152話 辻テロ
我ながら最高のアイテムを作った訳だけど、本当ならこれもPvE用で作られたアイテムなんだろうね。
流石に炎上ダメージと爆破ダメージがえげつないし、投げ込んだ私もドン引きだわ。何だったら後ろに控えている十兵衛の奴もガチでドン引きしてるわ。
「もーえろやもえろーやー炎よもーえーろー」
「えげつない事しながら言う歌じゃねえよ」
って言うかね、ボマースキルの強さが判明したわけだけど、錬金ギルド爆破事件の時にも爆破した30gは結構なダメージ貰って自爆したけど、それが1.5倍の威力になってるわけよ。
ガンナーのメリットで爆破ダメージに+修正なんてものもありそうだけど、とにかく一撃のダメージがかなりえぐい。流石にあれの自爆は……私じゃないのだったら耐えられるとは思う。
多分だけど火薬量×2倍=ダメージになると思う。で、此処から1.5倍さらにダメージ補正が掛かるってのを考えると一発で75か90ダメージのどっちかだな。
どっちにしろ一撃貰ったら瀕死で、HP25ポーションを最低4個、HP100ポーション1個消費させられる上に、それが範囲攻撃って言うんだからえげつないよね。
そりゃ自分で爆弾抱えて自爆して、ダメージどれくらいでるかなーって完全に頭おかしい行為だし、やるわけがないわな。
「流石にダメージ検証でデスペナ貰うってのはないか」
「松永弾正的なぁ?」
「あー、それ……T2Wの爆死1号は私ってのは自信あるけどさあ」
がんがん炎上し、爆炎が立ち上っている所に追撃で油を投げ入れるとさらに燃えあがる。うむ、良い燃え具合だが、これさっさと片付けないと他の連中がやってくるから手早く済ませよう。
『全滅させなくていいわ、損害だして、回収できるようなら回収したらさっさと離脱』
『いいのか、ここで片付けなくても』
『どこぞのバトルジャンキーが先走ったからこうなったの!』
『えー、せっかくチェルみつけたのにぃー』
『まー、顔合わせくらいしておくか……?』
『あんまり深い所に行くと、援護できんぞ』
『わあってるって』
マイカを前に、後ろでDボアに持ち替え、反撃してくるのに対して牽制射撃をしつつ、キルを取っていく。
一度ぶつかってから軽く引いて、追撃してきたのを削りながら離脱を進める。
凄いなこいつら、爆破ダメージだったり炎上ダメージで結構疲弊してるのに咄嗟に反撃に移ってくるあたり、しっかり鍛えられてる。
それでも咄嗟の事なので動けるのは少ないし、生半可な相手ならマイカが止めて反撃をしているくらいにはまだ人数差はない。
「リロード入れるわ」
「はーい!」
すぐ後ろで装填スキルを使い、いつものようにガンベルトを使っての装填を済ませてまた構え直す。当たったらきついダメージと言うのを相手に擦りこんでるのもあるので、銃を向けるだけである程度の出鼻を挫けさせることも出来る。
やっぱりG4あたりのオートマチックの方が出鼻を挫きやすいと言うか、リロード頻度と装弾数から考えて援護しやすいな。
『そろそろ2回目入れるぞ』
『ういよ』
マイカと私である程度やり合っている奥で爆発と炎が上がる。
遠巻きに見ても、いい爆発と炎上してるわ。
それを軽く確認しつつ、目の前ではマイカの奴が向かってくる前衛職を捌き、私が隙間を縫い後衛の方へ銃撃して人数削りと牽制に済ませ続けているのだが、そろそろ切り上げよう。
しかしこの前衛後衛で分かれているのなら、2丁拳銃はそうだが、持ち替えが高速になるようなスキル欲しいな。今だと結構もたついて切り替えてるから、その辺の最適化がしたい。
戦闘中に何度も持ち替えてたらそのうち覚えたりするんかね。
まあ、今は持ち替えの手間や隙について、前のマイカでカバーできているので、その分のもたつきは手綱を引くと言う事で相殺だな。
「そろそろ引くわよ!」
「えー……もうちょっとー!」
「立て直してきてるから、離脱するんだって!」
前衛を押し込んで一息ついた所で首根っこ掴んで後ろに引き、撤退開始。
流石に人数がいるし、ポーションもまだ余裕があるだろうから立て直しは速いな。それに炎上が終わり始め、立て直しできてるのがちらほら見えるのも撤退理由になる。
『そっちも離脱していいわ』
『了解』
「ちょっとー!アカメさんでしょー!」
『先行ってて』
「聞いてるんですかー!」
それにしてもすぐ誰か分かった辺り、賢くなってるな。
まあ、賢くなった所で既に先手打たれて損害出している時点でもうだめだけどな。
……こんな無茶苦茶な事するのが私だけしか見当たらないってのもあるのか?
