135話 お酒は20歳になってから
吹き竿なんて鉄パイプの容量で細長くしていけば余裕だろ。
とか言ってた少し前の私をいつものことながらぶん殴ってやりたい。
いつだかもいったが小型化とか軽量化、簡略化って言うのは思っている以上に大変だって歴史がある。なんでもそうよ……いや、この話前にもしたわ、くそでか弁当箱掲げて時代の携帯もあったわけだしさ。今じゃ手のひらサイズだし。まあ小さすぎて画面が見えないから大型化するって言う逆行も始まっているわけだけど。
「そこそこレベル上がって来たのにいまいち思った通りに作れないのよねえ……そもそも吹きガラスは作れるとしても、ワイン瓶とかビール瓶みたいな形状は難しいか」
多分特に加工しなくても、膨らませるだけで丸底フラスコの様な物が作れるだろうよ。ポーションって言われたら大体想像がつく丸いアレ的な。
「酒入れる容器って感じはないわな」
何個目かの失歪な鉄ををその場に転がして一息付ける。
まあまあ太い鉄パイプで膨らませてもいけるんじゃないかって思ってきたけど、微妙に短い気がするんだよね。あー、こんな事ならどうやって作ってるか、聞いておけばよかった。
この試行錯誤しているのは私らしいと言えば私らしいんだけど、やっぱりこういうのはさくさくっと作りたいし、もっと簡単にゲームが運んでくれればいいのになあ。
「それはそれでやりごたえが無いとか言われそうなんだけどさあ」
こういうのがゲーマーのめんどくさい所だよなあ、めんどい所は楽したいけど、ある程度のやりごたえが無ければ面白くないから、そこはほしい。
「あー、いいや、とりあえず水銀と硫黄取り出すか」
こういう時は気分転換で新しい事をするか他の事をするのがいい。
とりあえず取ってきた辰砂から水銀を抽出。ついでに冷却処理も合わせて硫黄も取れるかどうか確認してみる。……まあ、結局のところ失敗してるから水銀だけしか取れてないんだけどさ。
「硝石交換の話もぱったりだし、返事した奴は返信もこないのよね……やっぱマッチポンプするしかないな」
だからそのマッチポンプをする為の時間を潰しているのが今の現状な訳だが、楽しい補充タイムって訳だな。そういう訳だから薬莢80個と金属カップ50個、雷酸水銀を40gをサクッと作成。ついでに錬金と鍛冶のSLvも上がった。
問題としてはやっぱり硝石関係だって改めて理解する。
何せ黒色火薬を作るのにも、雷管を作るのにも硝石がいるから水銀よりも需要多かったわ。って言うかマジで酸ってついたものって化学の基本過ぎて需要がありすぎる。
雷酸水銀も「1:1:1」での水銀、硝石(硝酸)、アルコール0.1ℓ混合で作れるが、それでも10gだから微妙に効率が悪い。頼むからガンナー以外はこれ以上に製作難易度は高くあってほしい。じゃないと利点がねえよ利点が。
「30発の銃弾作るのに硝石4個か……調合スキル上げてみたら個数増えたりして?」
結局触れてない調合だが、銃弾周りはガンスミスとガンナーの補正が掛かってるだろうし。いまいち使い所が分からないままの放置してるんだよなあ……大分前にスキル確認した時はそういう感じでもなかったし、なんとも言えない。
「ぶっちゃけ結構長い間ほったらかしにしてたのよね、これ」
スキルメニューを開いて改めて調合スキルを確認。
スキル名:調合 レベル:1
詳細:【パッシブ】
:調合の際に+補正
「上げるのが博打ねぇ……二度撃ちとかもそうだけど、Wikiに先の情報が載ってないから自力開拓するのが大変ってのがなあ」
誰か手頃なガンナーでも手籠めにして上げさせるってのもありか。それでも大分憎まれるだろうし、SP8も消費させなきゃいけない。しかもそれが3レベル分だから、なんとも言えんな。
「採掘したり伐採したりで無限に手に入るリソースと違って有限だから尚更か……多分効果が乗ってると……思いたいし、乗っていてくれと思う」
まあしばらくはこのままでいいわ、今よりマイナスになるわけでもないし。
「ってか考えてみたら細いパイプ2本繋げてみたら吹き竿になるんじゃない?一気に長い物を作ろうとするから失敗するわけでさ」
発想の転換と言う訳ではないが、薬莢とカップを作ったから思いついた方法だな、やはり私は天才だった。
すぐさま鍛冶メニューを開いて、飽きる程作りまくった鉄パイプを細くしたものを2本。それから作った鉄パイプを連結させて完成する。
「うむ、想像通り、完璧……ではないけど、ほぼ完璧」
名称:鉄パイプ(2連結 細)
詳細:2本連結した鉄パイプ 中心部分が多少ズレがある
若干ずれてる感じはあるが、それでも穴は通っているし、息を吹いたらちゃんと向こう側に風が流れている。中心部分と言うか接続部分に「ズレ」があるのが気になるが、まあ形にはなっているし大丈夫だろう。
鉄パイプの需要高すぎだろ、GLv上げてレシピ取っておいて良かったわ、これ。
そしてここからインベントリを開いてガラス塊をバケツに入れて炉に突っ込む。じっくりことこと炉で焼いて溶けるのをしばらく待つ。
融解温度がそれぞれ、鉄1,500度でガラス1,400度くらいだったかな?柔くなるだけならもうちょっとガラスは低い温度だったと思うけど。
とりあえず連結鉄パイプの先に溶けたガラスを付け、くるくると竿を回して付けたガラスを丸くしてから、息を吹いて膨らませる……のだが、微妙に歪な形になる。
「やっぱズレが原因っぽい」
いや、それでも完成してるのよ、挟みとか切る為の動作とかいらないし、ガラスを付けて回し吹く動作がいるだけで、その他の部分は簡略化されてるからさ。形式上の必要動作という感じ。
それにしても相変わらず一発で作れないわ。
名称:ガラス瓶(質1)
詳細:容量0.5ℓのガラス瓶 蓋は閉めれるが形は悪い
まあ、こんなもんさ。とにかく出来た事を喜ぼう、クオリティを上げるのは後で良いわけだし。で、そういう訳で1kg分のガラスを全部処理して10瓶分を作る。こうなってくると大量に砂を手に入れるのが急務になるわ。何でもかんでも必要な物多すぎじゃない?
