第153話『地下神殿の霊魔・3』


魔法少女マヂカ・153


『地下神殿の霊魔・3』語り手:マヂカ     






 二頭の銀龍は消滅していたが、赤白龍(せきはくりゅう)は狂ったように地下神殿の中をのたうち回っている。




 断末魔……いや、配下の銀龍が訳もなく消滅したのでたけり狂っているのだ。


 シロも、赤白龍だけなら凌げるのだろう。


―― でも、そんなにはもたないです(;^_^A ――


 将棋盤に例えると3・六のあたりから想念が届いたが、目を向けた時に気配は無い。渾身の高速移動で居場所をくらませているのだ。


―― わたしが引き受ける! ――


 想念を送ると赤白龍の後方から急迫して風切丸を一閃!


 シュキーーン!


 硬質な金属音が響いて赤白龍の角の先が吹き飛んだ。


「魔法少女マヂカが相手だ、かかってこい赤白龍!!」


 ウオーーーーン!


 赤白龍は一旦とぐろを巻いた。


 解く力で勢いをつけ突進するための準備行動だ、その昔、都の上空で青龍と戦った記憶が蘇る。




 セイ!




 赤白龍のとぐろが解ける寸前に跳躍して、放水口を抜けて上空に占位する。高度を取って、上昇してくる赤白龍を瞬間の反向戦に持ち込むのだ。彼我の合成速度で突っ込めば急所である赤白龍の眉間を貫ける。上手くいけば瞬間に勝負はつくだろう。


 ウワッ!


 予想を破って赤白龍は赤い口を広げて足元まで迫ってきていた。


 逃げるしかない!


 それでも春日部の市域から抜けることは無い。完全に抜けてしまえば、矛先はシロたちに戻ってしまう。


 どうやっても、引き付けて隙を突くしかない。


 マッハ3を超える速度で円形に飛ぶ!


 赤白龍も同じ速度で追随して来るが、質量の違いからだろう、しだいに外に膨らんで、わたしの軌道の外側にはみ出してしまう。


 狙っているな……。


 わたしの未来位置を測って、直線で飛び込んでくる。


 セイ! セイ! セイ!


 わたしも頻繁に進路を変えて読まれないようにする。




 これ体力勝負か……いささかゲンナリしながらも、敵の軌道をトレースする。




 どこかに、銀龍のそれのように本体があるはずだ……しかし、見当たらない。


 奴の飛行範囲の中に大型の送電鉄塔など見当たらないのだ。


 ズビーーーーーーン!


 とっさに風切丸で庇うが、かなり正確に進路を読まれてしまい、奴の爪が魔法少女のコスを切り裂く。


 念ずれば、すぐにでもリペアできるのだが、その分注意力が落ちてしまう。


 いくら丈夫なコスとはいえ、超音速で風をはらんでしまっては持たない。


 ビリ ビリビリ


 裂け目が広がって左肩からの下の素肌がが斜めに露出してしまう。


 いかん、空気抵抗が!


 露出した左胸が抵抗になって、方向が左に寄れる。


 仕方がない、右も露出するか……両方を露出してしまえば抵抗が同じになり直進できる。


 戦闘中に胸を顕わにするなど屈辱だが……コスの右肩に手を掛ける。




 ギャオーーーーン!




 金属質の叫び声がしたかと思うと、次の瞬間、赤白龍の姿は霧消した!




 コスの破れを気にしながら地上に降りると、シロとツンに挟まれて友里が立っている。


 


「マヂカが戦っている隙に、シロとツンが本体を探ったのよ!」


 嬉しさのあまり、ピョンピョン跳ねながら友里が応える。


『本体は、そこに転がってます』


 シロがさししめしたのは、バラバラになったアマチュア無線のアンテナであった。


「こいつが正体?」


『今は使われてませんが、持ち主は誇りだったんでしょうね、東京タワーに似せて赤白に塗り分けてました』


 使われなくなって二三十年はたつのだろう、赤白のペンキはほとんど剥げ落ちて、赤茶色に錆び果てている。むろん、アマチュア無線のアンテナなので、背丈は十メートルもない。


 巨大な鉄塔という先入観念が邪魔して見つけられなかったのだ。


「ひょっとしたら……」


 友里の思い付きは、わたしも閃かせた。


「ボスの正体も鉄塔なのかもな!」


 思わずガッツポーズになる。




 プツン




 残っていたコスの生地が弾けて、わたしの上半身が露出してしまった(;^_^A


 

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