見捨てられた町、真相を知る
サザンピークの広場―――
町の人々が集まる憩いの場に、焦げた魔導士と、見るも無惨な戦士が四人転がっている。
「……ひどい」
「な、何がどうなってんだ?」
状況を把握出来ない群衆は狼狽え、虫の息で呻く精鋭部隊に困惑していた。
「町長さん、コイツらが今回この町に危機を運んできた犯人達よ」
救世主と言うにはあまりに被害の爪痕を残す女は、瀕死の彼らに笑みを向けてから口を開く。
「……そう、ですか……」
王の思惑により町は捨てられた。 そう事情を語られていた町長バーンズであっても、突然の事に対応し切れていない様子だ。
「――ん?」
その時、楽しいクルージングから戻った釣り部隊、ナーズが何事かと駆け寄って来る。
「こ、この方は……!」
憐れにもチリチリの頭、上等だったローブを再起不能にされた魔導士を見て驚愕する。
「ナーズさん、だっけ? この低級魔導士を知ってるの?」
「し、知ってますとも! この方は、王国随一の魔導士タトナス様……だと、思います……」
原型を失くした男でも、軍に属するナーズは辛うじて国の重要人物だと気付けたようだ。
そして、同じく町に戻って来た戦わない主人公は―――
「いや~大漁だった! 海の上も気持ち良かった……し……」
漁の釣果も上々。 ご機嫌で凱旋するも、広場を見た途端何故か弾む声が萎んでいく。
「おかえりノエル、そっちも良かったみたいね」
笑顔で迎えるミシャ。 はい、原因は恐らくコレですね。
見事犯人達を仕留め、困窮していた町の人々を救う事に成功。 それも、見たところ三人は目立った外傷もなく無事な様子。 当然パーティのリーダーとしてノエルは仲間の無事を喜ぶ―――
「ただいま……
最高のクルージングから現実に引き戻された少年は、さっきまでとさほど変わらない晴天の空が、その時灰色に見えたという。
「さあ、サザンピークの皆さんにアンタの口から事情を説明しないよ、タコナス」
「た、タトナス様ですミシャさんっ!」
国一番の魔導士を軟体動物と野菜にされたナーズが突っ込む。
「あっ、アンジェね、タコとナスはすき~」
「――何故イカだけ!?」
「だってくろいのだすもん」
「タコも出すけどなっ!」
などとハーフと妖精が戯れていると、
「おいアンジェ、イカよりタコの方が墨の毒素が強いんだぞ?」
最近成長著しい熊の亜人が絡みに加わる。
「くまキチ、妙な豆知識出すんじゃねぇ」
「どくそ? ってなぁに?」
「つまりな、このタコナスとミシャが同じ魔法使いでもよ、強いのはミシャだろ?」
「うんっ」
「そういうこった」
「くまキチあたまいーっ!」
「カッカッカッ! でもまあ、毒素に関しては……」
「――っ!」
くまキチことヴァンの言葉に反応したノエルは、危険を感じながらもそれに乗らないという選択肢を選べなかった。
「「―――生物最強だろうな」」
この発言から、瞬きする程の僅かな時間の後、転がる精鋭部隊に狼と熊の骸が仲間入りした場面は割愛させて頂こう。
そして、今回の騒動を引き起こした真相が、サザンピークに伝わり始める。
「ほら、アンタがさっさと喋んないから余計な犠牲が出たのよ」
「ぐっ……」
そうだぞタトナス、お前が悪い。
「……キサマらもデルドルの国民なら、国の為に身を捧げるのは当然だとわかるだ――ぐぉ……っ!」
「タトナス様ッ!」
ナーズ、諦めろ。 そいつはもう助からない。
今ヒロインが何をしたのかは、ヒロインでいる為に読者様のご想像にお任せします。
「はいはい、で? つまり? 短く、分かりやすく言いなさい」
「く、国の為に王は、最強の生物兵器を造るおつもりだったのだ。 その場として選ばれた地が、偶々このサザンピークに近かっただ――ゲェッ……」
「タトナス様ぁッ!」
今ヒロインが―――以下略―――
「
「な、何が違うと……」
這いつくばったまま話すタトナスは怯えた目で、冷たく見下ろしてくる青い瞳を見上げる。
「四年前、アルノルトに生物兵器製造を挫かれた時、デルドル王国は他国からかなりの経済制裁を受けた」
「――っ!?」
「だからガイノス王は情報が漏れないように、他国と隣接していない最果てのこの地を選んだんでしょ? そして、ただのモンスター大量発生にする為に恥を覚悟で冒険者に救援依頼を出した。 国の陰謀だと悟られない為にね」
自国の民を捨て己の野望を優先する、非道な王の腹の
( こんなのぁ許されねぇ! やっぱり、必要なんだ……! )
そう、この国を救うには、人々の幸せを願う新たな王が必要なのだ。
( サラダと果物 )
その為にはサラダと果物。
( ―――シーフードカレーだけじゃダメなんだッ!! )
その通りだッ!!
つまり
そうだろう、ノエル。
( 寸胴、いくつあっかなぁ…… )
ははっ……こいつぅ、もう庇いきれないぞぉ。
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