第22話:五芒星中心の深淵穴の地下の宝箱

(赤眼変異体の巨大大鍬形は五芒星中心の深淵穴から出てきて、俺と戦った。あの深淵穴には何か守るべきものがあったのかもしれない。もう一度、戻って調べる必要があるな)


「サク、赤眼変異体の巨大大鍬形の魔鉱石は採取できたか?」


「うん、もちろん取ってあるよ。それに巨大大鍬形の牙と、耐熱セラミック膜の破片も」


「耐熱セラミック膜の破片も集めたくれたのか。今後、熱防御が必要なアイテム錬成時に使えるな。何せ、神炎皇のブレスに耐えた膜だからな。


 十五夜はもう一方の牙角も奴に折られたはずだが修復しないと。修復は凶悪巨大蟻の黄金の牙を使うか、巨大大鍬形の黒の牙を使うかどちらがいい?」


「んー、決められないな。どっちがいいかな?」


「硬度的には巨大大鍬形の黒の牙のほうが高いけど、これを付けると、左右の牙の硬度が違ってしまい防御が弱い方の牙に偏り、破損の確率が上がってしまう。だから、凶悪巨大蟻の黄金の牙で揃えたほうがよいな」


「でも巨大大鍬形の黒の牙のほうが強いのですよね」


「硬度的にはそうだな」


「じゃあ両方とも巨大大鍬形の黒の牙を付けて」


「え、今の神金継の牙角を外すというか、また破壊しないといけないのだが」


「我の黒の爪で削り取ってやろう」


「姉さん、お願いします」


「いや待て、十六夜、せっかく錬成して付けたのに……」


 十六夜は、金筋の龍脈に沿って、綺麗に神金継の牙角を切り落とした。


(うわ、わびさびの何もあったもんじゃないな。せっかくの金継をまた壊すなんて。まあいいさ。それなら黒の牙を両方に金継するから)


 令時は牛ドラゴンの両方の角に、巨大大鍬形の黒の牙で作った牙角を、金継した。接着部も黒の牙の粉を使用した。


 白い地の角に、黒筋の龍脈に沿って黒の牙角が装備された。黒の牙角は属性石は最初から二個装着できるように錬成したので、元のように、最上級翡翠と水晶を装着した。『神黒金継の牙角』の完成である。


「十五夜姉ちゃん、すごい牙角だ!」


「ありがと、サク。これで接触しなくても、突進の衝撃波で気絶状態効果の攻撃が可能になるような気がする」


「早神様、その切り落とされた神金継の牙角はどうなされますか?」


「もう、必要ないからいらない」


「それならば、ぜひとも買い取らせて頂きたいのですが」


「いいですよ。付いている属性石もそのままでいいよ」


「では、買い取り金額、千枚でどうでしょうか」


「銀貨千枚? 金貨に換算してくれるかな」


「いえ、金貨で千枚お支払いします」


「ちょっと待ってくれ、これはそんなに価値があるものなのか?」


「はい、早神様、神級の武器は普通、遺跡から発掘される以外は市場には出回りません。この武器は錬成者が、令位守護者の早神様が錬成されたものと分かっておりますので、更に価値が御座います」


「そうか、でも使い道があるのかこんな単品物」


「はい、収集家がおりますので。すぐに商人に売れるかと思います」


「武器の等級に詳しくないので教えてくれないか」


「等級は、六等級の普通級から一等級の神級までと、無等級の遺産級があります。一等級の神級までが、この世界の職人で作成できます。無等級の武器は、遺跡からの産出のみとなり、この世界の職人では作成できません。ですので、令位守護者である早神様は特別で、歴代の令位守護者と同様に無等級の武器やアイテムを錬成できます。


「早神様が錬成されたその無限収納ザックは、無等級の遺産級であり他に類似のものは、この世界に一個だけしか存在していません」


「前にその無限収納ザックについて聞いたことがある。たしか過去に令位守護者が錬成したとのことで、今は山城集落のどこかにあるらしいが」


「はい、その無等級アイテムである無限収納ボックスですが、山城集落ではなくてこの水度集落跡地にあるという噂です」


「その噂はどこで?」


「この宿舎。いえ、旧宿舎からですが、山城へ出発して戻ってきた旅人が、口々に言っておりました。山城にはなくて、この地のどこかにあると」


「ならば深淵穴地下が怪しいな」


「五芒星中心である旧宿舎があったところが怪しいかと、私も思います。今回、神炎皇のブレスで、大穴が開き、底が見えています。そこに何かがあると思います」


(灯台下暗しということか、五芒星の魔物から守られ、自らも護符で宿舎に結界を張っていたし、敵味方の両方で知らずに守っていたとは。いや、赤眼変異体の巨大大鍬形だけは知っていたのかも。今となってはわからないが)


