第26話

「そんなわけで、今日から本格的に授業開始です!」

似鳥学科長は何がそんなに面白いのか、にこにこした顔でそう言った。

一年生があつめられ、体育館で学年集会がひらかれた。

突然現れた子ども学科長に驚く人はいない。

当然だ、大抵の人はすでに小学校からこの魔法関連の学校に在籍している。

学科長の姿について知っている人も少なくはないだろう。

「魔法科は、一応一般教養として普通科のような授業も行いますが、基本的には魔法に関する授業ばっかりです。今年一年は、どのクラスも同じ内容の授業を行いますが、二年からは選択式です。本格的に魔法使いを目指す人は『実務コース』へ、魔法の研究や、魔法使いのサポートをしたい人は『研究コース』へ。それぞれ進路選択をしてもらいます。なので、しっかり授業をうけて、どちらに進みたいのか考えてくださいね」

学科長は子ども特有の声色で、ハキハキとしゃべった。

学科長からは特に何も言われていないし、俺はこの学校にいてもいいのだろうか。

今、自分のおかれている状況がどれだけ不安定か、痛いほどわかる。

どうにか積み重なった石の上は、ちょっとバランスを崩せばたやすく崩れて、俺は地面に叩きつけられる。

嫌だなぁ、また高校受験するの。

「にっ、た、くん!」

「うわぁっ!」

目の前にいきなり学科長の顔がドアップで現れた。

「あ……ドウモ」

「みんな教室に移動してるよ。どうしちゃったの、ぼーっとして」

俺は二、三回まばたきをして、学科長の顔を見た。

「あのぅ、俺は入学試験的に不正行為をした扱いになっちゃうんでしょうか?」

学科長はしばらく石像のように動かなかった。

が、突然はじかれたように笑いだした。

「あはははっ、ごめんごめん、そういうつもりじゃないよ!」

学科長は「お腹痛い」と言いながら涙をぬぐった。

そして、俺に向き直る。

「あのね、新田くん」

学科長の方が背が小さいから、彼は俺を見上げてしゃべる。

「この学校の試験には、不正行為ってのは存在しないんだ。魔法が使えるかどうか、試験内容はそれだけ。どんな方法で魔法の力を得てようと、関係ないよ。必要なのは、魔法が使えるか、その事実だけだ」

俺は「はぁ」と曖昧にうなずいた。

学科長は満足そうにほほえむと、ひらひらと手を振った。

「もちろん、君がどうやって魔法の力を得たのかは個人的に興味がある。でもこれから授業だろう?だから、今度、ゆっくりきかせてね」

そう言いながら、学科長は去っていった。

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