第13話

「『伝授』は二通りのパターンがある。まず、普通に魔法を『伝授』する場合。この場合、例えば『伝授』する側が『二型』を使っていたとする。すると、『伝授』された側は、『三型』の魔法使いにたる。このやり方で魔法使いは増えてきた」

「一段階下がるってことか」

高盛は「ご名答」と笑う。

「そしてもう一つは、『伝授』する側の型をそのまま得る方法。『伝授』する側が『二型』なら、『伝授』された側も『二型』なんだ」

「え、絶対そっちのがいいだろ」

俺は飲み物をテーブルに置いて言った。

高盛はクッキーを手に取ると、バキ、と半分に割った。

「そうは問屋が卸さない〜。この方法は死んじゃうんだよ。『伝授』するほうがね」

「……まじ?」

「まじまじ。そんなわけで、遺伝と突然変異以外で存在する『一型』はほぼいない。だからこそ、『一型』はトクベツなんだ」

高盛は少し寂しそうに笑った。

そして、何か彼が言いかけた時だった。


大音量のサイレンが、部屋中を駆け巡った。

「ッ!」

耳がビリビリする。

昔、吹奏楽部の演奏を最前列で聴いた時、こんな感じだった。

いや、それの三倍は大きい音だ。

頭の中が、サイレンでぐちゃぐちゃに掻き回される。

「あー、初めてだもんねぇ。びっくりするよね」

高盛はいたって普通。

日常として受け入れていた。

「このサイレン……何?」

「メイシ襲撃もしくは、メイシゲート発生をお知らせしてくれるサイレン」

「めっ、メイシ!?やべぇじゃん!?」

俺は冷静な他の人達とは対照的に、とにかく慌てていた。

慌ててもどうしようもないこととはわかっていても、俺の中には慌てるしか選択コマンドが用意されていないのだ。

「静かにっ」

高盛が俺の口を塞ぐ。

その見た目からは想像できないほど、強い力だった。

『メイシ発生ゲート発見。メイシ発生ゲート発見。西E3エリアにて、メイシ発生ゲートの出現を確認。現在メイシの姿はありません。9班と26班は、そちらへ向かってください。繰り返します───』

それは、避難訓練の放送のように、淡々としていた。

だけど、これは避難訓練ではなくて、現実に起こっていることで、モタモタと決められた避難経路をしゃべりながら歩けば助かるなんてものじゃない。

俺は血の気がひくとは、こういうことかと思った。

「……高盛」

「なに?」

「これ、日常?」

俺は首を、ホラー映画の人形みたいに、不自然に動かした。

「そうだよ。これが、だよ」

高盛はなぜか、少し誇らしげにそう言った。

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