第152話 魅力的なトーチトワリング

 そんな、赤毛の少女とカスミのやり取りは遠く。

 結衣たち野外学習組は、夜のイベント――トーチトワリングを楽しんでいた。


「おおお……! え、すごっ! 同じ小五とは思えない……!」

「綺麗やねぇ〜……迫力もあるし……」

「すっ、ごい……! あれ、怖く……ない……のかな……」


 結衣たちは口々に、思ったことを零す。


 バトンの両先端についた炎が、踊るように燃え盛る。

 赤くて力強い炎が、夜の闇をかき消していく。


 どこか幻想的なその光景に、結衣たちは酔いしれていた。


「トーチ出来るようになりたいな〜。出来たら絶対かっこいいよね!」

「確かになぁ。けど、うちは怖くて無理やわ……」

「うん……炎って、怖い……もん……ね」


 火のついたバトンを手にするだけならともかく。

 それを振り回して、投げたりしなくてはならないのだ。


 だから、怖いと思うのは当然のことである。

 だが、結衣は意外と度胸があるようで。


「やってみたい……」


 と、目を輝かせて呟いたのだった。


 ☆ ☆ ☆


「は〜、疲れたぁ……」

「疲れたねぇ……うちもそろそろしんどいわ……」


 トーチトワリングのあと。

 ちょっとしたレクリエーションをし、結衣たちの体力は限界を迎えていた。

 その体力を癒すのに不可欠なのが――そう、お風呂だ。


「あ〜……あったか〜い……」


 結衣はあまりの幸福感に、顔を緩めて言う。

 この言葉を言わずにはいられなかったのだ。

 明葉も結衣につられて、顔を緩める。


 木製の湯船に身を委ね、日々の疲れを取る。


「あ、いた! 結衣ちゃん! 明葉ちゃん!」

「え? ど、どうしたの?」

「何かあったん?」


 つるっと滑ってしまうのではないか。

 そんな感じのスピードで近づいてくる、グループの一人。

 その子が、テンション高く告げた。


「あのね、この後自由時間でしょ? その時にこのグループで『肝試し』しようって話してて――」

「き、肝試し……!?」


 結衣は、驚愕とも歓喜ともつかぬ顔で叫んだ。

 その隣で明葉が、小さく肩を震わせていることに気づかずに。

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