239話 アカメ、収監されるってよ
ライフルを肩に担いだままエルスタンを練り歩く。
アイテムショップとガンナーギルドで買い物でもしようかなと、いつものルートで歩き、店に付いた時に気が付く。
「ああー……文無しだったわ、私……」
最近はジャガイモ錬金もそこまでやらなくなってるし、クラン資金に手を出し過ぎている気がする。勿論売り上げはかなり上がってるし、メンバーに渡す報酬金もそこから捻出はしているけど、サイオン姉妹に「私用で使いすぎです」「資金の残高が減っています」って再三の警告メールが飛んできている。
使ってなんぼの金だし、私のクラン資金って事は私の金でもあるのに、使い込んだらすぐ口煩くメールが飛んでくる。
財布握られた夫見たいな感じってこういう事なんだろうな、私女だけど。
って言うか私の金なんだけど!私が地盤を築いたんだけど!
「必要経費、必要経費」
クランメニューから出金処理をぽちぽちっと、いやー、ガンナーって金掛かるからしょうがないなあ。
【ヴェンガンズカンパニー、サイオン様からクラン資金減少の警告メールが届きました】
【ヴェンガンズカンパニー、アイオン様からクラン資金の使用について警告メールが届きました】
【ヴェンガンズカンパニー、シオン様からクラン資金の出金回数についてのメールが届きました】
クッソ、めっちゃ管理されとるやんけ!そもそもこのメールは纏めておくって欲しいんだけど!
有能過ぎる秘書ってのも考え物だな……もう1人増やそうとか思っていた私が恐ろしいわ。そのうち何を購入したかまでも全部管理されて領収書切ってくださいなんて言われそうだ。いや、ゲームよ、ゲーム、仕事でやっていることをゲームでもやりたかねえわ。
「後で説教くれてやる……!」
ちなみにさっきの警告系メールはこれが初めてじゃなかったりする。サイオン姉妹に私と同じレベルでクラン関係の権利を与えていたのが失敗……って訳でもないから困りものなんだよなあ。
「あー、金があるって素敵」
10万と端数のちょろちょろっとしたのを引出し、自分のインベントリにある事を確認。T2Wも結構インフレが進んでいるから10万も端金になっているんだけど。何だったらファーマー金策が最近流行ってるみたいで小金持ちがかなりいるらしい。長者番付なんてもんもあったな、そういや。
「今すぐ買う物はないからいいんだけど、小金は持ってないと不安だし、しゃーない」
そんな事を言いながら露店でめぼしい物が無いか確認してからクランハウス……ではなく、マイハウスの方に帰宅。多分今のタイミングで戻ったら、クラン資金の事で何を言われるかたまったもんじゃない。しばらくこっちに逃げ込んでおこう。
「うちの敏腕秘書は金に厳しいわ」
葉巻を咥えてふいーっと一息。
そういえばあれこれやってたらイベントの詳細も出てたな。
「こういう時に出してっていったらすぐに欲しい物だしてくれるから楽なんだよなあ、うちの敏腕秘書がおると」
メニューを開いてインフォメーションをぽちぽちっとな。
おー、出てる出てる……今回開催するのは、時間を決めてその時だけって訳じゃなく、一定期間イベント開催していて、その期間中に参加する事でマッチングする方式に変えている。
一応イベントとしては脱出ゲームをすると言うのだが、参加した時の内容を口外すると言うのはやめてくださいと公式が言っている。しかしやめろって言うのであって、強制力と言うのはない。この辺はプレイヤーのマナーに任せるらしい。
で、私の読み通り、新規も既存も分け隔てなく参加できるという点での脱出ゲーム。
マッチング人数は50人前後でスタート、結構大規模な感じの脱出になるのな。
その他細かい物に関してはイベント内で説明されるのでインフォメーションから分かるのは此処までだな。結局のところイベント開催期間と、ざっくりしたイベント内容、細かいルールと注意事項なので、あとはイベント参加のお楽しみって事か。報酬諸々に関しては参加した後の結果次第だってよ。
「こういうのはさくっと参加して、どんなものかをまず体験してから攻略法なり、報酬を確定していくってのがいいもんよ」
イベント参加のボタンが無いのでメニューを開いてあれこれと操作する。
こういうのはちゃんとわかりやすいUIをしてほしいんだけど……と、思ったらちゃんとインフォメーションから飛べるようになっていた。
で、参加しますか?と言う表示を押すと共にマッチング開始。を、している最中に思ったけど、私何にもアイテム用意してないわ。
これはちょっとやばいかなあ、今まで散々、イベント参加する時は準備して、あれこれと対策していたけど、こんな無策に参加する事って初めてじゃないかな?
とりあえず一旦キャンセル掛けて、出直し……する前に。
【マッチングが完了しました、イベントマップへ転送します】
はい、手遅れー。
いつもの光の輪から視界が開けると共に場所と状態を確認。
おーっと、これはどういう事かな?
「やっべえ、この絵面ってシャレになってねえぞ!」
縦に6畳くらいの部屋に、ベッド1つ、トイレ1つ、部屋の外に出る前に鉄格子が1つ。
脱出ゲームって、監獄からかよ、これはやべーぞ。何がやばいって絵面が非常にやばい。
とにかく状況を確認するためにインベントリを開いてアイテム諸々を確認するのだが、すっからかん。
装備も無ければアイテムも無いし、手元に残っているのは宇宙猫Tのみ。これは性能含めて関係ないからこのままっぽい。ついでに言えば所持金も勝手に全部金庫行きになっている。
レベル、スキルは据え置きってのはいいけど、脱出ゲームでガンナーって何やりゃいいんだよ、看守から銃でも奪えって言うのか……そういやこんなゲームあったな、監獄から脱出するって奴。
まあ、個室ってだけありがたいわけだが。まあとりあえずの状況を確認できたが、まさかここからスタートって訳じゃないだろう?何にもない所から鉄格子を突破しろって無理よ。
と、思っていたらメニューが勝手に開いてルール説明が開始される。
1.イベントの成功条件は監獄からの脱出。失敗はギブアップ、もしくは時間超過
2.ソロ、パーティを組むのは自由
3.対人要素は無し、但し1の条件を満たすための物は可とする
4.脱出順位によっての報酬変動は無し
うん、まあ、分かりやすい。
頭を捻らないで良いってのは良い所なんだけど、あまりにも何にもないと逆に難しいんだよなあ。
で、こっからはどう脱出するのかって話になってくる。
正面と隣にもプレイヤーがいるのでがんがんと鉄格子を揺らしたり、壁を殴ったりと色々動き始めている。これが単純な脱出ゲームならいいんだけど、真似をしたのが脱獄ゲームの方だったら……まずは点呼だな。
「囚人共!外に出ろ!」
おっと、囚人と言われた、こりゃー、本格的に脱獄だな。
それにしてもマフィアが監獄って絵面やばいよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます