296話 しっかり反省会
流石に高レベルボスなだけあってまたレベルが上がったわ。ついに私も40になったわけだが、そんなに強くなったって感じはない。とりあえずDexに2振って終わりかな。
このゲームのちょっと気になるポイントの1つではあるんだが、ステータスのポイントを貯めて後で使うって事が出来ない所はある。
ステータス上げるスキルも該当ステを25まで上げれば底上げスキルが手に入るわけだが、これも25じゃなくても手に入りそうな感じがちょっとはありそうだけど、条件もありそう。
とにかくボスも倒したし、一息付けたし、座ったまま治療を受ける。
「殴りの割にMPよく枯渇しないな」
「MPポーションがぶ飲みですよ、それと食事効果で底上げしてるので」
インベントリに残ってたMPポーションを渡し、回復をそのまま受ける。状態異常がとって付けたようにぽんぽん出てきたけど、高レベルになっているからなのか、こんな表示とか今までなかった気がするんだよなあ。
「って言うかこんなに状態異常掛かんなかったよね」
「通常モンスターは、そんなにですから、ボスだからってのもあるかと」
確かにこんなにがっつりダメージ受けるって事はそんなになかったし、貰ったとしても20以内のダメージだからか。50ポイント以上のダメージを一気に貰うと骨折になるんかな?だとしたらガンシールドで受けた時に右腕だけ骨折したのは、多分「与ダメージ」-「受け防御」=「被ダメージ」って計算式で、与ダメの段階で一定以上のダメージが出ていたから、って所かね。
「ゲームだから痛みはないけど、動かそうと思って動かないってのは結構ストレス」
「足の負傷は、突き刺さってる苦無を抜いたらいいだけ、みたいですね、こんな効果あるの知ってました?」
「知らん、素早く投げれるってだけじゃないかって思ったわ」
右腕の治療が終わったので肩をぐりんぐりんと回したり、腕を捻ったりしながら具合を確かめてから自分の足に突き刺さっている苦無を引き抜いてぽいっと捨てると、カランと音を立てた後、それもポリゴン状になって消失していく。
「ガンナーですら分かってないのに、さらにわかってない忍者なんてもっと分からないに決まってるわな」
とりあえず状態異常も無くなったし、いつもの葉巻を取り出し、一服。
それにしても弾無しのガンナーほど役立たずな職はないなあ……あと、そうだ、HSの機能をオフっておかないと。
「分かってないんですか……?」
MPの回復し終わったメカクレが近づいて、私の顔を覗いてくる。ナチュラルでこういう可愛い動作が出来るってどういう教育されたんだ。
「そういうメカクレは魔法弓って分かってるん?」
「……何の事でしょうか……?」
あ、こいつも全部が全部分かってるって訳じゃないな。まあ、そういうもんだよな。全て解明されたものを覚えている訳じゃなくて、自分で発見した物を覚えながらやっているんだから、現在進行形で理解しているって話よ。
「とりあえず戻ってから話しません?ボス待ちのパーティーに譲らないといけませんので」
サンドバックが親指でボスエリアの入口の所にいる別パーティーを指し示すので重い腰を上げる。もうちょっとゆっくりさせてほしいもんだ。
後から聞いた話ではあるんだが、ボスの沸きが大体ゲーム内時間で2時間~4時間。リアルで30分から1時間程度で沸いてくるので結構順番待ちをする事が多いらしい。
……改めて考えてみたらどうやってあのバトルジャンキー共はボスを狙い撃ちしてるんだろうか。そういうボス討伐系のクランや情報網ってのがあるのか?