とは言え、これで酒造に関してはオールクリアよ、後はあの髭親父の判断待ち。そういえば容器って消費したら消滅するっぽいんだよな。アルコールとかポーションとかも使ったら容器消える。バケツは例外みたいだけど。
「とは言え此処まで来るのに長い事かかったわ……売りさばく物がアルコールって本当にやってる事が禁酒法時代のマフィアだな」
カスタムサウンドトラックでジャズとかその辺りのミュージックでも取り寄せて掛けてやるか。ジュークボックスとかそういうのもインテリアも欲しいな。相変わらずあるかどうかは分からんが。
そして、これだけ色々やった所でまだフレンドリストに用事のある人物はログインしてこない。加速時間だから色々長い事やっている割にはリアル時間が進行してないってのがネックだよな。
「とりあえず、暗闇洞窟の方へ行って状況確認と土掘り返して硝石丘の敷地拡大して……L畑数面使うくらいには広げて置きたいな。どれくらいの頻度で回収できるかまだ分かんないし」
まだいろいろやる事が多いな。
「何やってるんだ?」
「おっと、ログインしてきた……酒は?」
「出来てる」
「いいわね」
髭親父と一緒に地下酒造所に。
で、最初に仕込みを開始した樽の前に来て上蓋を開けて中を覗く。
「で、いいわけ?」
「さあ?」
「自信もってできたって言いなさいよ」
作ったガラス瓶で掬って満たす。しっかり透明な色の液体がガラス瓶の中にちゃぽちゃぽと揺れているが、これが成功しているのかどうかってのは飲んでみないと分からんな。
名称:ジャガイモ酒(質3)
詳細:酒精20度、ほんのりとジャガイモの味がする
「あんたが先」
「いやいや、そっちこそ」
「しょうがないわね……」
ガラス瓶の中に入れたものに口を付けて飲み始める。
一応焼酎の作り方を参考にしたからその感じはある、口当たりはアルコール感が強い。ぶっちゃけ美味しいかって言われると微妙。
「不味いか」
「微妙っちゃ微妙……これから蒸留したり火入れしたりするんでしょ?」
「本当はな、とは言えそれは現実、こっちはゲームだろ?」
「そらそーよ」
焼酎の入った飲みかけのガラス瓶を渡し、味見させる。
向こうも確かに微妙な顔をしている、そりゃそうよ、だって素人なんだもん。美味しい作り方何て知らんからな。
「味の改善と種類を増やすのは好きにやっていいぞ」
「なんだ、自分で揃えろと言わんのか」
「私のクランに参加するってなら自宅の2F以外なら使っていいぞ」
「……乗せるのが上手いな」
「いちいち街に行って施設も使わなくていいし、自分で何十万も払ったり、今更鍛冶とか木工進めて樽を作り直すってのはどーよ」
「分かっとる、ほれ申請よこせ」
クランの参加申請を送って受理。組織に酒造担当が配属されたわ。うちの主力資金源になるわけだからしっかり作って量産してもらわないとな。
「沢山作るならもっと資金投入で一大生産拠点みたくしてもいいし?」
「本当に、どこからそんな資金が出てくるんだ」
「何言ってんのよ、常に金欠よ」
「どういう金銭感覚してんだ」
狂っているってのは違いないわ。大量に資金があるか、ないかの両極端の状態しか経験してないわけだし。
「暇あったら砂集めておいてよ、ガラス容器作るのにいるから」
「なんでも間でも儂に任せるんじゃーない」
「これでも私忙しい方なんだけどなあ」
ついでに出来上がったガラス瓶を5本渡しておく。後は蒸留してアルコール濃度を上げていけば晴れてアルコール量産と、モロトフカクテルよ。
「さーてと、やる事済ませて、実験再開かな」
品質を上げるという点はずっと先延ばしだけどな。
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