第2話 アホと天才紙一重
アベさん一派が加わった事で、他のケモノも一気に増えましたね。
めっちや賑やかになりましたわ。毎日お祭り騒ぎみたいな。
そんな時にまた事件があったんすわ。
ある日、アベさんトコの若い衆が、なんか咥えて来たんす。
食いもん持ってきてくれたんかな〜って思てたら、なんと、人の子供やったんすわ。
うわっ、殺りやがったってビックリしてたら、生きてて。まだ小さい少年と少女やったんす。つかね、人間ではなかったんすね、これが。二人とも、耳が尖ってるんすよ。これぐらいは流石に知ってましたね。
これ、エルフやん?ってね。二人とも結構弱ってて、身体もボロっとして、小さい傷が多かったんすよ。
これはもう、アレしかない、て事で演奏会すわ。
また、周りがキラキラし出して、空気が暖かーくなってきて。
暫くしたら、二人が目を覚ましたんす。んで、起きたとたん固まってしもて。
そりゃ、起きたら変な人間と大量のケモノと、ボスクラスのユニ兄さんとアベさんがおる訳ですよ。まぁ誰でもびびるわね。二人とも、アワアワしながら固まってるんで、アイツが、まぁ落ち着け、と。俺も、身体大丈夫か?と聞いたんやけど、言葉がまったく通じないんすよ。
取り敢えずジェスチャーで、怖ないから、と。食いもん食え、と。
なんとなく通じたみたいで、恐る恐る果物食べだしたから、ほんじゃ、また演奏するか、ってライブ始めて。
食べながら、ポカーンっと見てましたね。ケモノのチビらがワキャワキャやっとるから、段々二人も笑顔になって。そのうち、一緒にはしゃぎ始めて。
最初、言葉は全然わからんかったけど、不思議なもんで、ジェスチャー交えて話てる内に、段々理解できるよーになってきたんすよ。
んで、彼等がゆーには、山菜取りに森に入ったんやけど、怖いケモノに遭遇して、逃げ回ってる内に迷ってしまった、と。段々体力も無くなってフラフラの時にまた怖いケモノに会ってしまい、もう駄目だと思ってそこで気を失った、と。気が付いたら、ケモノいっぱいいて、とても驚いた、と。何より、気高いユニコーンと凶暴なアウルベアーが一緒にいるのが信じられんかったって。
アベさんの本名って、アウルベアーってゆーんすね。
この人間は何者なんだ?って思ったって。で、不思議な音を奏でるし、しかも、傷は治るわ、元気はでるわで、仰天したって。それで、家族が心配してるやろうから、早く村へ帰りたいってゆーんですね。
で、アイツが、よしそんなら送ってやるって。アベさんに、エルフの村ってわかるか?って聞いたら、わかる、みたいな感じなんすよ。
じゃあ、連れてってくれ、って事で。他のケモノ達とはここでお別れやから、最後にライブしていこかと。その晩は1番盛り上がりましたね。
んで、次の朝、んじゃ出発しよかーってなったら、ユニ兄さん一派と他のケモノ達も当たり前のよーにゾロゾロ付いて来る訳ですよ。この団体で行ったらエルフの人、目ぇ剥くんちゃう?って言ってたんやけど、まぁ、ええやん? 知らんけどって事で、民族大移動ですわ。
エルフの村は結構遠くて、三日程かかりましたね。
で、村の前まで来たら、エルフの男女が飛んで出て来て。エルフ坊とお嬢の両親すわ。感動の対面やったけど、その後、俺らとケモノの大群見て、顔ピクピクさせてましたね。特にユニ兄さんとアベさんにめっちやびびってて。
怖がりながらも、凄い俺らに礼言ってきて、取り敢えず村の偉いさん連れてくるから、チョット待ってくれ、と。
暫くしたらエルフの人らがゾロゾロ出て来て。エルフって皆、イケメン、イケ女なんすね。なかなかの光景でしたわ。
んで、チョット歳くったイケじいさんが前に出て来て。どうやら、1番エラい人みたいでしたわ。まず、感謝されて、あと、まさかと思うがあのユニコーンとアウルベアーはあなた方が使役してるのか?と。そしたらアイツが、いや違う、コイツらは友達や、って言って。エルフの人ら、めっちや驚いてましたね。ユニコーンとアウルベアーが一緒にいる事自体、信じられへんのに、その両方と他のぎよーさんのケモノも仲間にしてるって、どえらい事やぞって。