「ならば、ここの宿舎に居る皆で宝箱探しに行こう。無限収納ボックスはいただくが、中身の収集物の宝は山分けだ」


 旅人達は歓喜し皆、準備に走り出していた。


「我々も探索準備だ。十三夜、先に偵察に飛んでくれ」


「リョウカイ、レイジ。タカラはヤマワケ」


 旅人達は探検者、探索者、魔物退治で賞金を稼ぐ者も居れば商人もいた。大男のヒロトは、魔物退治で賞金を稼いでいる部類である。


「ヒロトの小部隊はここで全滅してしまったが、仇は討てただろう。無限収納ボックスの宝箱に興味があるのは、探索者と商人だろうから、ヒロトは捜索に付いてこないだろうな」と考えていると向こうから大きな鞄を持った商人らしき者が、やってきて令時に挨拶をした。


「早神様、先ほど神金継の牙角を購入させて頂きました」


「ほう、もうあれを買われたのですか? あなたは?」


「私は京都の洛北のほうで、商人をしているガイラと申します。神級のアイテムを収集して、必要とする諸侯に卸して商売をしております」


「そうですか。ちなみに、いくらで購入されましたか?」


「五千金です。オークションだったので、値がつり上がりましたが、有り金全部投入しました」


「五千金って、円換算で五千万円か! それほどまでの価値なのか?」


「はい、気絶状態効果が期待できる神級の武器はめったにありませんから」


「で、オークションで競り合った相手は?」


「私です」


「ヒロト、お前か!」


「はい、どうしてもあの気絶状態効果のある武器がすばらしくて、欲しいなと。でも今回、魔物退治の賞金を足しても、五千金はなくて……」


「ヒロト、まあそう欲張るな。お前には神魔黒剛剣があるじゃないか」


「はい、でも本当は一緒に戦った十六夜様が、あの巨大大鍬形の攻撃を一身に受けきった牙角なので、お守りに持っていたかった次第です」


「それは残念だったな」


「ヒロト殿、私は宝箱捜索に参加します。限収納ボックスには、前の令位魔守護者が集めた収集品が入っているとのことですから、ヒロト殿も参加されて、何か神級のアイテムで有用な物を手に入れられたら交換しても構いませんよ」


「そうか、ガイラ殿それはありがたい。俺も宝箱捜索に参加します早神様」


「それでは、ヒロトも参加ということで。ガイラは洛北の商人だと言ったな、その鞄には何か有用なものを所有しているか? あれば見てみたい」


「令位守護者様に有用なものなど、一介の商人には持ち合わせておりませぬ」


「その白い札のようなものは?」


「これは、上賀茂神社の護符でございます。いまだ不活性状態ですが」


「上賀茂神社はいまも存在するのか、では下賀茂神社もあるのかな?」


「下賀茂神社をご存じなのですね。この時代には存在しません。太古に下賀茂より南の一帯は崩壊し、開発放棄されてそのままとなっております」


(京都四条で天変地異を受けて、この世界に時空位相されたが、下賀茂神社あたりまで崩壊していたのか……、元の世界に戻れるとしたら上賀茂神社の北あたりに退避か)


「ガイラ、俺が錬成した、この複写版の比叡山の最強護符(角大師)と上賀茂神社の護符を交換できないかな」


「喜んで交換差し上げますが、この護符は不活性状態ですので、ただの紙切れですがよろしいのですか?」


「ああ、問題ない」


 令時は、京都でもっとも古い神社である上賀茂神社の不活性の最強護符を手に入れた。


「上賀茂神社は賀茂別雷大神で強雷の力があったはず。攻撃の護符に使えるはずだ。後で、思念波を注入して活性化させるとするか。よい物が手に入った。


「さて、そろそろ偵察に行った十三夜からの映像が入るはずだ」


 十三夜は最深部にいるようだった。周りは溶解した翡翠で緑色でガラス質状態になっているようだ。この状態だと滑りやすい。最深部から真東に向けて横穴が露出してるのか見えた。


「十三夜、そこの最深部で待っていてくれ」


「レイジ、ワカッタ。横穴から風が吹いてきているヨ」


「どこかに通じているようだな」


(スマートフォンのオフラインマップで確認して見てみるか、五芒星中心地点から真東に行くと、何もない……、いや目ぼしいものだと森山遺跡がある。オフラインデータによると、古墳時代の集落遺跡か。怪しいな)


「早神様、その石版は百科事典にも使えるのですね。以前、絵を写し撮り、その絵を空中伝送していたのを上鳥羽集落で見たことがあります。今の技術では再現できず、遺物級の代物に頼っており、使用方法はすべて解明できておりません」


「遺物級というが、スマートフォンはわりと出回ってる感じがするのだが」(まあ、日本だけでもスマトフォンは一億台はあったからな、そこかしこに残留してもおかしくはない)


「早神様、先ほどの地図で、森山遺跡と呼ばれるそのあたりには、地上には何もございませんが」


「地上から行ったほうが早いかと思ったが何もないのか、やはり最深部から横穴を通って行くしかないか」


 探索者と商人達はすでに思い思いの装備で宿舎前に集合していた。皆、そわそわしている。何せ人生、はじめて宝箱に遭遇できるかも、と期待が膨れ上がっているのだ。


「では、今から出発する。最深部の穴は、翡翠のガラスで滑りやすいから各自対策をとるように。いいな、皆の衆」


「承知しました。令位守護者早神様!」


「いや、本当にわかっている? 知らないよ滑っても。まじで対策してよ」


「承知しました」


(まあ、いいやなんとかなるか。魔物もいないし)


