第185話 能力の秘密

「……え、どういう……こと?」

「だから言った通りよ。――ガーネットは遠くにいるわ」

「ちょっと……よくわかんないんだけど……」


 せーちゃんの部屋に連れ込まれてから、どれぐらいの時間が経っただろう。

 時間経過なんてものがどうでもいいほど、結衣はせーちゃんたちの話に夢中になっていた。

 その話というのが、ガーネットの居場所だから。


「僕には見える。魔力源となるガーネット……彼女が放つ魔力がね」

「私もそうです。感じるんですよ。……あの子の魔力がどんどん遠ざかっています」


 美波と緋依は、それぞれ苦しそうに語っている。

 その言葉に嘘はないのかもしれない。

 だが、結衣はまだ思考が追いついていなかった。


「……あ、あの……もう少し分かりやすく説明してくれないかな……?」

「……? ――あー、そうね。そう言えば結衣にはまだ話していなかったかしら?」


 意味がわからない言葉を連発してくる友人たちに、結衣の脳は限界を迎えていた。

 だけど、その次の言葉に、結衣の脳は凍りつくことになる。


「――あたしたちはね、それぞれの能力によって行動を制限されて……戦うことしか考えられなくなっていたの」


 ――……せーちゃんは、何を言っているのだろう。

 結衣はそんなことを感じたこともないし、友だちがそれに悩まされていたことも初めて知った。

 ……結衣だけ、何も知らなかった。


「あたしが結衣に出会った時と、結衣に助けられたあと――何か違いを感じなかった?」

「……あ、そういえば……」


 たしかに、せーちゃんと初めて出会った時。

 好戦的で血の気の多い少女のように感じられた。

 だが今は――気品溢れる、友だち想いの優しい少女。

 ……それが、行動を制限されていた。ということなのだろうか。


「あたしたちはガーネットを手に入れることだけしか考えられなくなった。辛く苦しい記憶を呼び覚まして、自分の願いをより強くするかのように」

「……そう。だから僕たちは結衣ちゃんに救われたあと、能力からも解放された。……まあ、その分力が弱くなった気もするけどね」

「それに、私の家は本当にどんどんいい方に変わっています。まるで、『ガーネットを手に入れられないお前は用無しだ』と力が言っているみたいに……」


 ……そう、だったのか。

 もしかしたら、ここにいない仲間もそういうことに悩んでいたのかもしれない。

 だとしたら……自分が救わなければならない。

 結衣はそう決意し、ガーネット探しを本格的に始めようと思った。

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