想がされました、襲撃予想時間はこれから1時間後になります』


「っと、深夜の襲撃か、準備していくとするかな」


 アナウンスを聞いてから、グラスを飲み干し、情報代と酒代を硬貨データをカウンターに置いてその場を後にする。とりあえず今回もしっかり商品宣伝しないとな。

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