第18話:五芒星配置魔物の討伐戦略と攻防

「この星芒形の配置からして、五体が連携しているのは明らかだな。統率しているのは北に鎮座している大鍬形だろう。武器は当然上顎か、この前の黄金の片牙よりも更に硬いだろう。兜の角も同様かな」


「リンは同行していないので神妖刀火の鳥が使えないし、容易に牙角を切断できない。対抗するには所有の武器を更に性能向上させるしかないか。まず、銃武器に最上級白水晶の属性石を追加で装着できるようにするか」


 属性石は二個装着できるが、皆それぞれ伝説級翡翠を二個装着していたので、更にもう一個つける場所はなかった。


 そこで令時は記憶、仮想、連想実体魔法を使って、皆の銃武器を更に改変し、宇治集落の水晶の洞窟で、採取した最上級白水晶をそれぞれ所有の銃武器に装着した。


 これで、翡翠の効果を更に効率よく引き出せるので、各段に着弾時の爆発がパワーアップしたはずだ。追加効果も何か発生するかもしれない。


「十五夜、牛ドラゴンに戻ってくれ」


「このフロアで?」


「ああ、ここで大丈夫だろう。この広間は広いからな」


 令時は牛ドラゴンの神金継の牙角も属性石を装着できるように改変し、伝説級翡翠一個、最上級水晶一個を新たに装着した。


「これで更に硬い牙角になり、気絶状態効果ももっと向上するはずだ」


「おお、あれは守護者様の十五夜だ! あれが噂の神金継の牙角なのか!」


 神金継の牙角は翡翠、白水晶を装着して、緑と青白い光が黄金の牙角にまとわりつくように発光していた。


「十五夜姉ちゃんかっこいい。金筋の龍脈から緑と青白い光が発光してる」


「おおー、今度は、牛ドラゴンが少女に変幻したぞ」


 十五夜は十六夜と同じく、ご満悦の顔であった。


「武器の性能改変ができたところで、五体の魔物を倒す戦略だが、ここはただ一つ、全魔物をここ一か所に集めて俺の紅のドラゴンの神炎のブレスで一撃一掃する。戦術は次の一から六のとおりだ」


 一、十六夜がこの宿舎と同じ構造物を五星芒形外の南側に悟られずに錬成し、この宿舎の拠点は捨てる。そこに従業員、旅人は移動する。


 二、十三夜はいつものとおり上空から監視。監視映像を常に令時とリンクする。


 三、令時が宿舎の護符の結界を解除と同時に、十三夜が大鍬形を挑発し、宿舎まで誘導する


 四、十五夜と信士で、宿舎にある蜂蜜とローヤルゼリーを全部、外にぶちまける。匂いで宿舎に誘う。「昆虫採集だな。いや、魔物討伐だ。甘い香りでトラップをかける。この作戦は、この宿舎に誘導できるかがまず第一関門だ。結界を解くので、周りの兜は、大鍬形とともにこの宿舎に集結するはずだ」


 五、十三夜からの魔物の集結合図を受けて、全員新宿舎に撤退する。「兜の角と突進から考えて、突進攻撃の気絶状態効果があるはずだ。まともに受けたら動けなくなるので細心の注意を払うように」


 六、令時が紅のドラゴンに変幻して、上空から神炎のブレスで一掃する。


「覚えきれないや。僕はどうしたらいいの?」


「ああ、サク。ようは魔物を全部ここに集めて神炎のブレスで一掃作戦だ。後は神炎のブレスの攻撃の前に皆は新宿舎に撤退すること。信士の指示どおり動けばよい」


「わかった」


(一掃するまえに、大鍬形の牙は欲しい。でもこの戦術だと、大鍬形の牙を刈り取る機会がない。黒爪を錬成して、十五夜の爪に装着させたい。神金継の牙角を欲しそうにしていたからな。やはり、もうひとつ戦力が足りないな)


「早神殿、良かったら儂を使ってくれないか?」


「あんたは、さっきの大男」


「さっきはすまなかった。謝罪の代わりに儂を使ってくれ」


「信用できるのか」


「使い捨てで構わない」


「どうしてそこまで」


「実は、あの魔物に小部隊を全滅させられて、儂だけ生き残りました。むしゃくしゃしてて、他人にやつあたりしてしまっていた。やり返したいんだ。何でもするから使ってくれ」


「あんたの名前は?」


「ヒロトという」


「では、一つだけ頼みたいことがある。大鍬形の牙を切断してもらいたい。あんたの持っている刀で切断できるか?」


「俺は二刀流だが、ヒビすら入れられなかった。辛うじて筋傷だけ入れられただけだ。でも、できるかぎりやってみる」


「一筋のヒビでも十分だ。その刀は属性石を装着できるようだな、この最上級翡翠を付けておいてくれ。威力が増すはずだ」


「ありがたい」


「よし皆、作戦開始だ!」


 十六夜が魔物の五芒星配置の南側に、旧宿舎そっくりの構造物を巨大構造錬成術で錬成した。以前、空中庭園を錬成したことがあるが、それよりも容易に錬成できた。錬成できるのは、構造物だけで元の宿舎の飲食料品は、皆で運びださないと行けなかった。


