50話 文明開化の銃声音
『銃カテゴリーの生産及び条件を満たした為、特殊生産スキル:ガンスミスをアンロックしました』
やっぱりと言うか、自作できるという部分であるだろうとは思っていたスキルが存在していた。ただ、銃カテゴリーの生産と「条件」と言うのが微妙に引っかかる。しかも特殊生産スキルとのことでスキル1の方にある、SPを割り振らないと効果が上がらない枠の方に追加された。条件が判明していないが、現時点ではT2Wにおける唯一の存在だろう。しかしここまで自力で到達した私にはある程度の条件も軽く察してはいるのだが。それは追々まとめておこう。
「まあ、即取得安定よね」
こういう時は思い切りが大事。っていうかこれ自作するのなら150%取得推奨スキルじゃないかな。β時代は銃の自作とかは無かったはずだし、銃弾自体格安投げ売り状態だったし。
スキル名:ガンスミス レベル:1
詳細:【特殊生産スキル】
【パッシブ】
1:カテゴリー「銃」及び銃弾の製造の際に一定の品質補正が掛かる
2:銃破損から銃故障へと置き換わる
【アクティブ】
カテゴリー「銃」の修理が可能になる レベル上昇により修理時の成功率上昇
備考:修理の際には一定の材料が必要 レベル上昇により修理時の使用材料の減少
「なるほどねぇ……基本的には製造に関係する事に補正が掛かると……地味に破損じゃなくて故障ってのも気になる、銃剣は破損で消滅だし、故障は使用不可とか?」
ウサ銃は銃剣部分だけが破損するが、破損した時には使用したアイテムが全部消失する、それは何度も経験しているし、それで危なかった事もロックラック先生の時に思い知った。今までの経験も踏まえて考えればパッシブの破損から故障もどういう効果かは予想出来る。っていうかアクティブに修理があるんだから、故障が使用不可状態と言うのも察する事が出来る。
「でもまあ、銃剣は破損するって文章は変わらないから、あくまでも自作銃対象か……これカスタマイズとの組み合わせで自作銃は拡張していくのが基本なんじゃないかな」
これを踏まえて考えていくと、ガンスミスからカスタマイズを取得していくのが正規ルート……だと思う。……いや、そうすると銃剣や銃格闘が覚えられないので戦闘がきつすぎる。どっちが正解と言うのがイマイチ確定できない。
「ま、そういうのは後でいいとして、作ったパイプ銃の実射してみてどんなものか確認しないと……暗闇洞窟はガウェインと行った時に派手にやらかしたし、今はちょっと行けないか」
あんだけ爆音鳴らして蝙蝠ばたばた倒したのを見られていないわけがないし、行ったら行ったで面倒そうだし。
「いや、敢えて北エリア1でやるか、モンスターは全部ノンアクティブだし、今更北エリア1でレベリングしてる奴もいないし、下手に奥にいくよりはいいか」
北エリア1、リアル二日前には最弱のモンスターにすら殴り殺されたわけだが、そういえば何か新しい事を試すときにはいつも此処に来てた気がする。流石に最初の銃撃戦は西エリア1だけだったが、銃殴りから始まり、銃剣、そして自作銃の試し撃ち。多分これからもこのラットにはお世話になるだろうなあ、実験的な意味で。
「当たれば一発だけど、命中補正えらいマイナス食らってるのよね」
パイプ銃に装填しながら手頃にいるラットを探す。そういえば装填スキルって地味にLv2にしておいたけど、ようやく久々に使える。最初の頃はとりあえず上げておいたスキルなので、今一度確認しておく。
スキル名:装填
詳細【パッシブ】
1:カテゴリー「銃」の装填動作に補正
2:LvUPにより補正値が上昇、装填速度が速くなる
まあそのままだよね。最初のレベルアップの時に上げて以来使う事も無かったし、こんな効果だったと思い出す。ついでに初期から覚えている二度撃ちに関してだが、先込め銃じゃ物理的に不可能なので使えない。条件としては装弾数が2発以上ある銃に限るのだろう。
とりあえずパッシブなので気にせずパイプ銃に火薬と玉を詰めわけだが……早合とかもあったし、今度そういうのも作っておこう。
銃口を上にし、黒色火薬3g、玉の順番に入れてから押し込むのだが、それをするための道具「
そうして撃つ事が可能になったパイプ銃だが、引き金は存在していないので魔力を込め、内部を直接発火させて、爆発力で玉を飛ばす。なんとも銃と言い切れないがシステム的に銃なので問題なし。って言うか銃身を持てるようにしただけなので、銃っていうか小型の大砲だな。
とにかく装填が完了したパイプ銃を持ちつつ、良い感じに警戒してないラットを見つけてから片膝立ちになってしっかりと両手でパイプ銃を握って狙いを付ける。
照準なんてご立派な物は付いていないので「大体この辺に飛ぶだろう」という目測になる。これも銃を作る際に照準を作る事をしなければ命中に大幅なマイナスが入るんだろう。この辺も要検証。
ぶれない様に腋を締め、両手でしっかりと木で覆った部分を握って胸の前で構える。照準がないので銃身と自分の視線が一直線になるようにしてから魔力を込め始める。
刻印の発動条件も何度か試しておいたが、刻印されている装備に魔力を込めてMPを消費することで設定した部分から刻印した物が発生する。
この場合は銃身根元、火薬の底ではなく側面から火を付けるわけだし、現実の銃と違い火薬の爆発力が抜ける部分は正面にしかないので威力はでるはず。なんたって固定ダメージ20だし。
「よし……ふー……」
深く息を吐き出して狙いを付けると共に息を止め。ラットが逃げ出す前に魔力を流して着火させる。
瞬間、炸裂音と共に煙と閃光が銃口から巻き上がる。どうやらしっかりと発射は出来たらしいが。
「んぅうぅぅう……!?」
爆死した時とは違うが今までにない強烈な振動が手に伝わってくる。ある程度こう言った衝撃や痛みがくるのはフルダイブ系の醍醐味ではあるが、流石に支障が出るほどの強さではないとマニュアルにはあった。が、今回のに関してはかなりの振動だった。色んなゲームでそういう振動ギミックは多かったが今までで最強かもしれない程の振動が手に伝わってくる。
「いっだぁ!!」
さらに追撃として、手の振動で握りが緩くなったのとパイプ銃を胸の前に構えていたせいもあり、爆発の反動で左胸に銃床の底が強打し8ポイントのダメージ。本当は痛くはないがダメージを受けたりすると反射的に「いてっ」っと言ってしまうあんな感じだ。
とは言え、発射した玉はしっかりとラットを捉え……てはおらず、右に反れて奥にあった木に玉がめり込んでいる。一応成功はしているのだが命中-30ってかなり大きい。なんなら距離取ってウサ銃にアタッチメントとして装備させて銃剣と合わせたコンビネーションとかの方が使えるんじゃないのか、これ。
ちなみに肝心のラットに関しては音にびびって速攻で逃げだしている。
「まさかこんな所で自爆ダメージ貰うとは……改良の余地しかないよ、まったく……」
これ当たり所悪かったらダメージもっとあるんじゃ?って言うかどっちかっていうとこれ爆弾とあまり変わらない気がする。どっちにしろもっと安定して撃てるようにしないといけない、急務で作るべきなのは体に当てて安定化させるためのストック部分だろうか。
「まあ、実験は成功したし……これから精度を上げていくのが急務かなあ……ってかこうなったら実装予定のマイハウスかクランハウスで実験とか銃工房作るのもありだな
痺れた手を振って感覚を戻しながらメモ帳に記載。やっぱりまだやる事はたくさんある。
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