222話 手出し無用
『そういう訳で偽物が現れた』
『何とも急な話……でもないのか?』
『うちのクランに喧嘩売るってよっぽどの馬鹿か世間知らずだろ』
『何かとムカつくときがあるかもしれないけど、そこは大人な対応で頼むわ』
今ログインしているトカゲと猫耳には強めに釘を刺しておく。うちのクランでもかなりなタカ派の2人なので一気に喧嘩を売って酷い事になる可能性が高い。
ちなみにハト派は髭親父とポンコツピンクだな、バトルジャンキーの方は気分次第なので何とも言えない。何にせよ、今回のこの騒動に関しては、うちのブランドを知れ渡らせることも出来る。
『今回に関しては偽物連中を出汁に使ってうちの名前を売ろうと思うんだけど、ニーナとバイパーは本業をやってくれればいいわ。特にバイパーの銃器開発ね、私としてもアタッチメントの開発を一緒にやっておきたいし、それをメインに据えるわ』
『いいのか、銃器周りは秘匿するってのも手だが?』
『俺様は言われなくても需要があるからな、結構同盟クランの連中から引っ張りだこだから気にする必要ねーよ』
『まあなんて言うか……此処まで色々ガンナーとしてやって来て、ちょっとガンナーらしい事をしようかなって、後発組のガンナー相手に商売するってのも楽しいだろうしね』
『俺は誰が何と言おうが、ボスがガンナーとしてトップだって思ってるから良いんだよ』
『何謙遜してんだよ、気持ちわりいな』
こいつらは、何でもかんでもずばずば言ってくるな、本当に。
『とにかく、クランの品揃えだけは気使ってくれればいいわ』
『あんまり悪質だったら相手していいんだろ?こちとら本業まで邪魔してくるならマジで相手するぞ』
『まー、俺もそうだな……同じものだしてきたならそれ以上の物でぶん殴るだけだし』
頼むからお前らはブレーキってものをある程度装備しておいて欲しいんだが……まあ、それでも少しは考慮してくれるだろうから、そこに期待するしかないか。
後は残り3人にも同じような事を伝えて、うちのクランの方針を固めて、か。
それにしても“ザ”クランはいつから出来てたんだろうか。
うちのクランが設立したのが2回目のイベントの時で、その時はまだそんなにだったのを考えると、やっぱり公開処刑後だろう。ただ、あの動画を見たのなら、うちに喧嘩を売るってリスクしかないはずなんだが、どういう事なんだ。
物凄い好意的に考えていくのなら、うちのクランに肖って、同じような名前を付けていったんだけど、結果的にクランマスターの制御が利かないくらいに話が膨れ上がった、もしくは一部のクラン員の暴走ってのも考えられるし、いつの間にか本家みたいな流れになったとか?
まあ、どっちにしろうちに喧嘩売ったのは向こうだし、何だったら制御できていない向こうのクランマスターは無能って事だよな。
人を集める才能はあるのにそれを扱う才能はないって、宝の持ち腐れだわ。
やっぱ傀儡にして、裏でそいつを操作、表向きは向こうが本家にしておき、こっちが完全に主導権を握るのがいいか。
「こうなってくると、やっぱり情報戦になるか、あー、やだやだ……頭使うのはシミュゲーだけでいいって」
MMOの人間関係って大体碌な事が起きないって経験してるからこその所もあるんだよな。
昔あったのはギルド外の人と仲良くなってレベリング手伝いするよって言われてやり始めた時に、所属していたギルドマスターがちゃんとお金を払えとか、あーだこーだと手伝いする人に説教垂れたのを咎めたら物凄い揉めた上に、メンバーも巻き添えで結果ギルド解散まで行ったとか。
彼氏彼女で3股掛けてて、貢いだアイテムやらゲームマネーを返せとか、実はもっと派手にやってた上に、本命のキャラは別で作ってて足付かない様にしてる上に、対人の時に情報流していたスパイだったり……思い出すだけで頭が痛くなる案件ばっかりだな。
とりあえず暫くはいつもの様にゲームをしつつ、情報クランからの報告待ちをしつつ、だな。こういう時に功を焦るのは二流だし、状況を見て押し引き出来るのが大人よ。
と、色々と考えていたら、メッセージ音が一つ。
プレイヤーメールが届いていたのでそちらを開いて確認していく。
まず一回目の情報クランからの定時報告になるのだが、ざっと構成員の内容、持っている備蓄その他諸々、基本的な情報だな。
構成人数が50人程、平均レベルが30で上が50下が15辺り。
ガンナーとしての二次職はいないが、銃弾の備蓄と言うよりも火薬がかなりの量を持っている。
「二次はいないって事だから、ガンナーギルドは当ててないって事か」
サングラスを指でくいっと上げてからいつものベンチで報告書を読み進める。
「ふむ……こっちのカードはガンナーギルドか……と、なると」
報告書の返信に今後調べてもらう事を記載しつつ、メアリーの所に個人チャット。
『ガンナーギルドの情報ってどれくらい売れてる?』
『あんまり出てないけど、どうして?』
『その情報流すの一回止めて、うちのクランで売ってるって話に変えられない?』
『良いわよ、そっちの話に切り替えておくわ』
『ただ切り替える前に向こうが確実にガンナーギルドの話を持っているかどうか確認して』
散々探し回って探し当てたんだから、思う存分使わせてもらおう。あー、やる事多いわ。
兎に角これで序盤の情報収集は出来ただろうから、ここからじっくりと内情調査をして、攻め所を見つけてぶん殴っていくってのが基本方針になるな。
派手にがんがんやるよりもこうやって暗躍している方が性に合っている気がする。
『ねー、アカメちゃん、私闘禁止ってなーにー?』
『どういう伝わり方をしたんだ』
『偽物が現れたって聞いたが、酔狂な奴もいるな』
『配信するとまずい系?』
しばらく貰った情報を眺めて纏めて、どう相手をするかを考えていたらうちのハト派連中がログインしてきた。それにしてもどういう感じにねじれ伝わったのやら……多分あのトカゲの奴だろうな。
『うちのクランの偽物が出たみたいでね……』
とりあえずタカ派連中に話したことを殆ど同じように説明していく。
『ふむ、まあ儂はあんまり外に出ないし、出ても素材集めだからそんなに実害はなさそうだ』
『あたしもかなぁ……基本的にソロだし、大体はボス相手、前線組に混じってるからぁ』
『私が一番やばげ?配信の時はクランの事あんまし写したりしないほうがいいかなぁ』
『いや、手を出さなければ問題ないわ、ただ実害が出るようなら各々反撃って事で』
各々やる気の無さそうな返事をしてくる。
うん、まあ、大体いつも通りだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます