第243話

魔法少女マヂカ・243


『いよいよ始まる!』語り手:栗子(ノンコ) 





 ドーーーーン パチパチパチパチ  ドーーーーン パチパチパチパチ


 大連中央公園の空に昼間用の花火が打ちあがって大連大武闘大会の幕が切って落とされた。


「霧……いや、薫子、一人で大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ……」


 落ち着いて応えてるようやけど、微妙に顔が強ばってる。


 夕べから、マヂカとブリンダが行方不明。


 うちらが寝てる間に出かけた……たぶん、孫悟嬢らが言うてた悪いやつら、ラストプーチン? いや、ラスプーチンやったけ?


 爾霊山で出てきよったロシア坊主の化け物、あいつが、試合までじっとしてることはありえへんいう気はしてたけどね。


 こういう心配事は、口にしたらホンマになってしまうからね。ずっと我慢してる。


「栗子が心配しても仕方がないでしょ!」


 ドン


「あう」


 背中をドヤされて、前につんのめる。


「大丈夫、とどのつまりは人同士の格闘術なんだから、全力で闘うのみよ!」


 ドン!


 あたしの背中をドヤした倍くらいの勢いで胸を叩いて、薫子は参加選手が並ぶ雛壇に上がっていった。



 出場選手は、選り抜きの16人。



 参加申し込みの時は、もっと居ったような気がしたんやけど16人に絞り込まれてる。


 書類審査やったのか、読み飛ばした参加資格とかがあったのか、よう分からへんけど、雛壇の上を見ると強そうでも普通の人間らに見えてる。


「半分はニギヤカシとコスプレだったんだよ」


 キャ!?


 とつぜん後ろ手声がしたんでビックリした!


 振り返ると、大連高等女学校の制服を着た孫悟嬢が折り目正しく立ってる。


「ほら、右から二番目と三番目、剣旋嬢とメルケル」


「え、あ……ふつうや」


 三日前に出会った時は、禍々しい魔法少女風やったけど、雛壇の二人はコスこそ奇抜やけど、放たれるオーラは違ってる。


 そこらへんの女学校の運動部の選手いう感じや。


「なんで?」


「フフ、こういう試合はフェアでなくっちゃな」


 不敵そうに笑ってるけど、至近距離に立ってるせいやろか、孫悟嬢の思念のカケラが垣間見えてしまう。



 ラスプーチン……アジア号……取り巻かれ……今朝まで……戦って……



 そこまで読むと遮断された。


 目が合うと、孫悟嬢がニヤリと笑う、笑うけど、瞳の中に――ほんの今まで戦ってた――そういう残り火のようなもんが揺らめいた。


 どうやら、出場者が減ってることや、剣旋嬢やらが普通になってることと関係があるらしい。


「さ、トーナメントの組み合わせが発表されるよ」


 孫悟嬢が顎をしゃくった先に、トーナメント表が下りて来た。



 高坂薫子は二回戦、一回戦の剣旋嬢と山親爺ゴールヌィとの勝者との立ち合いからになっていた。


 山親爺ゴールヌィ?


「ロシアの中級妖怪……でも、妖術使う力は残ってない、うちの孫悟嬢もだけどね……」



 ドワ~~~~~ン!



 大陸らしく、本部席のでっかい銅鑼が鳴らされて第一回戦が始まった!




※ 主な登場人物


渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔


※ この章の登場人物


高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

新畑         インバネスの男

箕作健人       請願巡査

孫悟嬢        中国一の魔法少女

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