とにかく歓迎しますんで、村にどうぞって時に、すっごいイケメンが現れて。いや、これだけのケモノ達を自由に操ってるのがおかしいって言い出して。怪しいから信用出来んって言われて。どうやらそのイケメン、村長の息子で、次期村長らしくて。村に入りたかったら、自分と戦え、って面倒くさい事言い出して。
そしたらアイツが、はぁ?なんで戦わなあかんねん?って。別に村に入れんで構へんから、入口周りだけ貸してくれ、と。結構遠距離やったんで、みんな休ませたかったんやろね。
んで、入口周りで取り敢えず落ち着いて。
エルフらは遠巻きで見てるだけやったけど、エルフ坊の両親がいろいろ世話焼いてくれて。料理とか酒とか差し入れしてくれたんすよ。料理は有難かったですねぇ。ずーっと果物類ばっかやったから。もちろん酒も美味かったんで、大盛り上がりですわ。長旅でライブもちゃんとできてなかったから、久々に暴れるかーって。例によって、ケモノいっぱいの演奏会ですわ。エルフの人らも、何事かと、集まってきましたね。
俺らが演奏して、ケモノのチビらがハシャギ回って、ケモノ大人達がノリながら聴いてる、ってゆー、まぁ異常な光景ですわ。
そのうち、エルフ坊らが飛び込んできて、チビらとふざけ始めて。
それ見た他の子エルフ達も、わっと集まって来て。やっぱり最初は子供らが勝手に仲良うなるんですよね。大人みたいに理屈とか考えてないから。
んで、子供が動くと、親も付いてくるわけですよ。皆んな、村からゾロゾロ出て来て。ライブが盛り上がるに連れて、料理や酒もってくる人も増え始めて、だんだんライブが、大宴会状態ですわ。最初は警戒してた人らが、皆んないい笑顔でね。
そんで、身体が軽なったとか、ケガが治ったとか、元気になったとか、そういう人らがチラホラ出だしたんすよ。誰かが、これは奇跡だ、とか、この人達は神の使者だ、とか言い出して。俺らを崇め奉るよーな変な雰囲気になってきて。
そしたらアイツが、俺らは神でも仏でもない、俺らは俺らや、勝手にキャラ設定すな、って叫んで、まあ、それで新興宗教の教祖みたいな持ち上げ方はされんかったすね。信頼は確かに得られた感じやったすけど。
最初はあんまり長居するつもりなかったけど、みんないろいろ世話焼いてくれるんで、暫く滞在したんすよ。相変わらず村の入口前ですけど。
日に日にね、新しいケモノが増えてくるんすね。もう、動物園すわ。見てるのがケモノ達で、見られてるのが俺らって、立場逆転してたけど。昼はライブで、夜は宴会ってゆー。
何日かして、例のイケメン若村長が現れて。
あ、俺らは、
チョット調子乗り過ぎたから、文句言われるんやろな、と覚悟してたんすけど、様子が違って。若頭の後ろに、すっげー綺麗な女の人がいて。若頭の妹らしいんすけど、なんか線が細くて弱々しいんす。目も見えなくて、ずーっとつぶってる状態で。若頭が言うには、妹は体が弱くて、寝てる方が多かったと。
それが最近元気が出てきて、外にも出れるよーになった。
おそらく、遠くから聞こえてきた俺らの演奏が、いい影響を与えたんやろう、と。今さらこんな事頼める義理やないけど、できれば妹に演奏を近くで聞かせてやって欲しい、と。
もちろん、俺らは大歓迎やし、ほんじゃ気合い入れて演るか!、って。
あんな力入った、そんであったかいアイツの歌聴いたんは、初めてやったすね。
妹がね、キラキラした光が舞ってるのがわかるってゆーんです。俺らな演奏に合わせて精霊が反応してる、って。その精霊達が周りの者達の生命力を上げてるって。
ああ、演奏で起きるキラキラは精霊やったんか、と。元気でたり、ケガ治ったりしてたんは、そーゆー事か、と。よーやく納得しましたね。妹はそーゆーのが分かる人やったんすね。
