第58話『城ケ島の少女・2』

魔法少女マヂカ・058  

『城ケ島の少女・2』語り手:マヂカ  





 救命救急措置が功を奏し、城ケ島の少女は救急車で横須賀市内の救急病院に搬送されて行った。


 やれやれ……横須賀のグルメマップを印象化していて偶然に発見した事故だけど、無事に救助されてなによりだ。


 安心して、意識を部室である調理実習室に戻した。


「いろいろあり過ぎて、絞れないよお……」


 ノンコが頭を抱えている。友里と清美はスマホでググって、候補に挙がった土地のソウルフードの情報をスクロールしている。


「浅草一番のソウルフードはくさやの干物だってさ!」


「ゲ!」


「あ、それだけは御勘弁……」


「真智香はどうしたい?」


 清美が振って来た。急いで三人のテンションに合わせる。


「もう、片っ端から食べてみるしかないでしょ!」


「「「だよねえ!」」」


「じゃ、とりあえず日暮里のソウルフードを探しに行こう!」


「「「おーし、それだ!」」」


 無責任な提案に三人とも乗っかってきた。


 

 駅に着くまでに日暮里のソウルフードは「「「あんみつだ!」」」ということになった。なんだかんだ言っても、みんなで騒いで、ちょっぴり美味しいものが食べられればいいという女子高生のノリなんだ。ファストフードになったら意見してやろうと思ったが、なんだかんだ言っても、この三人は生真面目なんだ。



 帰り道、大塚台公園の交差点で友里と別れると思念がとびこんできた。


――城ケ島の少女が消えた――


 来栖司令からだ。


 途中まで渡った横断歩道で回れ右。友里はそのまま背中を見せて遠ざかっていく。どうやら全員招集をかける状況でもないようだ。


――少女の名前は石見礼子。看護師が点滴のため病室に入ると、窓が開いていて姿が見えなくなっていた――


『それは、逃げたというだけじゃないんですか』


 女子高生が病室から逃げただけなら、警察だろう。特務が出張るようなことじゃない。


――病室は地上十二階だ。それに、五分後には第七艦隊揚陸艦と海自護衛艦のレーダーが破壊された。魔法少女のしわざだ――


 わたしの意識に上ったのは偶然なんかじゃない。どうやら無意識に少女の動向をトレースしていたようだ。


――確証があるわけではないが、とりあえず横須賀に飛んでくれ、ブリンダにも直ぐに後を追わせる――


 基地に入ると、テディ―たちが、あっという間にコンバットスーツに着替えさせてくれる。


 北斗には始動を現わすグリーンランプは点いていない。司令も想念を送って来るだけで、基地には来れていないようだ。


 一人で行けってかあ。


 風切り丸を背中に装着すると、コキっと肩を慣らして亀に跨って出撃するわたしだった。


 


 



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