第9話

「九条高校魔法科では、二人一組での行動が基本なんだ」

胡蝶先生はエレベーターを待ちながら、説明を続ける。

「部屋も一緒になるから、同性が基本。三年間、よほどのことがない限りはその人と同じになるよ」

エレベーターがきたので、のる。

「はぁ……」

俺は少し緊張した。

仲良くなれるだろうか。


「はぁーい。到着。ここが君の部屋だ」

三〇五。

しょぼくれたビジネスホテルのようなドアに、そう書かれた小さなプレートがくっついている。

ドア横にはアパートのようにポストとインターホンと、プラスチック製の表札と呼ぶには似つかわしくないペラペラのネームプレート。

そこには『氷室』とあった。

「……ひむろ」

「さ、ご挨拶だねぇ」

胡蝶先生はインターホンを鳴らした。

「………………」

ドアをあけたのは───女子だった。

シルクのようにつややかな銀色の髪を、顔の周りだけ短く切り、後ろだけ長くして束ねている。

透明感のある瞳は冷ややかで、氷のようだった。

色白で華奢で、どことなく儚く消えてしまいそうな、冬の雪の精霊のような女の子だ。

「……え」

俺は胡蝶先生の顔を俺は見た。

目は見えないが、口元だけでもわかる。

すごくニヤついている。

まさか、あれか、これは。

実は女の子と組んでもらいます〜的な、ラノベ的なご都合主義的な俺チートハーレム的な展開か!

「えっとぉ」

俺は上ずった声で自己紹介する。

「今日から、おんなじ部屋の……新田達磨です」

彼女は俺を五秒ほど、穴があきそうなくらい熱心に見た、否、観察した後、言った。

「氷室、孔雀、です……」

……声低っ。

俺は固まってしまった。

メデューサに石にされたみたいに、カチコチ。

まさか、まさか、まさか!

「じゃ、氷室。あとのことは色々教えてあげてね。よろしくぅ」

氷室!!!!!!!!!!!!

俺はロボットみたいにぎこちなく首を動かす。

「……よろしく、ひ、氷室……くん」

はその瞳の雰囲気そっくりに、冷たい目線を俺に向けた。

「……どうも」

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