第198話 ガーネットが笑った

「……どう、なったの……?」

「手応えはあったが……こんなんでやられるやつじゃねぇからな……」


 結衣が再生魔法を使ったあの時。

 ガーネットは為す術なく無抵抗でやられていた――ように見えた。

 確信はない。だが、手応えはあった。


「……ガーネット……」


 結衣が不安そうに呟く。

 もし攻撃が当たっていても当たっていなくても、どちらも危険であることに変わりはない。


 ――と、その時。

 何かが結衣を目掛けて飛んでくる。


「……っ! 危ねぇ!」


 だが、間一髪。

 魔央はそれにいち早く気づき、なんとかそれを防ぐことが出来た。

 黒い槍を盾にしながら、飛んできたものを見る。


「……これ、真菜の矢……か?」

「で、でも……真菜ちゃんがこんなことするわけないし……」

「あぁ、だとしたらこれは――」


 そう言い、二人は矢が飛んできた方角に目を向ける。

 その先には、ガーネットが顔を俯かせながら辛そうに立っていた。

 矢を放ったガーネットだが、全ての攻撃を避けきれず、少なからずダメージを受けたらしい。


「……ふっ、ふふふ、あはははっ! いいじゃないですかぁ。面白いこと出来るんですねぇ、結衣様」

「……が、ガーネット……?」


 これまでずっと、別人のように豊かな表情を見せなかったガーネット。

 だが、今――ステッキだった頃に戻ったような雰囲気で笑っている。

 ……それが、結衣にとってはすごく嬉しかった。


「あ、なるほど……そういうことか……」

「は?」


 結衣がまた何かを思いついたかのように目を見張る。

 なぜ今までずっと気づかなかったのだろう。

 ずっとガーネットのそばにいたのに。


「ねぇ、魔央。みんなを集めてくれない? ――みんなで本来のガーネットを取り戻すよ!」


 そう言った結衣に、もう曇った表情はなかった。

 その変化を感じとった魔央も、いい表情でマントを翻した。

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