第53話 せーちゃんは律儀
「よしっ……行くか!」
何故か覚悟を決めながら、結衣は暖簾をくぐる。
その先には、少し広めの脱衣場があった。その奥に浴場があるようだ。
「なんか……人、少ないね……」
脱衣場はガランとしていて、人一人いない。
だが、服はチラホラと見えるので、結衣たちだけということはないようだ。
「ちょっと早いからじゃない? 女将さんが九時から十時ぐらいが多いって言ってたし」
「え、いつの間に女将さんとお話したの?」
「ん? ご飯食べた後、女将さんに『ご飯美味しかったです』ってお礼言おうと思って外に出た時だけど?」
言われてみれば、確かにせーちゃんは皆が食べ終わった時に、「ちょっと散歩してくる」と言って部屋を出た所を、結衣は見た。
――あの時か!
「律儀だねぇ……」
結衣はなぜだかとても微笑ましく思えて、朗らかな笑顔を浮かべながら言うと、
「う、うるさいわね……」
せーちゃんは足早に脱衣場のカゴの方へと向かっていった。
照れているのだろう。顔や耳が真っ赤になっている。
「星良ちゃんは偉いのねぇ……!」
結衣のお母さんは、すごく感心している様子だ。
そうしたら、せーちゃんはさらに顔を赤く染めて、
「も、もういいですから! 入りましょう!?」
そうやって叫んだ。
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