第232話『いい手があります!』
魔法少女マヂカ・232
『いい手があります!』語り手:マヂカ
ブリンダに声を掛けて、わたしと二人で長門に化けることにした。
「歴史に残るコスプレだね!」
「艦娘の長門じゃなくって、実物大の長門だからね(^_^;)」
「オウ、任せといてよ。独立記念日にメイフラワー号に化けたことあるから!」
アメリカ娘らしく、力こぶを作って息巻くブリンダ。
長門は、全長で10倍、容積では1000倍以上違うんだけど、あえて言わない。
イギリスの巡洋艦にはノンコに乗ってもらう。
ノンコに化ける力はないけど、ブリンダの魔法でイギリスの若い水兵に化けさせる。
「おお、めっちゃかっこええやおまへんか( ◠‿◠ )!」
試しに化けさせると、身長が180センチのイケメンになって、ご機嫌のノンコ。
「言ってみて、英語で『長門発見!』て」
霧子が焚きつける。
「オッケー『ナガト ハッケン!』 どや?」
「ええと……日本語のままなんだけど」
「言葉までは無理なようね」
「仕方ない、声は翻訳機でやろう」
そう言うと、ブリンダはポケットからメガホン型の翻訳機を出した。
「もうちょっと小型のないの?」
「大丈夫、この時代はヘッドセットなんて無いから。ほら、ちゃんとブリティッシュネイビーのロゴが入ってるだろ」
「なるほど、でも、役目が済んだらすぐに回収してやらないと、正体バレてしまうね」
「まあ、頑張るしかないでしょ!」
魔法を万能と考えている霧子は意気軒高で、ブリンダの真似をしてポパイのような握りこぶしを作る。
そんな簡単なものじゃないんだけど、不安にさせてはいけない。
「あの……」
「なに、赤城さん?」
「長門お姉さんの姿を消すのは?」
「ああ、それそれ……」
「そうだな……」
そうなのだ、一瞬のうちに本物の長門と偽物をすり替える。
そのためには、イギリスの巡洋艦が偽物を視認したところでリアル長門を消さなければならない。
人や、家ぐらいのものなら問題は無い。
消す=テレポートさせるのは無理だ。なんせ、4万トンのデカブツだからね。
「マジックアイテムを使えば、短時間なら見えなくすることはできるけど……」
今度は、パチンコ玉ぐらいのボールを出すブリンダ。
「ああ、ハイドボールね」
しかし、ハイドボールで隠せるのは人一人分でしかない。
「戦艦一隻だと、人の頭ぐらいのハイドボールになるよ。それも、人が手で操作しなければね……」
「わたししか居ない……かな?」
握りこぶしの人差し指を立てて、自分を差す霧子。
「うん、そうだけど。わたしとブリンダは長門に化けて、ノンコはイギリスの巡洋艦の上だし、霧子を長門に載せている余裕が無いわよ」
「そうか……」
「いい手があります!」
赤城さんが顔を上げた。
「赤城さんが手伝ってくれるの?」
「船霊に、そんな力はありません。まして、赤城は未完成ですから、こうやってみなさんの前に出ているのが精一杯です」
「では、どうやって?」
「八月の末に大連で武術大会があったんです」
大連は旅順港に隣接する街で、日本人も多く住んでいて、時々、そういう行事が行われている。
しかし、その武術大会を、どうしようと言うんだろう。
「優勝者は演習中の長門に乗せてもらえます!」
「そうなの!?」
「はい、観艦式とかだと、もっと大勢の見学者を乗せるんですが、演習中は危険が伴うので、特別に一人だけ乗せます」
「よし、その武術大会に参加して、優勝すればいいんだ!」
霧子が、その気になった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
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