第107話 宝探しはまた今度
「――って、ダメじゃん!」
まずは魔法と変身を解かないと。
結衣は人目のない所に降り立ち、静かに変身を解除する。
そして、結衣は明葉の元へと走る。
「明葉ちゃーん!」
「結衣さん? そんなに息切らして……どうしはったん?」
結衣が勢いよく明葉に駆け寄ると、明葉は大層驚いた様子で目を見開く。
だが結衣は、そんな明葉に目もくれず、
「宝の地図、見つけたの!」
と叫んだ。
目を輝かせて、意気揚々と喋る結衣は。さしずめ、ご飯を前にしたわんこのようだ。
「へぇー、すごいやないの!」
明葉はそんな結衣を目の当たりにして、すごく頭を撫でたい気分になる。
だが我慢し、言葉を放つだけに留める。
「でしょ!? でも……もう帰らなきゃいけない時間だから……宝探し明日でもいいかな?」
「ん? 別にええよ? 明日が楽しみやわ」
突如、結衣たちの周りに暖かい光が満ちた。
というより、明葉に後光が差した。
「ていうか、うちが結衣さんを付き合わせたんやし……これ以上無理言えへんよ」
「明葉ちゃん……」
確かに、事の発端は明葉だったかもしれない。
だけど、結衣はそれなりに楽しんでいた。
だから、時間がもっとあればいいのに。と思うほどだった。
「まあ、うん。とりあえず帰ろっか」
「せやねぇ。一緒に帰ろ」
だがしかし……こういうのもいいかもしれないと、結衣は思っている。
友人と一緒に下校することが楽しいことを、つい最近知ったから。
そうして結衣と明葉は、大人しく一緒に下校した。
☆ ☆ ☆
「うーん……胡散臭いですねぇ……」
「ガーネットがそれ言う!?」
事の詳細をガーネットに話すと、胡散臭いという言葉が返ってきた。
ガーネットは、胡散臭さを体現した塊のようなものなのに。
「心外ですねぇ! こーんなに素直なステッキですのにぃ!」
「……うーん、そういう問題じゃないような気が……」
素直は素直なのだろうが、何かが違う気がする。
もっとこう、別問題のような……
「ていうかさ……話がズレたよね……」
「おっとぉ! これは失礼――っていうか、結衣様がツッコんだせいで話がズレたような気もしますけど?」
「あーもう、悪かったよ……」
全然話が進まない。
まあ、こういうやり取りは今までもたくさんしてきたから、今更といえば今更だが。
結衣はベッドにダイブしながら考える。
今までの経験からして、明葉は怪しい。
おそらく、多分、きっと。
この騒動を起こしたのは、明葉だろう。
だが、一体なんのために?
動機が全く見えてこず、明葉の狙いがわからない。
「はあぁ……お風呂入ってこよ……」
「入浴シーンですねぇ!? では私も〜!」
「もう好きにして……」
結衣がどれだけ「ノー」と言っても、ガーネットはついてくるのだろう。
だったらもう、腹を括るしかない。
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