87話 メジャーよりローカル

 リアル18時前、何だかんだで7時間程ぶっ続けでやっていたわけだが、まあこんなものか。

 HMDを外し、一息ついてからぐいーっと伸び、ストレッチ。あまりにも動かないというのも体に悪いので柔軟はしっかりしておく。


「さーて……とりあえずご飯と風呂、着替えを済ませるとしてっと」


 まあ相変わらずの冷食とインスタントばっかりなわけだが……たまにはピザでも出前取って食べるのもいいかもしれんな。ハットとかラとかついているのではなく14が最強。

 お気に入りはチョリソー、海鮮は好きじゃない、キノコ系は何が美味くて食べてるのか理解ができない。


「本当においしい物を食べてないから嫌いになっただけとかよく言われるけど、嫌いな物は嫌いだってな」


 ネット注文からのピザ宅配。電話って文化もそのうち無くなりそう。そんなわけでさくっと注文して、しばらくしたら家の呼び鈴が鳴るので取りに行く。代金もカードで払えるって素敵よね。キャッシュレス万歳。


「で、これからどうするかって話なのよね」


 もっちゃもっちゃとピザを頬張りつつ、タブレットでメモ帳とやる事リストを開いたうえで考える。需要の多いであろう銀を購入するか融通してもらったうえで雷酸銀ルートを取るか、このままレベリングと素材を集めた上でのダンジョンアタックがいいのかと言う話になる。


「まあ、確実に後者なんだろうけどなあ……このまま低レベルで先に進むってのもきついし、なおかつ今のHPだと数発くらうとすぐに死ぬ」


 幾らキャットスーツの性能が良くても回避しきれない攻撃だったり、対複数になると被弾も増える。コンバットブーツ的な物も作って貰えるか聞いてみるか。って言うか防具類に関して完全にゴリマッチョ頼りになりすぎているのも問題か?

 アクセサリー類で使う細工は刻印も考えてたから自前で上げる予定があるから頼らないが、裁縫はどうしようもない気がする、これのレベリングもとなるとやる事が多すぎる。

 

「とりあえず、装備の新調、レベリング、スキルレベルも上げて、銀、水銀の発見かなあ……あとは鉛と鉄も量産していかないといけないな」


 それでもゲームを始めたときに比べればぜんぜんマシ、だってゴール地点は既に見えているわけだし?とにかく木工と鍛冶をあげて出来るかどうかわからない事をやる手探りではない。



1.レベリング及び装備新調

ゴリマッチョに体防具以外の装備を確認

→狙い所は足と腕の軽いもの(片手用シールドも視野)

ナイフに代わる銃剣部分

→鍛冶クランで聞いてみる(合わせてパイプの刻印依頼)


2.雷管の開発調合

→水銀、銀取得

 →火薬用と合わせてロックラック狩りでの硝石量産

  →硝酸溶液雷酸水銀or雷酸銀の生成

(銃身劣化、不具合を確認するためにパイプ銃をもう一つ作成したうえで試し撃ち)

→硫黄と硝石を使っての硫酸はサブ目標

 →両方数が少ないので余裕ができる量の確保


3.銃弾作成

1~2完遂後に作成

→パイプ銃での試し撃ちを考えて最低でも30発

 →薬莢部分と弾の部分の二つ、鉛と鉄の収集

(鉛の位置はエルスタンの西?銅弾を視野に入れて硫黄と合わせて回収もあり)

→現地作成でそのまま実地試験も視野に



「うむ、やる事が多い……ダンジョン内で手に入れたらその場で作るってのを考えれば弾と薬莢は先に作っておいた上で、さらに硝石はさらに回収しておかないとダメかな」


 お得意の現地調達現地生産でそのまま先に進んで行くって話になる。

 流れ的には今の1~3でいけるわけだが……2、3の内容は若干進行具合が変動か。


「……って言うか考えてみたらデスペナ食らってるから金策も入れないとだめか……鍛冶と裁縫の依頼するのもタダじゃないし、売れる情報も今は無いから地道に金策か」


 マイナスにならないだけマシと思うしかない。じゃないとマイナス6万Z(ゼニー)とか言う状況になるわけだし?それにゴリマッチョに渡した7万を今更返してくれと言うのもそれはそれで女が廃る。

 

「まー、やれる事はこんな所かなあ……」


 タブレットをぺたんと置いてからふいーっと一息ついて伸び。まだゲーム開始一週間も経ってないのに運営が封じた銃弾を作るのってペース的にどうなんだろうか?

 そもそもガンナーに対してやけにきついと言うか厳しすぎるというのも何となくではあるが、ちょっとやりすぎじゃね?と、最近までは思っていた。まあ私がきつい道を選んだってだけではあるんだけどさ。

 βの時の情報を見ればウサ銃もかなり固定ダメージが高いっていうか1.5倍強かった。それが5発単発で撃てるって言うんだからそりゃ強いわ。音の問題はあるとしても数人のガンナーで囲んで撃ちまくるっていう超絶ごり押し戦法が横行したらしい。

 運営的にはだったらFPSでもやってろよって事なんだろう。まあ私としては癖がありまくる方が好きだし、なんなら他のプレイヤーが弱武器とか言う物を普通に扱えるくらいの力量はあると自負している。何でもかんでも立ち回りと要領さ。


「銃弾作ったらどうするかな……街自体の探索をしっかりしたうえでガンナーギルドって探してみるかな?」


 他職のギルドはエルスタンに揃っているのでガンナーもあるはずなんだけどなあ……そういえば戦闘職のギルドってどういう物か調べてないな。専用装備とかスキルとか貰えるようになるのかね。

 ……だったらガンナーギルドを秘匿するってのも納得はするんだけどなあ。銃剣と銃格闘で立ち回ってより強力な銃を手に入れて序盤からブースト何て出来るわけだし。


「結局苦労してるのは私って言うかユーザーだしねー」


 そんな事を見つつ公式のプレイヤー分布を眺める。ガンナー増えてないかなーとかちょっとだけ期待したら、ちょっと増えてやんの。


「うっわ、増えてる……よくやるなあ、現実は厳しいってのに」


 まだ両手で数えれる程度だが、若干増えている。出遅れ組が選んで増えたって所だろう。修羅の道に進んじゃってまあ……でも出遅れ組ならβと正式版の情報見れるからきついの分かると思うんだが。まさか作り直しでガンナー選んでる奴はいないだろうよ。


「そういえば公式サイトでイベント動画見れるんだったかな、あんまり興味ないけど」


 他のゲームでもそうだったけど、出番の薄いものに期待するのって肩透かし食らうから好きじゃない。せっかくやるのに出番がないって面白くないしつまらないので期待しないって事だ。

 やっぱりなんでもかんでも実力重視の方が私としては好きだよ。ただしガチャ、てめーは許さねえ。


「ま、こんなとこだなあ……夜のログインいってみよっか」


 残っていたピザを食べ、いつも通り風呂と着替えを済ませる間にHMDにメモ帳とやる事リストを読み込ませる。

 やること全部を日が変わる前の達成は厳しいだろうけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る