「アカメちゃん、何やってんのぉ?」
「って、いるんかい」
うさ耳ぴょこぴょこさせているバトルジャンキーがいるでやんの。
「今さっき此処の強化ボスを倒した所よ」
「アカメちゃんがボスなんて珍しぃー……んー、ガウェインちゃんのとこかぁ……納得!」
「納得されるのね……まあ、頑張りなさい、私はもう御免かしらねぇ、FWS封じもされたし」
「うぇー、じゃあ、苦戦するじゃんかあ。アカメちゃんが苦戦する相手って相当だしぃ」
唇尖らせつつ談笑をしていたらそれぞれのパーティーから呼ばれるのでサクッと会話を終わらせ、サンドバック連中と一緒に帰還。バトルジャンキーの方はこれからボス退治ってのでウォーミングアップをし始めてるみたいだが、多分やられるんじゃねえかな。
「で、今回のボスに関しての情報を纏めるので」
あれから脱出と帰還アイテムを使ってさっさと戻り、サンドバックのクランハウスへ。
そこから円卓に座りつつ黒板の前に立っているサンドバックの話を聞きながらティータイム&反省会。こういう細かいことをするのが信頼されている証っぽい。
ちなみに犬耳とメカクレは別の用事があるって言うんでドラゴン頭、サンドバック、私の三人での会議になる。
「三形態あるってのが厄介だったわねー……オーラ付きになる条件で形態が増えるってのは他のボスもあったんか?」
「基本的には強化されて、と言うのが報告には上がっていますが、形態変化は初でしたね」
「三形態って言うけど、ティラノから犬になって、後半は攻撃パターンの変化と外装のパージだから二形態だと思うが」
「んじゃ二形態、ティラノ自体は倒した事あんでしょ?」
「ええ、ああやって機械化はされていないのでしっかりしたティラノサウルスでしたが」
黒板に書き込みしたり、メモ帳のウィンドウやメッセージボックスを開いたりしながらサンドバックが色々と展開したりばたばたとしている。ああ、でもああいうの好きなんだろうな。分かるよ、誰も見てないだろうけど、自己満足でデータを纏めるって結構楽しいのよね。
「攻撃方法だけでいえばワンパだし対策しやすい相手だったのは確か」
「まー、こっちのサンドバックを使っての立ち回りに依存し過ぎたってのが大きいわねぇ……」
「面目ない」
おかわりの紅茶をクラン専属NPCから貰い、ちびちびと飲みつつ黒板の文字を眺める。
「あー、後気になる所で言えば、骨折って状態異常は今まであったの?」
「それは前からありました、一定以上のダメージや勢いの付いた攻撃で数m吹っ飛んだりするとなりますね」
確かにがっつりダメージ貰った時と、吹っ飛ばされた時に骨折したわ。あれも軽症~重症まで細かくあるみたいだけど、その辺はダメージ貰わないと検証できないから難しいな。
「オーラ付きの前はどうだったの?」
「は、なかったですね、単純にオーラ付きになると色々と付与能力、強化が入って一味違うって形になるのが基本ですね」
「あと前に戦ったとか言ってたけど、その時はどうして負けたん」
「ガウェインがソロで突っ込んで攻撃力不足だったっけか、結構苦戦したとかも言ったな」
「ふーむ、後はオーラ付きが持続するかどうか、ってとこか……」
一回発現した奴が連続でオーラ付きになるのかっても気になるところだな。通常モンスターは数が多いから倒していたら出てくるってのは雑魚狩りしていた時に分かったけど、ボスは今回が初めてだし……お、そうだ。
『ジャンキー、今いい?』
『あー、ごめん、ちょっと余裕ないかなぁ……』
『そう……ティラノボスにオーラついてる?』
『ガン無視されたっ!うん、ついてるねぇ、この辺は昨日くらいのアプデで強化個体が出るようになったかなぁ』
なるほどねえ、やっぱりそうなってくるとイベント絡みって線は薄い気がしてきた。
「リポップしたボスもオーラ付きみたいだし、条件を満たしたらそうなるっぽいわね」
「後はイベントかどうかって所がポイントになるな。新要素として入れたのか、期間限定なのか」
「その辺は分かりませんね、公式インフォメーションにも記載はないですし、縦読みやサイトのUrlを弄ってみたりしましたが成果無しですし」
「サービス開始して一ヶ月でイベント無しってどうなのよって所よねえ……ここから半月くらいのペースに落として行くか、月行事にするのかって所もあるかしらね……ユーザーとしては2週周期くらいだと飽きが来なくていいけど」
とは言え、その辺は運営が考える事なので私がどうこう思った所で何にもない。長期的なイベントにさらに細かいイベントを入れ込んでくるかもしれないし、アプデとしてとりあえず実装って可能性もある。不評だったら戻せばいいってだけだし、好評ならそのまま。私としては概ね好評より。
「まあこれからオーラ付きモンスターがどう扱われるかはプレイヤー次第ですかね」
「そうねえ……ま、オーラ付きになってどうなるかを研究するのは良いとして、運営側のことまで考える必要はないって事ねー」
円卓から立ち上がってふーっと大きく息を吐き出して伸び一つ。
「めんどくさいボスやるなら事前に言いなさいよ」
「肝に免じておきます」
ふふっと笑って返事をしてくる。二度と呼ぶんじゃねえぞっていわないだけ、私すげえ優しいわ。
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