第14話

「あ、そのケーキとって」

「えっ、おい。そんなのんきで大丈夫かよ!?」

女王様みたいに上品に、でもわがままにケーキを食べる高盛に、俺は半狂乱で言う。

「んぐんぐ。ぷはぁ。あのね、今回発生してるのはメイシの出てくるゲートなの。だからだいじょーぶ」

「大丈夫!?どこが!?そこからメイシが出てくるんだろ!?」

高盛は「ほんとに何も知らないんだねぇ、君は」と俺を小馬鹿にした笑いで、くるりと反対を向いた。

虎太郎こたろうや〜」

虎太郎、と呼ばれた男子はこちらを向いた。

黒い柴犬の擬人化。

第一印象は、百人中九十五人はそう思うだろう。

「何、なんか用か?」

しゃべると、彼の口から八重歯がのぞき、活発そうな丸い目がくるくると動く。

「あ、お前か、新しく入ってきた奴は!」

いたずらっ子のような無邪気な笑顔で、俺に手を差し伸べる。

「あ〜くしゅ。俺は飯盛いいもり虎太郎」

背の小さな子で、ひょっとしたら……

「虎太郎は僕より小さいよ」

高盛は俺の心を読んでいたのか、にっこり笑って言った。

「おチビのコタちゃん♪」

高盛が虎太郎のおでこを人差し指でつん、とつつく。

「てめ〜、高盛。お前と俺じゃ二センチしか変わんねぇだろ」

「百六十センチの壁は大きいのさ。虎太郎は百五十九だもん」

小学生男子のようなやり取りをした後、「で、まじでなんの用だよ」と虎太郎は言った。

「達磨がさ、ゲートが発生しただけでやいややいやとうるさいんだよ」

高盛は少しクリームのついたフォークで、俺の方をさした。

「うるさっ…!いや、これ普通の反応だからな!?俺が今まで生きてきたのは、フツーの世界!魔法もメイシも、ほんとだなんて思えない世界なんだよ!」

そうだ、俺はこんな世界で生きてきてない。

俺にとって、魔法は、メイシは、テレビの向こうの出来事なんだ。

あの画面の奥の、非日常的な何か。

遠い国の内戦とか、飢餓とかと同じ。

現実だとはわかってはいるけれど、自分に関わっているなんて思えない。

そんな出来事。

なのに────────


「ぎゃァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

「おい、静かにしろっての」

目の前で起こっていることは、現実なんだ。

虎太郎に後頭部をどつかれても、俺の叫びは止まらない。

俺と虎太郎は今、メイシゲートの近くにいる。

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