第14話:神妖刀火の鳥の使い手

 子狐の獣人が、抹茶と菓子を持ってきた。伏見領主の九条殿にどことなく似ている。


「息子のハズキです」


「ハズキです。はじめまして。母上、僕もお話を聞きたい。ここにいてもいいよね」


「邪魔になるから、向こうの部屋に行ってなさい」


「私は構いませんよ」


「すみません。大人しくしてるんだよ」


「やったー」ハズキは、愛くるしい目で、令時を見た。


「伏見領主の九条殿には、いろいろお世話になりました。鎮守の杜のネフライト鉱山の凶悪巨大蜘蛛は退治しましたので、伏見はもう安全です」


「実はこの地にも魔物が住み着いております。魔物の襲来が絶えず数年前、この地の守護者、十七夜様と、我夫の天二郎とで討伐に出たのですが、返り討ちにあってしまいました。これが、夫の形見の妖刀火の鳥でございます。十七夜様が作られた刀です」


「十七夜殿はその後、どうなされましたか? 十六夜の兄らしいのですが」


「十七夜様は、大けがをされ、霊力を封じられてしまわれ、不死鳥のフェニックスに戻ることができず、霊力回復の為に山城の地に向かわれました」


「十六夜の兄はそのようなことになってたんですね」


「僕は、妖刀火の鳥で絶対に仇を打つんだ」


「この子は、いつもこのように申しておるのですが、我夫でも無理だったものを。夫は剣の達人で、その技はリンに一子相伝しております」


「出迎えてくれた子ですね。彼女が今世の剣の達人ということですね。その妖刀火の鳥を見せて頂いてよろしいでしょうか?」


 令時は銃は過去、海外で試し打ちしたことがあったが、さすがに刀は展示物しか見たことがない。まじかでは、唐條の家の道主の父親が道場で、本物の刀で居合を見せてもらったことがあり、その抜刀は、そうとうの圧力があったのを覚えていた。


 妖刀火の鳥を手にとってみた。令時の紅のドラゴンの火属性と相性が合うのか、刃先からは紅い陽炎が刃渡りの波紋にそって揺らめいていた。柄の部分は銃と同じように属性石を装着できるようになっているようだった。


「ありがとうございます。見事な刀です」


「さすが、令位守護者でいらっしゃいます。持つだけで紅い陽炎を出せるとは。この陽炎を出せるものは、この地ではリンのみでございます」


「僕も鍛錬して陽炎を出せるようになるんだ」


「そうか、ハズキ。がんばればできるよ。そうだ、サクラ殿、サクをここに呼んでいただけないでしょうか」


「何用で」


「ちょっと、その刀に施したいことがあり、サクがその素材を持っていますので」


「リン、入ります。サク君をご案内いたしました」


「そちが伏見で活躍した子だね。話は聞いておる。ハズキと同い年だ。仲良くしてやってね」


「サク、例の最上級翡翠を一つ出してくれないか」


「わかった」


 令時は、妖刀火の鳥の柄の属性石装着部に、最上級翡翠を一つ嵌めた。紅い陽炎は青白い陽炎に変わり、明らかに性能が向上しているのがわかる。


「リン、お返しする」


「こ、これは」


 リンが持った妖刀火の鳥は、波紋部分は、紅い陽炎を刃先からは青白い陽炎が揺らめいていた。『神妖刀火の鳥』の誕生である。


「これは、守護者、十七夜様が持ったときと同じ陽炎! これで技を繰り出せば、あの魔物ともやり合える」


「僕も、刀が欲しい」


「ハズキにはまだ早いよ」


「令時兄ちゃん、ハズキちゃんにも武器作ってあげてよ」


「そうだな、いずれ必要になるか。ハズキひとつ約束して欲しいことがある。刀で人を切らないこと、動物もだめだ、もちろん狐族も」


「約束するよ」


 令時は鉄隕石を使用して製作された刀剣の記憶から短刀を錬成した。


「ハズキ、この刀で鍛錬するのだ。『神流星刀』という」


「ありがとうございます! 早神様」


「サクといっしょで、令時兄ちゃんでいいよ」


「良かったね、ハズキ」


「ありがとう! サク」


「これで、僕も一緒にあの魔物の討伐隊に入れる」


「早神様、この地の西には太古にできた巨大な地下断層があり、それに沿って水晶の洞窟が深く広がっております。その最奥には、星形石があるのですが、そこに黄金の牙巨大蟻が巣くっております。その場所には最上級の白水晶があるのですが、この魔物のせいで採取できないのです」