「知り合いの情けで全滅はさせないでおいてやるけど……私が倒した奴の銃弾は回収しておけよ」
「逃げられると思ってるんですか!こっちの方が人数も展開も速いんですよ!」
「ま、さっきまではな」
0.5ℓ火炎瓶をチンチクリンと私たちの間に3本投げ込み、また炎上させる。
人数が多いと、動きの制限とか逃げ場の関係が出るから大変ってのをちゃんと理解しないといけないだろうに。
それに引き換え私達の方はさっさと追手を撒いたらさくっと逃げられる。
AGIの差で追手をこっちに向かわせたとしても、戦闘能力『だけ』は最強なマイカがいるので、圧倒的な人数で囲まれたりしなければ問題ない。
「全滅させてないだけ、マシよマシ」
「追撃ー!」
おっと、火に油を注ぎ過ぎたか。
「マイカは私の後ろ、先導するわ」
「おらー、掛かってこいやー!」
相変わらず首根っこ掴んで引っ張りちんちくりんのクランから引き剥がす。掛かってこいって言いながら喚くだけじゃ煽りじゃないじゃない。
よく屈伸とか左右に動くとか、色んな煽り方があるが、やるにしたらやっぱり私はこれだな。
「そういうのは、こうやってやるんよ」
火炎瓶の炎上にたじろぎつつも指示を飛ばしている、あのチンチクリンに向かって走りつつ半身を向けつつ、Dボアを一度ガンベルトに仕舞い、首根っこを掴んでいない方の手を向け。
ぴっと中指を立てる。
それを見たのかやられた状況を確認したのか知らんけど物凄い喚き散らし始めているのを背中で感じつつ追手を撒くための火炎瓶と油を追加投げつつ離脱する。
「アカメちゃん、流石にあれは引くわー」
変な所で冷静になるの何なんだろうな、こいつ。
後ろから飛んでくる怒声と攻撃、魔法を地味にくらいながらもその場を後にする。
「で、被害はどれくらい?」
「撃破15人と重傷8、軽傷10、無傷12ですねえ」
「素早く回復したら移動するよ!多分騒ぎにかこつけて漁夫しにくるから!」
「マスター、あの人ってまさかですけど」
「そのまさか、前回イベントの全体1位の立役者で、このイベントで一番会いたくない相手」
「結構な人数で攻撃されたんですかね、これ」
全員がポーションで回復しながら、移動を始める。人数が多いのと、固まっていて動いてたのが仇になったけど、前より爆弾の威力上がってたよ。
不意打ちで強力な攻撃でがっつり削って、引きつけて、さらに追撃入れて叩きのめすって、やり口が対人だとしてもえぐい。
ため込んでた物資もだいぶ使う羽目になるとは……それにやられた味方からポーションを回収しても、人数が減ってインベントリの枠数は減っているから、結果的に削り得。
「それにマイカさんもいるし……何で戦闘力の高い2人が組んじゃうかなぁ……」
「マスター、全員回復してポーション回収完了したよ」
「うん、後は水魔法覚えているのをリストアップしておいて、炎上ダメージがきついから対策しないと」
「でも少数相手なら人数でごり押したらいいんじゃ?今回のはどちらかと言うと不意打ちが原因ですし」
「あれ以上の爆薬と火炎瓶、ついでに言えば1発で50ダメージは確定の銃撃を掻い潜りながら、戦闘民族並みのバトルジャンキーの相手もするんだよ、考えただけでゾッとする」
アカメさんはガンナーの不遇と難易度をある程度突破してるから、とにかく隠し球と一発が怖すぎるうえに、色んなゲームをしているからこその経験と立ち回りが上手い。
そして1人戦闘民族のマイカさん、こっちはこっちでとにかく、勘がいいのと、自分が何処まで動けるかちゃんと把握してる感じがあるうえに、対集団、対個人どっちとも立ち回り方が上手い。
あと1人はうちで紹介したファーマーの人だけど、マイカさんの援護をしていたと言うから、実力が未知数。
たった3人なのに、軽く手を出したら痛い目に合うのが目に見えてわかるとは……っていうか、何人編成かもわからないし、奥の手で100g爆弾とか作ってそうだし、また相手しなきゃならないの凄い頭痛くなる。
「マスター!他の中規模クランが接近中!」
「とにかく撤退しよう、移動しながらポーション使って、殿は無傷軽傷の人がカバーして!前で先導するから!」
「了解!」
それにしても焦臭い。
炎上の状態異常なんて初めて食らったけど、確定30ダメとかふざけてるよ、本当に。
「素直に個人戦やっててくれたらよかったのに……!」
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