で、うっすらと、光が見えるよーになってきたって。
それ聞いて、若頭の方が泣いて喜びまして。毎日、聴きに来ていいか?て。ああ、ナンボでも来いや、って。
それから妹はホントに毎日通ってきて。始めは若頭とか、お付きの人に連れられて、って感じやったけど、だんだん1人で来れるくらい元気になって。
一週間後ぐらいには、ほぼ日常生活に支障がないくらい視力が回復して。
そんで、改めて、現村長と若頭と妹が挨拶に来て。
妹が元気になって、本当に感謝している、と。今更だけど、是非、村で歓迎したい、って。
んじや、ちょくらお邪魔すっか、と。ケモノ達は流石に入れないんで俺らだけでしたけど。
村の感じは、自然の木やら、洞窟やらを利用してて、なんか秘密基地っぽいと思ったすね。樹齢何千年とかのぶっとい木に部屋とか作られとったり。
洞窟の奥の方には自然の温泉があったりね。行く先々で村人達に感謝されたり、食べ物とかもろたり。一通り見て回ってたら、部屋用意してるから、これからはそこで寝泊まりしてくれって言われて。申し出は有難かったけど、アイツが、いやそれは断る、仲間が待ってるから、って。その代わり、暫くあの村の入口周りにおってもええか?と。そしたら若頭が、好きなだけ居てくれたらいい、って。いっそ、永住してもらっても構わない、って。
そっからは、妹だけやのうて、若頭や、じいさん村長まで、ほぼ毎日覗きに来るよーになりましたね。ほんで、この世界の事、いろいろ教えてくれたり、俺らも歌教えたったり。子供なんか歌でもすぐ覚えるからね。竹っぽい植物で笛作ったり、でかい果実の中身くり抜いて打楽器作ったり。そんで、皆で合奏したりね。
意外やったんが、若頭がえらく笛にハマって。自分で作るくらいになってましたね。妹の方は歌の才能あったんか、すっごいええ声で歌ってましたわ。
ホンマ、楽しい日々が続きましたわ。
そんなある日、若頭が神妙な顔で来て、俺らに話がある、と。
その前からチラホラ聞いてたんすが、エルフらには昔から紛争が絶えん種族がおって、オークってゆーんすけどね。ソイツらがどうも戦闘準備してるらしい、と。いや、もとはと言えば、俺らがこの辺りのケモノ、ってか魔獣なんすけど、いっぱい集めちゃってるから、それを戦闘の準備してると向こうが勘違いしたみたいで、ならこっちも準備しよかって話らしいんす。集めたっつても勝手に集まっただけなんすけどね。
だから、これから戦争になるかもしれんけど、お前らはどうする?ってゆーんすね。
そしたらアイツが、
いや、ちょっと待て、と。戦争してどないすんねん?取り敢えずコッチから話しに行け、と。俺らも行くから、つってゆーて。
うわぁ、まぁそーなるか、って俺も覚悟きめて。
そんで若頭と護衛二人、プラス俺らで行こってなって。
そしたらね、それ聞いた妹が、自分も行くって言い出して。
その頃にはすっかり元気やったからね。若頭も俺らも反対したんやけど、ガンとして譲らんなんで、ほんじゃまぁ一緒に行くか、ってなって。
長旅になるから、ユニ兄さんとこの若い衆とアベさんトコの若い衆借りて、
乗っけて行ってもらったんすわ。若頭と護衛の人、めっちやビビってましたけどね。ユニコーンやアウルベアーに乗るとか信じられへんって、顔引きつらせて。俺ら、爆笑してましたけどね。
オークの村までは1日とちょい掛かりました。
村に着いたら、オークらが手に武器持って、かなり殺気立ってたんすけど、俺らがユニコーンとアウルベアーに乗ってきたん見て、動揺してましたね。
で、こっちは村のちょい手前で止まって、若頭だけ、前に進んだんす。
そしたら向こうもボスらしきヤツが前に出て来て。
若頭が、我々は戦いに来たんやない、話し合いにきた、って。
対してオークボスが、あのユニコーンとアウルベアーはなんやねん?って。
