第4話

魔法には、七つの大罪になぞらえた七つの種類が存在する。

一つ、傲慢。これは水や氷といったものを扱う魔法の総称。

一つ、嫉妬。コピー能力といったものを扱う魔法の総称。

一つ、怠惰。力を増強したり、他人や物を物理的に動かしたりできる魔法の総称。

一つ、憤怒。炎や熱といったものを扱う魔法の総称。

一つ、強欲。植物や地面といったものを扱う魔法の総称。

一つ、暴食。空間や重力といったものを扱う魔法の総称。

一つ、色欲。幻覚や結界といったものを扱う魔法の総称。

けっこう魔法がかぶったり、足りなかったりとユルユルな取り決めだ。

自分のキャラや語感で適当に決めている人なんかもいるらしい。


「……」

九条高校は繁華街の駅から二駅ほど行った、少し小高い丘のふもとにある。

駅をでて、おしゃれなカフェや雑貨店、コロコロとよく変わる流行りものの飲食店が立ち並ぶオシャレな商店街を抜けると、堂々とした九条高校の校門があるのだ。

アクセスや立地の良さと、その偏差値の高さゆえに、常に倍率は日本トップクラスだ。

普通科は。

俺がこれから受ける魔法科は、その普通科の背後の小高い丘のてっぺんだ。

つまり、これから登山。

「ひぇ〜、つらい」

「頑張れって〜」

秀は横で元気に笑うだけだ。

「なんで疲れないんだよ。いや、そもそも何でいるんだよ!?」

「俺も儀式が上手くいったか心配なんだよ〜。最後まで付き添う義務がある」

俺はそれ以上何か言うのも疲れて、そのまま黙った。


「ここが九条高校魔法科……」

いつもは木々に隠れて、屋根しか見えないが、実際に見るとすごい。

普通科の方の校舎は、オフィスでも入っていそうなビルっぽい校舎だが、魔法科はうってかわって古風。

古い洋風の城と館の合体したもの、近いものをあげるなら、モンサンミッシェルのような外観だった。

年季の入ったツタだらけの校門は、普通科と比べるとかわいそうなほどボロい。

強い風でも吹いたら、ボロボロと崩れてしまいそうだ。

そんな校門に、これまた気の毒なほど小汚い看板があった。

看板は浮き彫りで『九条高校』とあり、金属でできているため、かなり酸化して変色している。

その横に、『九条高校 魔法科 試験会場』と看板が置いてあった。

俺は唾を飲み込む。

ここで落ちたら、俺はほんとの高校浪人だ。

「そんなに緊張するなって」

秀は俺の肩を軽く叩く。

「いや、でもここに来て緊張するなって方が無理だよ」

プレッシャーを感じながら、俺らは校門をくぐろうとした。

が、一歩足を踏み入れた途端、凄まじい爆音が鳴り響いた。

小学生のころ、誰かが間違えて防犯ブザーを鳴らした時とは比にならない。

鼓膜が破れそうなほど、大きな音だ。

「……ッ!!まずいな!」

秀が舌打ち混じりに言う。

「何が!?」

「俺が、招かれざる客ってことだ!」

そう言うやいなや、秀は九条高校の敷地に入っていた右足を、すぐに後ろに戻す。

すると、ピタリと音は止んだ。

「……は?」

俺は秀を見つめた。

秀は少し想定外だ、という顔をして、頭の後ろをかいた。

「セキュリティやばすぎ」

「どういうことだよ」

秀の射抜くような目線に、ぞくりとする。

「そ…メイ……ってことか」

「え、なんて?」

俺が聞き取れずに、秀に聞き返した時だった。

「新田 達磨 くん」

ハイヒールの時の足音。

規則的に鳴っているはずなのに、こんなに近くに来るまで気がつかなかった。

、試験会場に案内することになってる」

俺よりも背の高い、キレイな人だった。

モデルのように細くて、手足が長い。

切れ長な目が、魅力的な人。

「悪いけど、子どもじゃないんだし、君はあっち」

彼女が指を秀に向けたかと思うと、秀は回れ右をした。

「なっ」

これが魔法。

俺は何か言いたそうに口をパクパクとさせる秀を、アホみたいな顔で見つめるしかできなかった。

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