第148話『草加の茶屋・1』


魔法少女マヂカ・148


『草加の茶屋・1』語り手:マヂカ  






 相変わらず混沌としている。



 足を載せている小学校の校庭ほどの所だけがきちんとしている。道の脇には草叢や灌木、時には田んぼや畑が広がっていて、昔の街道じみている。前後の道も百メートルほどはきちんとしているが、その向こうは霞がかかって定かではない。


「一昔前のゲームみたいだよ」


「どういうことなんだ?」

 千年も生きている魔法少女なのでゲームやパソコンの事には疎い。

「CPの能力が低いから遠くの景色の描画が追いつかないのよ。読み込みながら描画していくから、テンポの速いゲームだったら処理が追いつかなくてフリーズとかしたんだよ」

「そうか、ストレスが大きかっただろうな」

「でも、荒川を渡る前は、まるでバグだったじゃん。いろんなモノがデタラメに現れては消えて」

「ああ、天守閣が走ったり、ゼロ戦がプテラノドンと空中戦していたりな」

「そういうデタラメなのが現れないだけ落ち着くね」

「そうだな……」

 あいまいに返事しておく。魔法少女の悲しさで、ちょっと意識を飛ばすと、霞の向こうには相変わらずのデタラメが見えるんだが、どうやら危害が及ぶようなことはないようなので、意識の感度を落としている。




 やがて、一軒の茶店が見えてきた。




「ちょっと休んでいこうか」

「うん、お団子食べたい」

「姐さん、お茶とお団子二つずつ」


「はい、すぐにお持ちしま~す」


 気のよさそうなオバサンが元気に返事してくれる。腰掛に落ち着くと、二人のコスが変わった。


「あ、時代劇みたくなった!」


 ひざ丈の小袖に菅笠と杖、足には脚絆を撒いてわらじ履きだ。


「どうしよう、草鞋脱いだら、もう履けなくなるよ」


「大丈夫、わたしが履かせてやる」


「じゃ、脱ごうっと(^^♪」


 三百年前は、こういうナリで隠密めいた魔法少女をやっていたので、ちょっと懐かしい。由美かおるがやっていた『かげろうのお銀』は、何を隠そう、わたしがモデルなのだ。


「はい、おまちどうさま。お茶と団子です」


「ありがとう、はい、お代」


 こういう茶屋のお代は商品と交換が原則だ。


「お客さん、草加は初めてかい?」


「え、ここ草加市?」


「市? ここらじゃ草加宿って呼んでるけど」


「田舎者だから、勘弁しとくれ」


「まあ、ゆっくりなさいな。草加を過ぎたら日光まではろくなもんないから」


「ああ、そうさせてもらうよ」


 お茶をすすっていると、団子から食べ始めた友里が文句を言う。


「……ちょっと、お団子硬い」


「そうか?……ん、たしかに」


 不味くは無いのだが、ちょっと歯ごたえがあり過ぎる。


「あ、やっぱり硬かったあ?」


 オバサンが飛んできた。


「いや、食べられないというほどじゃないんだが」


「ちょっと、ごめんなさいよ」


 オバサンは、残った団子を一つパクついた。


「ああ、たしかに……堪忍ね」


 どうやら時間がたち過ぎて硬くなってしまったようだ。正直な茶店で団子のお代はまけてくれた。


「なんだか、オバサン困ってるみたい」


 どうやら数を読み違えて作り過ぎてしまって、かなりの団子が硬くなってしまったようだ。




 ☆・クエスト


 時間がたって硬くなった団子を無駄にしない方法を考えよう!




「なんか、クエストが出てきた」


「こんなところで時間を食いたくない、パスするぞ」


 しかし、立ち上がって茶屋を出ようとすると、見えないバリアーに遮られて進むことができない。


「くそ、キャンセルできないのか?」


 


 ☆・ここまでの会話で二人とも『草加』を口にしているので解決しないと進めない(^▽^)/




「え、ハメられた!?」


「待て、二人ともと出てるがわたしは言ってないぞ!」




 ☆・バックログを確認せよ




 空中に現れたメニューからバックログを選択すると……


『「そうか?……ん、たしかに」』


 あ……ハメられた(;゜Д゜)


 


 


 

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