入学

第8話

「……」

俺は校門の前に立っていた。


九条高校魔法科は全寮制だ。

ただ警察学校みたいに、在校時から給料が出るので、私立の全寮制でありながら学費の面の心配は一切いらない。

両親はそういうこともあって、俺の名門九条高校への進学を凄まじく喜んだ。

秀を胴上げしんばかりに感謝して崇め奉り、夕飯には七面鳥がでた。

誕生日とお盆とクリスマスと正月が合体したのか、というほど豪華な夕飯は少し引いてしまうレベルだった。

そんなわけで、俺はハーバード大学飛び級合格レベルの祝福をうけて、ここにいる。

ある程度の荷物や大きな家具は、事前に引っ越し業者が俺の部屋に配送してくれているし、向こうの寮の備え付けの家具なんかもある。

なので、俺は小物と必要書類を持っていくくらいで、身軽なものだ。


「こんにちは!」

校門にいる人に、声をかけられた。

すっごく変な人に。

「えっと、新田 達磨くんだよね!」

変な人の定義は、色々ある。

中身が変な人と、見た目が変な人。

この人は後者。

長い前髪でイマドキなバンドマンみたいに目を隠しているが、少し違う点は銀髪が波うったパーマのような髪質であるところ。

生命を感じさせないその銀髪から、死をどことなく連想させる不気味な紫のグラデーションの瞳が一瞬覗いた。

割と背が高めで、ガタイも悪くなさそうだが、猫背のせいであまり威圧感はない。

ハキハキと話し爽やかな声だから、音声と映像がどうにも合わない。

とにかく、すごい違和感。

「ボクは担任の胡蝶こちょう皐月さつき。どうぞよろしくね」

笑うと、ふにゃという効果音が聞こえてきそうな人だ。

「えっと、寮に案内するね。ついてきて」

緩くてふわふわとした変な彼について行く。


「ここが男子寮だよぉ」

アパートのようなものが何軒か並んでいて、そのうちの一つを指さす。

「魔法科学生男子寮。似たような建物がいっぱいだから、気をつけてね」

「はぁ……」

「隣の寮は魔法科学生女子寮。あっち側にあるのが魔法使い九条高校駐屯地寮。似てるけど、あっちのがちょっと高いから慣れればわかるよ。しばらくは間違えそうになるかもだけど、慣れだね」

胡蝶先生は矢継ぎ早に説明をする。

「じゃ、部屋に案内するよ〜」


「九条高校魔法科の生徒はほとんどが九条中学校魔法科からの内部進学組なんだぁ」

寮の入口は高級なタワーマンションのエントランスのようで、なんだかリッチな気持ちになる。

「生徒手帳の中に学生証、あるよね?」

「あっ、はい」

俺はカバンから生徒手帳を取り出す。

生徒手帳には学生証を入れるポケットがついている。

そこに、学生証であるカードが入っている。

出す時に、イヤホンに絡まって、ガチャガチャしてしまった。

学生証それ、けっこう大事だよ〜。学校に入る時、寮に入る時、学食や自動販売機で何か買う時……。色んなことでパスポートやキャッシュレスカード代わりになるんだぁ」

胡蝶先生も、どこからかカードを取り出した。

「ここにかざすと、こんなふうに……」

ピー、と軽快な電子音がして、ロックのはずれる音がした。

「あく」

胡蝶先生は「やってみな」と俺を促した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る