あんなん従わせとるって怪し過ぎるやろ?と。
それ聞いたアイツが後ろから、コイツらは友達や、って叫んだんす。
オークボスがなにぃー⁉って顔して、魔獣が友達とか、そんな訳あるかいっ、て。できるもんなら証明してみぃ、ってゆーから、
よしわかった、証明したるって。まぁ、俺らがやれんのんってアレだけですわ。ギター取り出して、演奏して、歌って。例のごとく、精霊が活発に動き出して。
オークらにしてみたら、初めて耳にする音楽ってゆー不思議な音ですわ。
皆んな固まって、じーっと音に聴き入って。
そしたらアイツがね、エルフ妹に目で合図したんす。
エルフ妹が俺らの間に入ってきて、シットリと高らかに歌いだしたんす。
まあ、神々しかったすね。まさしく歌姫って貫録で。
更にビックリな事に、若頭まで、笛で乱入してきて。コッソリ練習してたんでしよーね。 なかなか達者でしたよ。
オークらは、興奮するでもなく、ただただ静かに聞いてました。
つか、固まってましたね。口あんぐりあけて。魂が抜かれたよーな感じで。
演奏が終った時、ボスが近寄って来て、あの音はなんや?と。
元気が出て、癒やされて、もっとずーっと聞きたくなる、あれはいったいなんなんや?と。
そしたらアイツが、あれは、俺らの想いをさらけ出したもんや、と。
まぁ、ゆーたら、魂みたいなもんや、て。だからお前らも、感情やら、考えやら、全部晒してみいや?って。
暫く考えこんどったボスが、長くエルフと争ってきたけど、正直、小競り合いは疲れた、と。闘わずに、うまいことつきあっていけるなら、そうしたい、と。今まではあり得へんと思とったけど、ユニコーンとアウルベアーでも仲良うできるって見せられたんが大きい、って。
なら、今から話し合いやな、っつーて、場所変えて、あっちの代表とコッチの若頭、妹でじっくり話し合って。
俺らはその間、オークの人らと話ししたり、ライブしたりして。まあ、オークの人って言い方変やけど。そん時話ししたんが、お前ら人間がなんでエルフといるねん?って言われて。そこで初めて気付いたんやけど、ああそうか、この世界にも人間がおって、なんらかの生活してるんやろなぁ。って。今までおおた事ないけど。
話し合いは結構半日くらい掛かって。だいぶ日が暮れたし、今日はここで一泊して、明日帰ろ、って事になって。なんで、また夜は皆んなで宴会ライブですわ。昼間は静かにしとったけど、酒が入ったら、大騒ぎでね。
丁度、綺麗な満月出てて、幻想的なええ感じで。うん、あっちの世界にも、
フツーに月はあったんで。ライブ盛り上がり過ぎてね、途中あたま真っ白になって、周りも真っ白に見えるくらい、ぶっ飛んでましたね。
で、次の日、これからはちょっとずつ交流を持とうって、約束しつつオークの村を離れて。
エルフの村に着いた時は、あ〜帰ってきたなぁ、って実家みたいな感じだったすわ。ケモノらや村の人らに迎えられてね。
でも、その晩、アイツに言われたんすわ。そろそろ此処を出よって。
凄い居心地ええトコやけど、このまま俺らが居続けたら、エルフの人らや動物達の生活リズムを崩すから、って。確かに俺らに構う事で、自分らの仕事が滞るやろーし、森の中の生活って厳しいはずやからね。ケモノらにしたって、飼われてる訳やないから、自力で生きていかなあかんし。アイツ、アホやけど、ちゃんと周りが見えてるアホなんやな、って思ったすね。
ん、ほんじゃ何処行く?って聞いたら、人間の町に行ってみよ、ってなって。若頭も凄い惜しんでくれて、妹にも泣かれたけど、また来るからって納得してもろて。ほんでまた、アベさんとユニ兄さんらに、人間の町の近くまで送ってもろて。
ユニ兄さん、アベさんに、世話になったな、また会おうや、って別れて、俺ら二人、町へ歩き出したんすわ。
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