第209話 過去と願いの関係性
「結衣ちゃんには前にもお話しましたが、私……親にも学校にも見放されて……ひとりぼっちでした」
緋依は、みんなからの視線を一斉に浴びながら話し出した。
俯きながらではあったが、その言葉にはしっかりとした意志が感じられる。
「だけど、それはある時ふと違和感を感じたんです。“なんかいつもより優しい”……って」
「その話はあたしも聞いたわ。かく言うあたしも、両親がなんかいい方向に変になった……って感覚はあったの」
緋依は、話す度にどんどんと下を向いていて、気づけば自分の胸を見下ろすようにしていた。
そんな緋依の言葉を援護するように、せーちゃんが話に入る。
結衣はその話を聞いて、それはいいことなのではないだろうかと思う。
だが、二人の表情を見て、それは違うということを察した。
「……あ、あの……それは……夏音もそう思いますにゃ」
そんな時、意外にも手を挙げたのは――夏音。
「パパとママのお仕事……前とあまり変わらないけど、夏音と過ごしてくれる時間が増えたんですにゃ」
いいことのはずなのに、なぜか夏音の顔は曇っている。
そして、みんなが言うなら自分も……という感じで、次々と手が挙がる。
「わ、私も……ずっと……思って、た……お父さんと……お母さんが……見守って、くれてる……ような、気がして……」
「僕もだよ。僕を見捨てたあの子が泣いてるところ……初めて見たもん」
「うちのところも……時々はよう帰ってきてくれるようになったんよ」
「ミーも……アノ忌々しい殺人鬼、捕まって死刑になったらしいデスシ……」
みんなの感情や想いが、一気に溢れ出す。
そんなみんなの顔には、どこにも明るさが見当たらない。
その時、突然魔央は結衣に向かって耳打ちする。
「……なぁ、俺……みんなが言いたいことわかるかもしれん」
「……え?」
かつてないほど神妙な面持ちで、魔央が自分の考えを口にする。
その言葉を聞いた時、衝撃が奔った。
「つまり――何かとてつもないものが自分の願いの力を弱めているんじゃないかって……そう言いたいんじゃないのか?」
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