第203話 試練突破おめでとう

「……ん……」

「あ、ガーネット! やっと起きた!」


 ガーネットがゆっくりと目を覚ました。

 そのことにいち早く気づいた結衣は、すぐさま笑顔を浮かべる。

 いつも通りの結衣の様子に、ガーネットはいたたまれなくなった。


「あ、あの……結衣様……試練突破、おめでとうございます」

「……試練?」


 ――そう言えば、ガーネットは事ある毎に“試練”と繰り返してきた気がする。

 “戦闘”でも、“決闘”でもない。

 つまり、ガーネットとの戦いに勝つことが、イコール試練突破……ということになる。


「はい。これはただの試練です。私に負けるようでは到底あの方に敵いませんので」

「……あの方……?」

「……まあ、そのうちやってきますよぉ。その時にでも説明しますぅ」


 ガーネットは、何かに怯えているように見える。

 極力、その人のことについて話したくないのだろう。

 その人のことが気になって仕方ないが、ガーネットの負担になるようなことはしたくない。

 結衣はそのことには触れず、ガーネットのことについて訊くことにした。


「な、ならさ、その……ガーネットは……どうして本になったり、魔法のステッキになったり、人になったりするの……?」


 ――これが、一番訊きたかったことだ。

 多分これが一番根本的なことで、ガーネットの正体を知ることになるだろう。

 ガーネットは「やっぱりそこですよね」と言い、目を伏せた。


「では話しましょう。私の過去、そして――私の正体を」


 そしてガーネットは、桜色の澄んだ瞳を開けて結衣を真っ直ぐ見た。

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