一言で言うなら、ずっと主人公のターンが続く物語です。
――主人公を主人公たらしめる要素とは、いったい何なのか?
ネタバレになるので詳細については発言を控えますが、その考えつく限りのありとあらゆる主人公的な特徴を、これでもかってほど詰め込んで出来上がったキャラが本作の主人公、天野ユキです。
そしてそれらの特徴が衝突することなく、だからといって取って付けたような『一応入れてみました』感を出しているわけでもなく、ちゃんと一人の生き生きした人間として形作っているのが素晴らしいです。
そのユキの言動一つひとつを追っていくだけでも楽しく読める物語……まさしく、主人公がすべてを飲み干すような話だと感じました。
もちろん、だからといって周りのキャラたちは影が薄いかといえばそうではなく、ああいう主人公あるところに、半端なキャラでは脇役も務まらない……そう言えるほど、個性豊かな人物たちが次々と登場してきます。
また、話の流れについても、ギャグとシリアス場面、そして戦慄が走る爽快なシーンがテンポよく配置されているため、ずっと読んでいても飽きない構成になっているのも魅力の一つです。
魔法使いは下から『下界』『上界』『主界』『影』のランクに分けられる。
魔法使いのユキは、一族と両親を皆殺しにされた伝説の一族の唯一の生き残り……
彼女は皇帝のこうちゃんに拾われ、最強の魔法使いの証である、『影』の称号を手に入れ、女の子である事を隠しながら、青年の姿でその職務を遂行していた。
そんなある時、こうちゃんから彼女はある人物の護衛任務を任された。その対象は魔法使いの卵である『下界』になりたての少年だった……
両親を失ったトラウマから、明るいキャラを無理に演じて本心を隠して生きるユキの葛藤が、とても健気で心を打ちます。
また、練り込まれた世界観を丁寧な描写で表現しており、作者の作品への愛が熱く伝わってきます。
ストーリーは笑いあり涙あり、お色気ありでバランスが良く、退屈することなくワクワクしながら読み進められます。
自分の作品のキャラクターや世界を愛している人の作品は、とてもキラキラしてステキな作品が多いですが、このお話はその中でも特に輝いているものの一つです。
私のお気に入りは、素顔をガスマスクで隠した魔法使い『風音』です。彼はとてもキャラが立っていて、あらゆる場面で活躍します。謎の多い彼は、この物語の隠れたもう一人の主人公かも知れません。
私のオススメの作品です!
是非みなさまお読みくださいませ♪( ´▽`)