第273話『虎ノ門を下見』

魔法少女マヂカ


273『虎ノ門を下見』語り手:ノンコ  





 てっきり門があるもんやと思てた!


「プ、なに洒落てんの(˘#艸#˘)」


 霧子に笑われてしまう。


「せやかて、虎ノ門やねんから門があると思うやんか(#'O'#)ふつう!」


「江戸城って無駄に大きかったから、明治の初めの頃に壊しちゃったのよ。昔のまんまだったら、大名屋敷しかなかったからね、そこを官庁街にしたから、門とか堀とか残したままじゃ交通に不便でしょ」


 もうじき起こるはずの虎の門事件を未然に防ぐために、みんなで虎ノ門付近に来てる。


 みんな言うても。マヂカとブリンダは富士山の頂上でファントムをやっつけた時、時空の狭間に呑み込まれて(たぶん、令和の時代に戻ってる)しもたさかいに、あたしと霧子。


 詰子(つんこ)とJS西郷は桜田門の方を見に行ってる。「摂政の宮殿下を乗せた車は赤坂御所から桜田門の方を通ってくるはずだから」という見通しやからや。


 関東大震災で、あたしらは戦艦長門を史実よりも半日以上も早く横須賀に着かせてしもた。長門の乗組員は、必死に救助活動に参加して、二百人以上の人を救助した。


 このこと自体は、めちゃくちゃ嬉しかったよ。


 めっちゃ苦労したけど、大勢の人が死なんですんだんやさかい。


 ブリンダなんかは「アラモ砦に駆けつけた第七騎兵隊になったみたい!」や言うて感激してた。歴史苦手なあたしは、よう分からへんかったけど、東日本大震災の救助に『オペレーション トモダチ』に参加したアメリカ軍の感じや言われて「オオ!」と叫んだ。


 せやけど、その救助した人の中に、摂政の宮殿下の命を狙う犯人とその仲間が混じってた!


 史実では単独犯やったのが、集団になった! その陰には、ファントムとその一味が居った。


 あらかたは、富士の山頂でやっつけられたけど、まだまだ残ってる。


「虎ノ門付近とは限らない」


 霧子は推理した。


「犯人たちの気持ちになって下見してみよう!」ということになった。


 史実では、天皇陛下の名代として帝国議会の開会式に向かう途中で襲われてはる。


 けど、帝国議会の開会式は12月。


 それよりも早いというと、別件でお出かけの時や。


 殿下は、震災後の政府や国民を励ますために連日のようにお出かけになってる。なってるけど、警備上の理由で、その予定が公表されることはほとんであれへん。


「このルートをお通りになることが多いよ」


 霧子の推理。それに見習いとか準とかが付いても、あたしも魔法少女やんか!


 その魔法少女の勘が、やっぱり虎ノ門付近がいちばん危ないと言うてる。


「やっぱり交差点だと思う……」


 霧子が賢そうに腕を組む。


「お車が通る時、信号は全て青にするけど、交差点のカーブを曲がるときは、必ず徐行する」


 そらそやろ、なにごとも安全第一。


「あ、信号変わったよ」


 交差点を渡ろうとした霧子を呼び止める。


「え!?」


 うちもビックリしてる。ほんの五秒くらい前に青になったとこやから、行けるて思うやんか。


 それが、瞬き一回したぐらいの間で、また赤になったんやさかい。


「「あ!?」」


 霧子と声が揃うてしまう。


 半蔵門の方から、殿下の車を先導する近衛のバイクと車、とうぜん、その後ろには殿下を乗せた御料車が続いてる。


「急なお出かけになったんだ!」


 マヂカやブリンダに負けんくらいに、ビシビシっと周囲に警戒の目を飛ばしたよ。





※ 主な登場人物


渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔


※ この章の登場人物


高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

新畑         インバネスの男

箕作健人       請願巡査

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