 宿舎の従業員、旅人は護符の結界に守られながら、魔物に悟られないように、五芒星配置の南側の一線を越えた。


 十三夜は魔物の五芒星の結界外上空まで飛行し、魔物の姿を捉えた。動きは無くじっとしている。北の頂点に、巨大大鍬形、他の四つの頂点に巨大兜が陣取っていた。


「十三夜、大鍬形の牙の部分を望遠拡大してくれ」


「ワカッタ」


(さすがに、あの距離からの望遠拡大だと、映像のブレがあり、3D酔いが激しい。お、あった左牙に白い筋傷が。ヒロトの言ったとおりだ)


「ヒロト、この最上級白水晶をやるから、お前の所有する刀に追加で装着してくれ」


「よいのですか、こんな威力のある属性石を頂いても」


「ああ、お前を信用する」


「ありがとうございます。必ず一筋入れてみせます」


(十六夜からの思念波だ。全員、新宿舎に入れたようだ)


「十三夜、大鍬形からは何も思念波を感じとれないけど、お前は直接何か感じるか?」


「ネムっているミタイ」


「そうか、やはり夜行性か。新宿舎の移動もうまくいったようだし。こちらに有利だな」


「十五夜、信士、蜂蜜とローヤルゼリー全部宿舎の前にぶちまけてくれ」


「承知しました」


 令時は同時に宿舎の結界を解き、新宿舎の方の護符を遠隔で稼働させ、結界を張った。


「十三夜、大鍬形の直上から急降下で思念波で圧力を掛けて、こちらにこい」


(回転しながらの急降下の様が、脳内で映像化されていた。大鍬形に接触直前で離脱し、こちらに来た。さすが十三夜、急降下を安定させるために回転を入れたようだった。今度、自分も急降下する時は真似てみるか)


 大鍬形は何やら上空から煩わしい思念波の圧を受けて目をさまし、ゆっくりと起き上がった。五芒星の中心が結界がなくなっているのに気がついたようだ。大鍬形は思念波の圧を放った者が、宿舎の方角へと遠ざかっているのを感じたようだ。


 蜜の匂いも漂ってきており、大鍬形は覚醒した。それと同時に、周囲の兜も覚醒し、一斉に五芒星の中心である宿舎へと走り出した。


(ここまでは作戦どおりだ。うまくいった)


「ここからは、各自所定どおりに作戦実行のこと。ここの現場の指揮は信士に任せる」


「承知しました。統括マネージャ、いや令時さん」


 令時は紅のドラゴンに変幻し、上空へと羽ばたいた。十三夜はいつものとおり、紅のドラゴンの背に並走飛行した。


 令時に言われたとおり、信士が現場の指揮をとった。「魔物たちが来たな。南の退路を確保しないといけない。サク、南東の兜の角をリボルバーで一発狙え」


「わかった。信士兄ちゃん」


 サクの撃った魔弾は青白い光を引きながら兜の角に着弾し、超爆発を起こして角を粉砕した。


「よし、行けるぞ。威力は想像を遥かに超えて上がってる。南西の兜もサクに任せる」


「了解しました。信士兄ちゃん」


 南東、南西の兜は二匹ともサクによって、角を粉砕されて突進が鈍っていた。


 北東の兜へは信士のリボルバーから魔弾が正確に角を貫き、突進が鈍った。魔弾から放出される光の軌跡から威力が相当増大しているのがわかった。最上級白水晶の効果だと、信士は実感した。


「十六夜さん、北西の兜の角をダブルバレルショットガンで狙って撃って」


「我は、ダブルバレルショットガンで撃ったことないけどな。漆黒の狼の爪で撃退したほうが早いのでは?」


「いえ、兜の突進を受けて気絶状態効果を受けてしまうと、我々は動けなくなってしまいます」


「承知しました。プロジェクトマネージャ、信士」


「いやいや十六夜さん、その連呼、真似なくていいです」


 十六夜は令時から預かった神ダブルバレルショットガンで、西の兜の角にめがけて魔弾を撃った。撃った反動で、十六夜は後ろによろめいた。少女にはきついようだ。魔弾は、やはり令時が撃った魔弾の時と同じように青白い光を引いている。最上級白水晶の影響かその青白い光の周りには渦を巻いて白い光がまとわりついていた。魔弾は角から反れたが本体に着弾し、超爆発した。北西の兜の翅をもぎ取ったようである。


 令時は十三夜の望遠映像から戦況を読んでいた。


「最上級白水晶の効果は絶大のようだな。ボスの大鍬形は無傷だが、北西の兜以外は、角を破壊して気絶状態効果を発動できないようにした。問題は、北西の兜が翅を損傷し飛べはしないが、角を破壊できていないので、気絶状態効果を受けてしまうことにあると思われた。


「十六夜は、はじめてダブルバレルショットガンを、俺の記憶から操作方法と動作を引きだして撃ったはずだ。初見でヒットしたのだから十分だ」


 令時は十五夜を通して、信士に現在の戦況を伝えた。(次のターンが最終決戦になるな)

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