第114話『みんなでアルバイト・1』

魔法少女マヂカ・114  


『みんなでアルバイト・1』語り手:マヂカ 






 無事に期末テストが終わった。




 サムのお屋敷でやった勉強会の甲斐もあって、ノンコも欠点を免れそうだ。


 ノンコの点数が気になるので、魔法少女の裏ワザで点数を調べてみたのだが、国語を始めいくつかの教科が読めない。


 というのは、配点や採点基準を決めていない先生が数名いるからだ。


 決めていないのは職務怠慢に思えるが、そうではない。


 テストの出来や生徒の頑張り、そこに収めなければならない平均点の枠などから、決めあぐねているのだ。


 わが担任の安倍先生もそのうちの一人だ。


 むろん、ノンコを除く四人は、少々辛めに点けられても欠点になることは無い。


 ノンコは、配点と採点基準を変えることで、当落いずれにでも偏る可能性がある。


 テスト終了二日目の今日になっても、安倍先生は決めかねている。


 下手に聞きに行ったら藪蛇と言うこともあるので、テストの事は話題にしないようにしている。


 とくにノンコには……。




「バイトしようぜ!」




 終礼が終わると、突然ノンコが言い出した。


「なによ、いきなり!?」


「わ、くっつくな!」


「アハハハ」


 清美が驚き、抱き付かれた友里が嫌がり、見ていたサムが笑った。


「テストも終わったんだから(もう合格してるという脳天気な響きがある)、冬の活動資金をさ……ほら、これこれ」


 スマホをワイパーのようにフリフリさせるノンコ。三人が覗き込んだ画面には――面接のお知らせ――の文字が浮かんでいた。


「こんなの申し込んでいたのか、あとから追いかけるから先に行って」


 掃除当番のわたしを置いて、四人はにっぽりせんい街に向かった。




 掃除が終わったことを報告に行くと、安倍先生は点数計算の真っ最中。苦労のほどが偲ばれ――ノンコをよろしく――思わず心で手を合わせる。


「あ、ちょうどいいところに渡辺真智香さん!」


 担任にフルネームのさん付けで呼ばれるとろくなことが無い。


 案の定、頼まれたノートや資料や先生の私物やらを国語準備室に持っていくハメになり、大荷物抱えて階段を上がる。


 ポトリ


 なにか小物を落とした。人気のない踊り場だったので禁じ手の魔法で拾い上げる。


 先生宛の手紙だ。それも未開封。


 学期末の忙しさに、つい開封するのも忘れていたんだ。魔法少女の悲しさ、開封しなくても中身が分かる。


「大事な手紙だ!」


 大荷物を踊り場に置いたまま職員室に戻った。




「こんなのが入ってました!」




 手紙を渡すと、安倍先生は正直に『しまった!』という顔をして封を切った。


「荷物オキッパだから片付けてきます」


 伏線を残して荷物運びに戻る。案の定、荷物を国語準備室に運ぶと「渡辺さん、安倍先生が、もう一度職員室に寄って欲しいって」と国語主任の先生。




「なんですか先生?」




 職員室に戻るとパソコンの手を休めて振り返った。


「あんたたちにお願いがあるの!」


 手紙の中身を知っていたので、お願いも分かっている。


 先生の義理が絡んだアルバイトの依頼なのだ。


 直後、あてにしていたバイトがキャンセルになったとノンコからメールが入った。




―― バイトダメになったあ! どーしようおお(;'∀') ――



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