第245話『次は鉄扇童子戦』

魔法少女マヂカ・245


『次は鉄扇童子戦』語り手:霧子 






 三回戦は、なんとか二回戦を勝ち残った鉄扇童子との戦いだ。



 二戦目を辛うじて勝ち残った鉄扇童子だけど、三戦目のゴングが鳴ってリングに上がった姿は痛ましい。


 ゴールヌイ親父の木斧ほどの大きさは無いけど、それでも身の丈の半分はあろうかという三尺の鉄扇は、ヒョロヒョロの童子には荷が重いように見える。


 これは一撃で倒せる……そう思って木剣を正眼に構えるが、ちょっと思いとどまった。


 この高坂薫子(霧子の偽名だけど)は武門の子、初代左馬介高坂光孝さまの名に恥じない戦いをしなければならない。


 しかし、二回の戦いに全精力をつぎ込んで、ヘゲヘゲになった相手を一撃で倒すのは武門の誉れではない。


 よし。


 武士の情け、初撃は鉄扇童子に譲ってやろう。



 トリャアアアア!



 掛け声も勇ましく、鉄扇童子は三尺の鉄扇を大上段に構える。


 さすがは、くたびれても孫悟嬢の家来、ピシッと構えが決まる。


 トオオオオオオオッ!


 一気に鉄扇を振りかぶる!


 ウワアアアアアア……


 あげた悲鳴は、わたしではない。


 鉄扇を振り下ろした反動で、童子の体はビュンと跳ね上がり、そのまま、わたしの頭上を越えて、背後のベンチまで飛んで行ってしまった!


―― ただ今の勝負、鉄扇童子の自滅で、高坂薫子の勝利! ――


 ウワアアアアアア!


 賞賛の声がステレオになった……首を巡らせると、となりのリングでも勝負がついたところ。


 勝利者は、ロシアのヴォジャノーイだ。


 しょぼくれた沼地の妖の勝利に意外の声が上がっている。


「ヴォジャノーイの真の姿を見よ!」


 そう言って、空中でコマのように旋回すると、それまでヴォジャノーイが身にまとっていたボロが飛んで行ってしまう。


 その遠心力で、それまでボサっと生えていただけの髪と髭がみるみる伸びて行き、贅肉もふき飛び、旋回が終わったときには、まるで別の者になっていた!


 最後の旋回が終わって、ゆっくりもたげた、その顔は……



 ラスプーチン!?



 オオオオオオオオオオオ!


 会場をドヨメキが支配し、だれもが、最終戦で立ち向かうわたしに心配と同情の声をあげた。




※ 主な登場人物


渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔


※ この章の登場人物


高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

新畑         インバネスの男

箕作健人       請願巡査

孫悟嬢        中国一の魔法少女





 

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