第3話

「ほんとにここであってるのかよ……」

「ダイジョブダイジョブ〜」

秀は大股で、怪しげな森を進んでゆく。

「なぁ、これ森に閉じ込められたりしないか?今来た道なくならない?美女と野獣みたいにさ」

「あは。達磨って意外とメルヘン脳だよね〜」

秀はヘラヘラと笑いながら俺の手を引いて進む。

高校浪人の俺が九条高校魔法科に入るために、唯一必要なもの。

魔法だ。

俺は平凡人間だから、魔法が使えない。

そこで、魔法を突然変異的に取得する方法──つまり、オカルティクな儀式に挑まなくてはならないのだ。


「さ〜あ、ついたぞ☆」

「……ここ?」

周りを鬱蒼とした木々に囲まれた、不気味な丸い空間。

人工的に作られたようで、不自然なほどキレイな丸だ。

「……どうやって、ここ見つけたの?」

「ははっ、現代の魔法、インターネットさんですよ。マップでちょちょっとね」

秀は何やらブツブツと呟きながら、近くの草むらから拾ってきた木の棒で、地面に描き出した。

ゴリゴリと、男子中学生が木の棒で地面を掘る奇妙な絵面を、俺はしばらく眺めた。

「なにかいてんの?」

「愉快なオカルト本に載ってた図形だよ。まぁ、見てなって」

覗き込むと、よくある六芒星だった。

「これ、あれじゃないのか?ほら、安倍晴明とかの使ってたヤツ。似てるよ、それに」

「あはは。こう?」

秀は片手を上げて、もう片方の手を胸の前に。

そのまま、くるりと回った。

「冬季オリンピック金メダリストのプログラム。とくとごろうじろ〜」

「俺はフィギュアスケートは明るくねぇよ。てか、そんなくるくる踊ったら、せっかく描いた図形つぶれるぞ」

秀は「いっけねぇ」と、また木の棒で補修作業をした。


「さてそれでは、儀式を行う」

「え、てかお前が取り仕切るの?」

円状の吹き抜けのようになったこの空間の上を、カラスが飛んでゆく。

「何言ってんだよ。当たり前だろ?俺が九条に連れてってやるって言ったろ?」

「きゃー、しゅーちゃん、達磨を九条に連れてって〜」

俺は棒読みの裏声で言う。

バカにしている俺に、少し不満そうにしつつも、「ほら、そこ座れ、みなみちゃん」と俺に位置を教える。

そして、「いざ」と何か唱えだした。


「現世の大罪、汝が身に宿りて、汝を助け、汝を導かん。いざこれ、疾く疾く」


「ッ!!??」

ぶわ、と一瞬下から風が吹き抜けてきた。

と、思うと、周りを様々なものが取り囲む。

火とか、水とか、木の葉っぱとか、とにかく、次から次へと目まぐるしく。

なんだこれ、とんだ4DXだな。

「うがっ」

体が、なにかに貫かれた感覚があった。

「あ……が……」

毛細血管のすみずみまで何か、としか言いようのないものが、駆け巡る。

血管の太さより太いものが、血流にのって全身の隅々まで運ばれる。

「っは、はぁっ、はぁっ……っ」

浮遊感の後、その儀式は終わった。

「はぁ……」

俺は顔を上げる。

秀と目が合う。

「お疲れ、体感はまぁまぁ長かったろうけど、実際は二、三秒だったよ」

彼は俺に手を差し伸べた。

「立てる?」

「……あ、あぁ。うん」

俺は秀に引っ張られて、立ち上がる。

少しフラフラする。

「まじだったろ?この儀式」

「……うん」

俺はバクバクと荒ぶる心臓を抑えて、顔を上げた。

「俺、なんの魔法がつかえるようになったんだ?」


秀は静かに笑った。

「さぁ、この儀式で得られる魔法はランダムだからね」

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