第60話 七不思議ができたわけ

「えっ!? ここが落ち着く??」

「……ああ。職員室は人が多くてな……」

「…………なんで先生になったんですか……」


 結衣たちが話を聞くと、どうやら先生は理科室でのんびり過ごすのが好きらしい。

 ……本当になんで先生になったのか。七不思議よりその方が不思議だ。


 それより――

 理科室に鍵がかかっていて、先生がたまに独り言を呟くことから、もうすでに理科室の七不思議が解明出来そうな気がひしひしと伝わってくる。


「えーっと……先生はこの学校の七不思議『理科室の人体模型が喋る』ってやつ――知ってます?」


 結衣がそう訊くと、先生は少し考えるような仕草をし、


「いや、聞いた事ないな。――あ! でも、以前放課後にここで独り言を呟いた時、何やらバタバタと廊下を走っていく音が聞こえたな」


 思い出したという顔をしながら話してくれた。


 あー、やっぱり。

 結衣はもう色々期待するのをやめた。その方が楽だから。


 ――だが。


「…………」


 真菜の瞳には光が入っておらず、完全なる無がそこにはあった。


「ま、真菜ちゃん……気持ちは分かるけど、怖いよ……」

「え……? 何……が? いつも、通りに……してる……だけ……だよ?」


 何やら魂が口から抜け出て、不気味な笑い声を発する様は本物の幽霊みたいに見える。


「真菜ちゃーん! 戻ってきてぇー!」


 結衣は涙目で叫んだ。


「やれやれぇ……七不思議というものは案外作られたフィクションの話、という事なのですかねぇ」


 ガーネットが何やら呟いていたが、それが結衣の耳に届くことは――ついぞなかった。

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