「サクラ殿、最上級の翡翠は知っているのですが、その白水晶はどのような効果があるのでしょうか?」


「翡翠と合わせることで、翡翠の力である思念波を増幅させる効果があり、また情報伝達量も各段に向上します。良質な白水晶は、この地域でしか取れないのです。最上級の白水晶はもう手元にはわずかしか残っておりません」


「星形石に封印されている時空の欠片について何かご存じですか?」


 令時は、スマートフォンに撮った時空の神宝の組図の写真を見せて尋ねた。サクラは、その写真から比較的大きいサイズのコアナンバー三を指さした。


「早神様、洞窟の最奥に時空の欠片があります。その薄い石版の機械ですが、それと似たようなものを洞窟で水晶に封印された状態で見たことがあります。そのように絵を保存できるのですね」


「はい、その場を画像として記録できます。同じような機器があれば通信もできるのですが。伏見には、これより大きいですが二台存在します」


「この地にはそのような機械はないのです。あれば伏見の九条ともいつでも連絡できるのですが」


「その水晶に封印されたスマートフォンも、いっしょに探索することにします」


「これは、スマートフォンと呼ぶのですね」


「洞窟には水晶に封印されたスマートフォンが存在するのか。洞窟は、太古にできた巨大な地下断層にあるって言っていたから、もしかして天変地異が発生した時代の地下断層だろうか? たぶんそうに違いない、この形状のスマートフォンなら一万年前の俺の時代と近いだろう。取り出せるだろうか?」


「母上、私も一緒に討伐にいきたい。父上の仇を討ちたい」


「僕もいっしょに行く」


「だめだよ、リン、ハズキ、父上でもあの黄金の牙には歯が立たなかったのだから、お前たちも失いたくない」


「この神妖刀火の鳥があれば大丈夫です」


「早神様、一緒に行ってもいいでしょ」


「サクと一緒に後方なら。最後の一刀はリンに任せる」


「ね! 母上よいでしょ?」


「サクラ殿、この護符を二人に持たせるので、身を守ってくれるはず」


 令時は比叡山の最強護符角大師を記憶実体魔法でコピーして、リンとハズキに持たせた。


「この護符の文様は、あの比叡の山のものですね。ありがとうございます」


「比叡山は、今でも存在するのですか?」


「いえ、太古に崩れ去っております」


 やはり地形は大幅に変わっているが、地名は残っているようだった。地名が残るには、人の連綿とした伝承が必要だし、一万年も続くだろうかと令時は思った。


「この比叡山の菊の文様の護符を錬成できるものは、もうこの時代にはおりません。リン、ハズキ大切にするのだよ」


「やった。僕も討伐に行ってよいってことだよね」


「仕方がない。早神様よろしくお頼みします」


「黄金の牙巨大蟻の弱点は何かご存じですか?」


「洞窟内は、外の光が水晶に透過して暗闇ではなくて、薄赤い世界となっております。黄金の牙巨大蟻は青白い閃光が苦手だと十七夜様が言っておられました。逆に赤い閃光は、さらに狂暴化するのでお気を付けください」


「サクラ殿、情報ありがとうございます」


「十三夜!」


「ナニカな、レイジ」


「西の水晶の洞窟の偵察に行ってくれ。入口の少し入った付近で待機。洞窟内は、薄赤く暗くてよく見えないはずだ」


「モンダイナイ、紫外線が見えるカラ」


(そうか、やはり昆虫形態なので、紫外線は感知できるのか)


「ナニカ、モンダイデモ?」


「いや見えるのなら、すばらしい!」


 十三夜はどや顔で偵察に飛んでいった。紫外線モードで十三夜の投影裸眼ネックレスから直接、脳に映像がくるのか、楽しみだ。 いや、そんな場合ではないか。気を引き締めないと。リン、ハズキも預かっていることだしと令時は思った。


「さて、皆これから討伐に行くぞ。目的は四つある」


 一、リン、ハズキの父の仇。


 二、時空の欠片の採取すること。


 三、最上級の白水晶の採取すること。


 四、水晶封印スマートフォンを見つけ出すこと。


「あれ、私たちの最優先は、時空の欠片じゃないのか?」


「十五夜、令時は人情に厚いのだ」


「十六夜姉ちゃん、ニンジョウって武器なのか?」


「いや、サク。違う。優しい思念波だ」


「ふーん」

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