「それと、宝箱の中身は山分けだ、ただし第一発見者は最初に一つ宝箱の中から選ぶ権利を与える」


 おうー、一行は、皆うきうきで、元宿舎があった場所へと歩きだした。


 令時達が戦った跡の淵に、皆が集合した。


「これは、すごい。翡翠が溶解し、えぐられて結晶化している」


「天空からの神炎皇のブレスの火柱を、遠目から見たけど、あれを赤眼変異体の巨大大鍬形は耐えたのか」


「ああ、でも最後は早神様のトルネードクラッシュの体当たりで撃破したんだよな」


「そうだな、激突の跡が、ほらあそこに残ってる」


「おお、ほんとだ」


 そこには、紅のドラゴンのルビー色のクレナザイト製の鱗が一枚落ちていた。


「紅のドラゴン、早神様の鱗の破片が落ちているぞ! 早神様あの鱗は頂いてもよいものでしょうか?」


「ゴミだ、いらないよ。またいくらでも再生するし。欲しかったら早い者勝ちだな」


 我先にと走り出したのは探索者達であった。


「あれ? ガイラ、商人達はいらないのか?」


「はい、鱗は諸侯達は必要としておりませんので。売り物になりません」


「では、なぜ探索者達はあんなに必死になっているのだ」


「探索者は思念波を用いて対象である目標物を探します。彼らは思念波を遠くまで飛ばすには増幅石が必要です。その増幅石の性能によって探索範囲の広さが決まります」


「なるほど、でクレナザイト製の鱗ってどれぐらいの範囲を得られるのかな?」


「私ども商人では、その効果のほどはわかりません」


「取ったー、早神様の鱗だ! うふふ、ルビー色の半透明の鱗」


「彼女が勝ち取ったようですな」


「早神様、お初にお目にかかります。探索者のアリサと申します。無限収納ボックスの宝箱のありかの探索はお任せください。必ず見つけ出します」


「おおそうか、行き当たりばったりで無限収納ボックスを探すことになると思っていたのだが、それは頼もしいな。でどうやって探すのだ?」


「はい、ドラゴンの鱗は索敵距離が大幅に伸びます。また通常は全方向に索敵することになりますが、このクレナザイト製は、思念波に指向性を与えてより精密に索敵できます。さらに、半透明ルビー色で宝石のようでおしゃれで希少価値は途方もないです」


「えっと、アリサと言ったな。最後のおしゃれというものには希少価値は付かないと思うのだが」


「いえ、ネックレスに加工すれば、それはすばらしいものとなります」


「んー、まあちょっと違うかな。でも索敵精度が上がるのにはよいな。探索のリーダは、アリサに任せることにする」


「はい、ありがとうございます」


 アリサは二十歳ぐらいの大人である。令時を上から覗きこんでいた。


(アリサは十六夜と違ってグラマーだし美人系だな。なぜ女一人で旅をしているのだろうか。探索者っていうのは訳ありの者が多そうだし詮索しないでおこう)


「我は、グラマーではないのか?」


「言わせるなよ、十六夜。恥ずかしい」


(まあ、実年齢からしたら恥ずかしいってことはないのだが、この少年の体だと思考もそれなりになってしまうのか…… 探索はグラマーなアリサに任せるとして。いかん、胸から離れられん。気が散るな)


「では皆、深淵穴に降りるぞ! 最深部でもう一度集合する」


「承知しました」


 探索者、商人達はそれぞれの方法で、最深部に向かっていた。探索者のあるものは、ハングライダーのようなもので滑空して降下していった。足を滑らせて、何人かは、最深部に落ちていくものもいる。(ほら言ったとおりだ。翡翠のガラスで滑りやすいって言ったのに。どうか、無事で……。無事なら一番乗りかそれはそれで、手っ取り早い方法だな)


 今回、令時は十六夜と二人で来ていた。紅のドラゴンで十六夜を背に乗せて降りる為である。


「令時の背に乗るのは久々じゃ。空を飛ぶのは気持ちがよいものじゃ。十三夜はよいよな、いつも令時と一緒に飛べるから」


「ヨンダカナ、十六夜姉サン。ズルいレイジの背に乗ッテル」


「いいんだよ。我は飛べないからな。しがみつくんだこうやって」


「まあまあ、言い合いはそこまでにして、十三夜、下はどうなってた」


「ヨコアナ以外ナニもナイよ」


 最深部に降り立ったときには、すでに数人、最深部に到達していた。(数名誤って滑り落ちた者が居たはずだが、どこにも見当たらないな。反動で反対側までいってしまったのかも。横穴からは、十三夜が言ってたように、風が吹いている。地上とどこかで通じている証拠だ。横穴の中は、光がなく真っ暗だ、ライトが必要か)


 令時は、街路を照らしていた翡翠の街路灯の縮小版を、連想実態魔法で人数分錬成した。(これを配るか、また何か言われそうだな。神級アイテムだとか。これでやっと進める。宝箱へと)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます