194話 画策
『何かサイオンが増殖してるんだが』
『売上金使ったな、てめえ!』
『今更それくらいで驚くものかね』
『だよねぇ』
『あれって結構な額するんじゃ』
『自腹切ったに決まってんだろ、このクランで金儲けなんてこれっぽっちも思っておらんわ』
そういうとすぐに全員が「知ってた」と言いながら返してくる。そりゃ確かって理由ではあるんだよ、私が何かしらやりたい事に対してつぎ込んでるから、それを手伝えって言うのはちょっと話が違う。
全員が同じ目的を達成するために使う資金を私の独断と偏見で使うってのは筋が通らないしな。
『各階で使えるようにしたんだからありがたく思いなさい』
まったく、これだから私の自宅でたむろする連中は……まあ、それでもクランハウス経由で使うようになっただけマシになったんだけど。
『あと次のイベントに関してなんだけど、見た限り完全な個人戦だから、好きにやっていいわ』
『パーティーもクランもない、純粋な個人戦レースみたいだな』
『何か使うのは苦手かなぁ……配信映えはするんじゃないのぉ?』
『私もそこまでレースゲームは得意じゃないから』
本当、いつの間に仲良くなったんだか。
どっちにしろ、今回ばかりは全員が敵になりそうだな、性格含めて考えないといかんのが問題だが、うちのクランって個人単位でみるとかなり強い部類のが揃ってるから骨折れるわ。
『儂も忙しすぎるのは得意じゃないからスルーかもしれんな』
『俺様も苦手だから参加賞だけ貰う感じになるわ』
『そうなるとトカゲが本気参加か』
『んー……俺も闘技場でガトリングが対策されてきたからそっちの対策と開発しないといけないからな』
『あれだけ参加を匂わせておいて誰もまともにやらない辺りがうちのクラン員らしいわ』
まったくと言いつつ、毎度のガンナーギルドでクエストを受け始める。
「協調性の無い奴らねぇ……そう思わない?」
「今日のクエストはこれで良い?」
こっちはこっちでぶっきらぼうだったの忘れてたわ。
とりあえずいつもの様に何個かギルド用のクエストを受けてからガンナーギルドを後にする。
今回受けたのは複数の銃器を使ってモンスターを倒せ、手足を狙って倒せ……切り替え系と局所へのダメージ補正増加って所か。そういえばあんまりスキル覚えないんだよなあ……一応クエストの履歴は見れるからヒントはそこから見れるから後は反復していって覚えていくか。って言うか、相変わらずこういう下積みばっかりやってる気がするな。
後は軽い不満があるんだがエルスタン以外の場所にも支部みたいなの作ってくれた方がゼイテ周りでのクエストも結構やりやすいのだが、ガンナーギルドって今のところエルスタン以外でギルド見つからないんだよな……素直にギルドの場所をそのまま聞いたら教えてくれそうだけど。
そんな事を思っていれば北エリア2-1に到着。
まさかボーデンドラゴン相手に武器切り替えて倒せってのはなあ……このゲームってレベル差があればあるほど楽になると言うのは確かだが、ステータスの上昇量が少ないから、装備によっちゃ格下でも普通にやられる。
私だってこのスーツが無かったらとっくに一撃でやられるくらいの貧弱野郎だしな。
「よーし、前は追い掛け回されたけど、今回は違うぞ?」
相変わらずのっそのっそと動くボーデンドラゴンを見つけてガンベルトにDボア、G4を提げてからウサ銃を構えて、相手のアクティブ探知外から片膝立ちで狙いを付けてから一発。
勿論のそのそ歩きの相手に外すわけもなくしっかりと命中、すぐにこっちを視認してばたばた足を動かしてこっちに来るのを見てにやりと笑う。
「やっぱりコボルトやオークみたいにちょっと頭使ってくるような相手じゃないだけ楽だな」
ウサ銃を仕舞いこんで、すぐにG4を引き抜く。
「さて、と……そう言う事でお茶を濁した訳だが、本当は?」
十兵衛が自宅の庭先で、ニーナが作った机と椅子でいつの間に入っていた共有ボックス内のティーセットでお茶を楽しみながら他のメンバーと話し合い。
「あたしはもち参加、アカメちゃんと戦うの結構楽しみだしぃ」
「配信映えもあるから私も参加かなあ」
すっかり戦闘狂と仲良しになった桃髪の奴が2人並んでうんうんと頷いているのを見ながら、蜥蜴顔がガトリング砲の手直しを鍛冶場でやっている。
「俺も参加だな、うちのボスに開発銃器を見せつけるチャンスでもあるし、驚く顔を見てみたい」
「俺様も参加するか、あのギザ歯の野郎に一泡吹かせるのも面白そうじゃねえか」
なるほど、結局全員が参加って事になるな。そして全員がうちのボスに一泡吹かせようって魂胆なのがまた面白い。
何だかんだで協力的と言うのもあるが、そもそも此処まで気に入られていなければ相手にしようと思わないか。
自分では弱い弱いと言っているが、立ち回りと勝負勘、ここ一番の判断力は抜群だと言うのに。
「儂も参加だな、アカメの奴と戦ってみたくはあるな」
「お、十兵衛ちゃん、中々のバトルジャンキー発言」
「やっぱり気にはなるだろう?味方としては頼もしいが、敵になったらどれほどの脅威で儂らにどう立ち回るかってのはな」
「動画で見てたけど、アカメさん相手は相当厳しいんじゃ……」
「あいつの事フルボッコにして、あのにやけ顔をしかめっ面にする作戦でも立てるか?」
「それはフェアじゃないじゃろう、ただ、まあ……この面子同士での戦いはなるべく控えておくか」
「じゃあボスを倒した奴に全財産くれてやるよ」
バイパーは中々の勝負師だな、それにここ最近はクランショップの委託品で結構稼いでるようじゃし、結構持っていそうだが……。
「お、その話乗った。俺様も全財産賭けてやるよ」
「あたしはあんまし手持ちないから乗れないかなぁ」
「右に同じく」
「儂は流石に入用が多いからな、全財産とは言えんが、70万くらいなら出せる」
「案外稼いでるじゃねーか、爺さん」
あまり言いふらしてはいないのだが結構酒の売上が良い。満腹度削除の恩恵で酒にバフ効果が付いたおかげというのもあるが、需要が結構あるので嬉しい限りではある。ついでにアルコールも蒸留してみたが、アカメのように上手い事大量生産は出来ないが、数を作れるようにもなってきた。言ってはいないが地味にアカメ以外のガンナー御用達だったりする。
「アカメの奴といるとこのゲームが楽しくてな」
「ま、そういう訳だから全員ライバルって事でいいんじゃねえかな」
手回しガトリングの動作を確認している辺り、大分本気で取りに行く気だな。それにしてもああいうギミックのある装備と言うのは歳の取った自分でも男心を擽られる……今度槍でも作って貰うか。
「ももちゃんはどーするー?あたしと組んだら勝てるかもよぉ?」
「えー……マイカさん、無茶ぶりばっかするしなぁ……」
それにしてもこのクランは仲の良い事だな。
「儂と組むか?」
「はっ、俺様は優秀だからな、アカメの野郎含めてこのクランメンバー相手にも負ける気はねえよ」
「それじゃあ俺たち3人はそれぞれボスのタマを狙うか」
「とにかく、イベント開始までは秘密じゃな」
にぃっと笑いながら人差し指で口を抑える……おっと、アカメの奴の笑い方が移ってしまったかな?
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