第59話『城ケ島の少女・3』

魔法少女マヂカ・059  

『城ケ島の少女・3』語り手:マヂカ  





 吾妻島を挟んで二本の黒煙が上がっている。


 手前が海上自衛隊、向こうがアメリカ第七艦隊だ。吾妻島の上空で旋回すると日米の空母がやられているのが分かる。来るまでは大型艦としか聞いていなかった。

 デカブツの空母を狙ったのは、敵ながら大胆で効果的なやり方だ。


 地上は、米軍、自衛隊、警察、消防の車両が行き交い、16号線の交差点やビルの屋上には人々が集まって、心配そうに港の方を窺っている。


 空母の被害には興味はない。探しているのは、この被害をもたらした魔法少女、石見礼子だ。


 上空に気配がない。


 ヒットエンドランを決め込んで、とっくに姿をくらませたか?


 いや、先の大戦で培った勘が――敵は近くにいる――と警告している。


 


 地上に降りよう。


 ステルスになってはいるが視認されれば騒ぎになる。


 小さな公園に下りて、乗って来た亀を遊具に紛らせておく。公園を出て突き当たったところがドブ板通りだ。


 軍港の騒ぎに16号線やヴェルニー公園に人が集まっているので、通りはいつもほどの人出ではない。通りを行く人も港の黒煙の方に気を取られているので、ポリ高の制服でも怪しまれることはない。むしろ、石見礼子の方から発見してくれるだろう。


 おそらく、騒ぎを起こしたのは、わたしを誘き寄せるためなのだろうからね。


 ドブ板通りと16号線は商店の並びを挟んで並行している。建物の隙間から16号線の喧騒が漏れてくる。


 !? 


 路地から気配を感じた。気配は16号線を東に移動している。敵は間近だ。


 次の路地で感じた時は一瞬で気配は西に動いた。


 隠れん坊をしているつもりか、焦らせて16号線に誘い出そうとしているんだろう。誘いに乗って16号線に出てしまえば、大勢の人に紛れてのバトルになりかねず、そうなってしまっては……いや、裏をかくつもりか?


 ドブ板を反対に戻る。


 居た!


 感じた瞬間にはパルスタガーが飛んできた。からくも避けると、タガーはアメセコショップのマネキンに突き刺さった!


 くそ、こんなところで!


 タガーの軌跡で、奴の位置がおおよそ分かる。


 セイ!


 地面を蹴って電柱で反動をつけ、一気に16号線の奴の予測位置にドロップキックをかます。


 地元女子高の制服が驚いて見上げるのと同時にブレイドを抜いた! コンマ二秒早いので、次の瞬間にはヤツの頭蓋にキックをかませる! 


 グシャ! ヒットのイメージが湧いた!


 違う!?


 勢いの付いたキックは歩道のブロック舗装を粉砕していた。


 驚きと怒りをない交ぜにした、その顔は、我がバディーのブリンダであったではないか!




 

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