第23話

「学科長の似鳥にたどりとんぼです」

ぺこり、と少年が頭を下げる。

「え……と」

似鳥学科長は、艶やかな黒髪に、真っ黒な漆黒の大きな瞳。

「あはっ、驚かせてしまったね。すまないすまない」

彼は軽快な足取りで、大手企業の社長が座ってそうなイスに座る。

やたらとデカくて高級そうなイスに、小学生くらいの男の子が座っている様子は、なんだかシュールだった。

「こんな見た目だが、中身は五十を過ぎたジジィだ。よろしく頼むよ」

「えっ!ごじゅっ!?」

俺はにっこり微笑む似鳥学科長と、顔色一つ変えない孔雀くんを、交互に見た。

ええー、この部屋で動揺してるの俺だけ?

なに、俺がおかしいのか?

「二十年くらい前に、メイシとの戦いでやられてね。その時の後遺症というか、そんな感じだ」

にこにこと、ちょっとひざ擦りむきました的なノリで、似鳥学科長はヘラヘラとしていた。

「まぁ、そんなことは今はどうでもいいよね。手元の封筒に書類があるから、それを提出するために来てもらったんだ」

俺と孔雀くんは、顔を見合わせて、封筒をゴソゴソとあけることにした。

「ほら、一番大きな紙だよ」

その時、似鳥学科長が、不気味な笑顔になった。

「……あかない?」

孔雀くんが書類を取り出すのを横目に、俺はずっと封筒と格闘していた。

金属を溶接したみたいにビクともしない。

「なんだっ、これ」

似鳥学科長は、「君は先戻っていいよ」と孔雀くんに声をかける。

彼が去ったのを確認すると、俺から封筒を取った。

「これはね、魔法使いしかあけられないようにできてるんだ」

「は?」

似鳥学科長は悪戯っぽく笑うと、いとも容易く封筒をあけた。

「えっ」

「君はつい最近、誰かから魔法をもらったんでしょう?」

血の気が引くとは、この事か。

俺は呆然と似鳥学科長の前に立ち尽くすことしかできなかった。

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