第24話:先代令位魔守護者との対面

「さて、宝箱だがこれまたアンティークな箱型のデザインで、おしゃれなバッグだな。先代の令位守護者の時代のブランド物の箱型バックか。四千年もの間よく朽ちなかったな。この天井ホールは、光胞子が充満するぐらい湿度は高いはずだが、このテーブル上だけ、翡翠のエネルギーで乾燥状態が保たれてるのか」


「宝箱を開封するぞ! 念の為、皆少しテーブルから離れろ。この錠前のボタン、ロックされてるな。まあ、このタイプの鍵は飾りだから、これでと開ければと」


 令時は、穴の大きさに合う鍵を、記憶実体魔法でよくある飾り鍵を作った。飾り鍵を錠前に入れ、解除する。


「呆気なく開いたな。二箇所の破壊した場所からのレーザ照射はないようだ。大丈夫だ!」


 上蓋が数ミリメートル開くと同時に、周囲の空間が一瞬ゆらいだように見えた。


 カラーン、キーン。シーンとした天井ホールに鍵の落ちる音が響き、天井ホールに通じる入口は封じられた。閉じ込められたのである。


「令時!」「早神様!」


 令時の姿はテーブルから宝箱とともに、忽然と消えていた。テーブルの周りはまだ、空間が揺らいでいる。


「レイジ!」


 十三夜はテーブル上の渦を巻いている空間に咄嗟に飛び込んだ。吸い込まれるように十三夜も消え、空間が元に戻った。


「十三夜までも! 消えてしまった」


 令時はめまいを感じ、目の前が真っ白に見えたが、それは一瞬のことで、元の景色に戻った。


「あれ、十三夜。他の皆が消えてるが、どこへ行った?」


「レイジ、ワタシたちは、時空位相にマキコマレタみたい」


「え、さっきの空間が一瞬ゆらいだように見えたのは、時空位相が発生したのか? いや、場所はさっきと寸分違わない。天井ホールのテーブルの前に居る。時間だけ位相したようだな」


「後世、第二十一代の令位守護者にして、私のご先祖様の令時殿、お待ちしておりました」


「あなたは?」


「私は、第二十代の令位守護者の早神心と申す」


「ココロ殿なんですね、私の仲間は皆、リムと呼んでおりますが。


 そちらに控えているのはもしや、不死鳥のフェニックスの十七夜さんかな」


「よくおわかりで、十七夜と申します」


「あなたの妹の十六夜よりお噂は聞いております」


「そうですか、私にはこの時代まだ妹はおらぬ。そなたの時代では私には妹が居るのか」


「そうです。十六夜という。俺のいる世界では、あなたは行方が知れなくなっている。第二十代の令位守護者ということは、この空間は西暦六七六五年ということだな」


 令時は自分の体を見回した。また歳が変化しないか気になったからである。変化はないようだった。未来に来て少年になったのであれば、過去に飛んだのであれば大人になることを期待したのであった。


「神でない限り、歴代の令位守護者にしても未来には行けるが、過去には行けないはず」


「令時殿、空間位相を伴わない時位相だけでは歳はそのままだ。あなたを分け合ってここに呼びだした。私は未来の令位守護者を『時位相実態魔法』で召喚できる。ただこの時位相はそれほど持たないので手短にいう。時空の欠片のコアナンバー一、二はここにある。あなたに譲渡するので、コアナンバー十二は必ず取り戻して欲しい。時空の欠片のベースコアである十二は魔物のスカラベに奪われ、南の地方に飛び去っていった。私は、魔物のスカラベと戦って敗北した。私の命はもうここで尽きるようだ」


「レイジ、魔物のスカラベの残留思念がノコッテいるのがワカル」


「おお、その者も十夜族なのか? 蜂の妖精種族のようであるが、戻ったら、魔物のスカラベの探索は頼むぞ」


「ワカッタ、リム、マカセテ。ワタシは蜂妖精女王、十三夜ダカラネ。ソレト、アナタ、不死鳥のフェニックスの十七夜だね。まだ若いナ。カワイイ。不死鳥のフェニックスだから、レイジといっしょに飛べるネ。楽しみ!」


 十三夜は十七夜の周りを飛行した。十七夜は、ふん……。という仕草をしてそっぽを向いた。


「令時殿、この鞄には私が生涯でいろいろ集めた物が入っているので、使ってくれ。その中で一番、重要なのがメッセージにも書いてあるように、時空位相の連環を消滅させるための対消滅アイテム『反時空の神宝』だ。これをそなたに託す。使い方はこの鞄の中にある。魔物のスカラベは反時空の神宝にはまだ気づいていないはずだ。もう時間のようだな、よろしく頼む第二十一代令位守護者の早神令時殿」


「あなたは、どの時代から時空位相して来られたのか?」


「……」


 先ほどとは逆で、テーブルの周囲の空間から歪みはじめた、テーブルのレリーフには、ここに、反時空の神宝あり。とはっきりと読めた。テーブルの中央の宝箱は開いており、令時の手には、時空の欠片のコアナンバー一、二とともに反時空の神宝を持っていた。


「令時!」


「早神様が戻られた!」


「ああ、皆、俺は立ったまま夢を見ていたのか?」


「イヤ、レイジ、あれはユメじゃない。その証拠に、手に反時空の神宝がアル」


「そのようだ。先代は時位相実態魔法を扱えたのか」


 テーブルのレリーフは、変わらずえぐられている。でも令時には読めた。


『過去より辿りし紅の者へ、

 千夜一夜を顕現させ、

 時空位相の連環を絶て、

 ここに、反時空の神宝あり。

 六七六五 早神心』と。

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