第16話

「どうも、子豚さんたち♪」

現れたのは、俺らよりも下手をすれば年下の少女だった。

ただ、その見た目は異常だった。

白髪のツインテールの髪型に、黒色のメッシュ。

さらにもっと異質なのは、とがった耳だ。

むかし観た映画にでてきた妖精のようだった。

左目の下にピエロのような、涙のマークがあり、着ている服もそれを基調としている雰囲気だ。

「ツァーリス、隠れてばかりいないで、きちんと彼らにご挨拶をしましょう?師匠せんせいに言われたでしょう?」

彼女は俺らを無視して、ずっと自分の影に話しかけ続ける。

「……達磨。」

虎太郎は俺に、蚊の鳴くような声で言う。

「逃げるぞ。」

俺は頷いて、同時に走り出す。

が、虚しく俺らの目の前には後ろにいたはずの彼女が、佇んでいた。

「よくないわ。レディの話を最後まで聞かないのは。人の話を最後まできくことは、当然だと僕は習ったわよ。」

彼女はむっ、とした顔で言った。

が、すぐに口元を三日月型に歪ませる。

「ふふ、こちらもということかしら?」

「ひっ!」

喉が痙攣した、という感覚だった。

引きつった声を出して、俺は膝をふるわせる。

やばい、次脅されたらションベン漏らす。

「……ロイガー、ネ。そこ、まで」

地面から声がした。

比喩ではなく、まじで地面から。

ずるり、と少女の影から人の姿が出てくる。

正直に言うと、ちょっとキモい。

「ツァーリス。」

少女は弾んだ声で出てきた人物――彼女と同じくらいの年頃の少年、ツァーリスに言った。

彼女と同じ白髪に黒メッシュ。

しかし、この少年は肩のあたりでほとんど切りそろえて、おかっぱのようにし、後ろだけのばして、結ってある独特の髪型。

ロイガーネと対になるような、右目の下の涙のマーク。

そして、俺たちと逆の配色の黒目と白目。

「ボクた、ちの仕事、を忘、れるな。」

つっかえつっかえに、少年は言葉を発する。

「でもっ、師匠せんせいに褒めてもらうには、魔法使いを殺すのが一番だもん!」

ロイガーネは、むっとして反論する。

急に話し方や雰囲気が幼くなった。

どちらかというと、彼女はこっちが素なのだろう。

「こんな雑魚、を殺し、てもむだ、だ。」

ツァーリスはこちらが聞き取るのがやっとなくらいの音量で、ぼそぼそと話す。

「雑魚とは……言ってくれるね。」

虎太郎は少し悔しそうに言う。

「雑魚だ、からそ、う言っ、ただけだ…。」

彼は静かに言うと、ロイガーネに向き直る。

「今回、の目、的は視察だ、けだと、言われた、だろ。ロイ、ガーネ、お前は、好戦、的すぎ、だ。」

「でもっ……。」

ロイガーネは何か言い返そうとしていたが、うつむいて黙った。

「……戦況把握。メイシゲートシステムは正常に作動中。戦闘要員が駆けつけるまでにかかる時間はわずか数分。繰り返します。」

気が付くとツァーリストは影に戻り、ロイガーネも報告をしながら、どこかへ消えていった。

俺はこの時、もう二度と会うことはないと、勝手に思っていた。

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