第49話『大塚台公園秘密基地完成!』 

魔法少女マヂカ・049  


『大塚台公園秘密基地完成!』 語り手:マヂカ  



 大塚台公園の秘密基地が完成した。


 司令の話だと、もう一か月はかかるという話だったが、原宿空中戦で事情が変わった。

 驚いたことに霊魔が憑依体になって出現したのだ。

 憑依体は、時空の中に閉じ込められた怨念に憑依して亜空間に実体化したものだ。

 魔法少女の経験から言っても、霊魔は独自に成長、変容を遂げるもので、憑依融合して別物になることはあり得ない。

 霊魔の成長は足し算で、10のものが100になるには10回の足し算を経なければならない。

 憑依すると掛け算になる。10のものが100になるには、一度かけるだけでいい。

 怨念は百余年前、東郷提督率いる連合艦隊によって完膚なきまでに叩きのめされたバルチック艦隊だ。

 イズムルードは、バルチック艦隊の二等巡洋艦。海戦に生き残ったが、ウラジオストクを目前に座礁して爆破処分されたという幸運なのか不運なのかよくわからない船だ。それが、こともあろうに東郷神社の池から出現したのだ。

 このままでは、他のバルチック艦隊の艦船霊にも憑依して脅威になることはあきらかだ。


 急きょ秘密閣議で決定されると、神田明神・将門の協力もあって、秘密基地は五日余りで完成した。


 掃除当番が終わると、本館一階の倉庫に急ぐ。ほら、神田明神の巫女さんが出入りに使っていた倉庫。

 それを大塚公園の秘密基地にもコネクトできるようにしたのだ。

 かすかにコロッケの匂い。ついさっきまで、揚げたてコロッケを食っていたやつがいる……たぶんノンコ。

 調理研の三人は北斗のクルーだが、クルーとして働いているうちはポリコウ(日暮里高校)生個人の意識は眠っている。

 出動前にコロッケ食うなとは言えない。


 床にうっすらと流三つ巴、神田明神の紋所が浮かんでいる。


 流三つ巴の真ん中に立つと、周囲の景色がスパークし、ホワイトアウト……反射的に目をつぶる。

 今日は、秘密基地の完成祝賀会がある。

 特務師団の母体は自衛隊なので、そういう節目のセレモニーというか祝い事は大事にする。

 まあ、初日ぐらいはいいじゃないか。新秘密基地の施設や装備のあれこれを肴に、飲んで騒いで楽しもう。

 知らぬこととはいえ、コロッケを食べてしまったノンコが哀れに思える。

 フフフ……いや、笑っちゃかわいそうだ。


 シュイーーーン


 電子音がして、皮膚が刺激される。

 これは、強制的にポリコウの制服が解除されて魔法少女のバトルスーツに切り替わったことを表している。

 祝賀会なのだからリラックスして、いろいろ食ったり飲んだりしたいが。まあ、自衛隊なのだ、規律は大切だ。


「マヂカ、出動だ! 直ちに北斗に乗り込め!」


 目の前で来栖司令が青筋を立てている!? しゅ、祝賀会は? どうなっているんだ!?

 

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